ユニット空調機(AHUとFCU)
セントラル空調機は、チラーで作られた冷温水を通したコイルに空気を潜らせて熱交換した空調送風を送り出す装置である。
チラーを別置きとすることで、空調機ごとに熱源を持たずに済むため、熱源を1箇所に集約出来ることからセントラル空調方式(=中央管理方式)と呼ばれる。
セントラル空調機には、機械室等から各室に空調空気を送る大型空調機であるエアハンドリングユニット(AHU)と、各室に設置する空調機であるファンコイルユニット(FCU)とがある。そのため、セントラル空調機は別名ユニット空調機と呼ばれている。
ユニット空調機は送風機などの装置ユニットを組み合わせて作られているため、換気空気量や送風量、空気温度や加湿量などを個々に設定できる。
換気計算と熱負荷計算を行い、必要な空調機の容量(能力)や換気量を選定し、それらをもとに最適な空調システムを総合的に判断する必要がある。
セントラル空調機の種類
エアハンドリングユニット(AHU)は、機械室等から各室に空調空気を送る大型空調機である。基本的には、屋内の機械室や空調機室などに設置するが、一部メーカーから屋外設置に対応したものも開発されている。エアハンドリングユニットの中でも、外気処理のみを行うものを外調機(OAH)という。外調機はAHUと異なり循環空気(還気)を取り込まない。
ファンコイルユニット(FCU)は、各室に設置する空調機である。外調機の室内ユニットとして利用されたり、パッケージ空調機(PAC)のように換気は別の装置によって行い内気循環機として利用する場合もある。
エアハンドリングユニットの構成と形状
エアハンドリングユニット(AHU)は、コイル(熱交換器)とファン(送風機)のほか以下の図のような構成部品を持つのが一般的である。取入空気を導入するためのチャンバーユニット、温湿度を調整するコイルユニット、送風機の振動を伝達しないためのファンユニットを縦横様々に組み合わせて作成されている。
冷水コイルと温水コイル
コイルは、チラーやボイラーなどの熱源機器によって冷やされた(あるいは温められた)水と空気を熱交換するための装置。冷温水はプレートコイル状の伝熱管を通過し、空気は伝熱管の外面フィンを通過し、冷温水と空気が交差することで熱交換を行うフィン付コイル熱交換器が一般的に用いられる。
コイルの寸法(大きさ)は、エアハンドリングユニットの必要熱量(担う空調負荷の合計値)、通過する空気量、冷温水温度差の3つが分かれば求めることができる※。
※コイルの寸法は、正面面積×列数により表現される。上記の3つの空調条件と、コイルのチューブピッチ、本数、熱通過率、濡れ面補正係数等から求められるが、各コイルごとに数値も異なるため、実務上はメーカーに条件を提示し、使用圧力や許容圧力損失も考慮して選定してもらう形になる。
冷却後に再熱(加熱)を行う場合は、冷水コイルと温水コイルが別個に設置する必要があるが、再熱を行わない(冷水コイルと温水コイルを同時に使用しない)場合には冷温水コイルとして、1つのコイルに冷房時は冷水を、暖房時は温水を通す兼用コイルとすることができる。
加湿器
加湿器は、湿度調整のために取り付ける装置。冷水コイルや温水コイルによって温度調整したあとに空気を通す。加湿器の種類は様々あるが、メーカーにより加湿器のラインナップは異なってくるので機種選定時に確認が必要である。加湿器の種類により、加湿器の寸法(大きさ)や空気の状態値の変化方法が異なる。
フィルター
空気ろ過のために設置する装置。熱交換器や加湿器に空気を通す前の空気の取入口側に、必ずプレフィルターを設ける。空気中のゴミなどがエアハンドリングユニットに入ることによる不具合を防止するためである。
プレフィルターには自動巻取型と固定設置型がある。
自動巻取型はロール状のフィルターで、フィルターが汚れて圧力損失が増加した際に、電動でロールフィルターを巻き取り綺麗な面に交換するため、定期的な使用済みのロールの交換のみでメンテナンス負荷が少なくすむ。
固定設置型は型枠パネルにフィルターがはめ込まれた形状のもので、自動巻取型と比較し省スペースで設置可能である。パネル形状であるので中性能フィルターなど他フィルターと重ねて設置することができる。
プレフィルターの他、クリーンルームなどで室内の集塵濃度をより抑えたい場合はさらに高性能フィルターなどを設置する。高性能フィルターは圧力損失が大きいので、一般的にはファンの吹出側に取り付ける。捕集効率が高くなればなるほど圧力損失も大きくなるので注意する。
