ダクト用フィルター

フィルターとは、流体を通すことでその流体の汚染物質を吸着し除去する装置である。フィルターは汚れを吸着し徐々に目詰まりしてくるので定期的な洗浄または交換が必要。

ダクト用フィルターにおいては、集じんフィルターの他、脱臭用や塩害防止用など特殊フィルターが使用される。

配管用フィルターはハウジングケースにろ材を入れたフィルターが多く、
ダクト用フィルターはフィルタ―ボックスやケーシングでダクトと同様に接続するパネル形とすることが多い。ダクト内部に取り付ける自動巻取り型もある。

参考予定>>圧縮空気配管用フィルター、空調配管用フィルター

必要捕集効率の計算方法

フィルタ―の必要捕集効率は、茶本より以下の式が与えられている。

主フィルタ―のみの場合

外気と還気が主フィルタ―を通り給気される場合の、主フィルタ―の必要粒子捕集率ηと設計用室内粉じん濃度C

η=(M+Co×Qo-C×Qo)/(C×Qr+Co×Qo)
C =(M+Co×Qo(1-η)/(Qo+Qr×η)

室内設置形の空気清浄装置を設置する場合の、室内設置形空気清浄装置の循環風量Qr’

Qr’=(M+Co×Qo(1-η)-C×Qr×η-C×Qo)/C×η’

外気フィルタ―+主フィルタ―の場合

外気が外気フィルタ―を通ったあと、外気と還気が主フィルタ―を通り給気される場合の、主フィルタ―の必要粒子捕集率ηと設計用室内粉じん濃度C

η=(M+Co×Qo(1-ηo)-C×Qo)/(C×Qr+Co×Qo(1-ηo))
C =(M+Co×Qo(1-η)/(Qo+Qr×η)

室内設置形の空気清浄装置を設置する場合の、室内設置形空気清浄装置の循環風量Qr’

Qr’=(M+Co×Qo(1-ηo)(1-η)-C×Qr×η-C×Qo)/C×η’

η  :主フィルタ―の必要粒子捕集率
ηo :外気フィルタ―の粒子捕集率
C :設計用室内粉じん濃度(≦0.15)[mg/m3]
Co :外気粉じん濃度(=0.1)[mg/m3]
M :室内発じん量[mg/h]
Qo :外気取入量[m3/h]
Qr :還気量[m3/h]
Qr’ :室内設置形空気清浄装置の循環風量[m3/h]
η’ :室内設置形空気清浄装置の粒子捕集率

補足

下記記事の喫煙室の換気量は、必要捕集効率の式から変形して求められている。

参考記事

外気と還気が主フィルタ―を通り給気される場合の式より

必要粉じん捕集効率は
設計用室内粉じん濃度[mg/m3]=(内部発生粉じん量+外部取込粉じん量+還気取入粉じん量)[mg/h]/(外気量+還気量[m3/h])より
C=(M+Co×Qo(1-η)+Qr×C(1-η))/(Qo+Qr)

室内設置形の空気清浄装置の循環風量は
循環風量[m3/h]={内部発生粉じん量+外部取込粉じん量+還気取入粉じん量-(外気排出粉じん量+還気排出粉じん量)}[mg/h]/入出汚染物質含有量差[mg/m3]より
Qr’={M+Co×Qo(1-η)+Qr×C(1-η)-(C×Qo+C×Qr)}/C×η’

参考書籍

捕集効率の測定方法

捕集効率の測定方法は捕集する対象物のサイズにより異なる。
重量法で90%の捕集効率というのは粗めの集じんを90%阻集したに過ぎず、細かい集じんではどれくらい捕集できるかわからない。
捕集したい対象物の粒子直径からフィルタの捕集効率の測定方法を変える必要がある。

質量法(AFI)

1~10μm(粗じん用フィルターで集められる程度の集じん)に対応するため
JIS Z 8901に規定する試験ダスト1-15種(粗めの粒子)を使って測定した捕集効率を求めたもの。

捕集効率はフィルタ前後の集じんの「質量比」で算出しているので質量法という
捕集効率%=(フィルタ―前の集じん質