点検扉とのぞき窓
点検扉は、機器停止時に空調機内の点検等を行うために取り付ける扉をいう。主にチャンバーユニット内のプレフィルター取換用とコイルユニット内の機器修理用で取り付ける。通常、点検扉はファンの吸込側(=負圧側)に取り付けるため外開きとする。ファンの吐出側(=正圧側)に点検扉を取り付ける場合は、空気漏れ防止措置で気密性を持たせた内開きの点検扉とする。
のぞき窓は、機器運転中の空調機内の状態を確認するために取り付けるFIX窓(はめ殺し窓)をいう。主にコイルユニット内の動作状態を確認するために取り付ける。のぞき窓付き点検扉もある。
キャンバス継手と防振架台
キャンバス継手は、ファンユニットと隣接するユニットとの接続部に取り付けるキャンバス(厚手の綿布や化繊布)をいう。隣接するユニットに送風機の振動が伝わらないようにするために取り付ける。
防振架台は、スプリングバネを挟み込んだ架台をいう。ファンユニットを設置する基礎(≒床部分)に、送風機の振動が伝わらないようにするために取り付ける。
ファンとモータ
ファン(≒送風機)は、羽根車を回転させて風を送り出す装置で、これによって空調した空気を各室に給気している。モータは、ファンの電動機のことを指し、モーターでは電源から受けた電気エネルギーを羽根車を回転させる運動エネルギーに変換している。モーターとファンが別軸である場合、各軸の車輪にV型の溝(プーリー)を設けたVベルトを介してファンが動かされている。最近では、Vベルトの無い直動式のファンユニットも多くなってきている。
ドレンパン
ドレンパンは、コイルユニット内で排出された排水を集める排水皿のこと。冷水コイルにより空気が冷やされて抱えきれなくなった水蒸気が凝縮して発生したドレン水や、加湿器で噴霧した水蒸気のうち空気に乗り切らなかった水などをドレンパンに集め、ドレン配管を通じて外部排水桝などに排出している。
エアハンドリングユニットは送風機の静圧が大きく、各空調機と連結したドレン配管と接続する場合に他の空調機のドレン排出に影響を与えてしまう可能性があるため、ドレントラップを単独に設置する必要がある。正圧であればドレンを押し込み、負圧であればドレンを引っ張ることになる。
その他のオプション部品
エアハンドリングユニットは上図を基本形として、組み合わせや数量を変更した様々なパターンを製作することが出来る。
全熱交換器を組み込み導入する外気の空調負荷を軽減したり、デシカント除湿機を組み込み高い除湿能力を持たせたりすることもできる。
必要に応じて、配管やダクトの状態を確認するために温度計・圧力計・流量計、フィルターの目詰まりを確認するために差圧計(マノメーター)などの計器類を設ける。その他、ユニット内の点検用の照明(マリンランプやLEDランプ)や、冬期の暖房能力の補助や凍結防止などに活躍する電気ヒーターなどもある。
【参考】全熱交換器
【参考】デシカント除湿
【参考】補助ヒーターと寒冷地対応品
ファンコイルユニットの構成と形状
ファンコイルユニット(FCU)は、コイル(熱交換器)とファン(送風機)のほか以下の図のような構成部品を持つのが一般的である。内部の構成部品はエアハンドリングユニットに類似しているため、各ユニットの詳細はエアハンドリングユニットの項目を参考。形状はパッケージ空調機の室内ユニットと類似している。形状について別記事を参照。
ファンコイルユニットは、一部機器を除いて室内の空気を循環させているのみで、外気を導入せず換気能力を有しない。よって換気風量の導入については、エアハンドリングユニットや全熱交換器など別途器具を検討する必要がある。
ファンコイルユニットは、エアハンドリングユニットと異なり基本形状が決まっているので、必要であれば各種オプション部品により対応することになる。
ファンコイルユニットのみで空調負荷を担う場合もあれば、エアハンドリングユニットと併用して空調負荷を担う場合もある。
エアハンドリングユニットにファンコイルユニットを併用する目的は、室ごとの空調負荷の差をファンコイルユニットで対応することにあり、多くの場合はファンコイルユニットはペリメーターゾーンの負荷に対応するために用いられる。
なお、エアハンドリングユニットやファンコイルユニットを使用する空調システムについては別記事にまとめた。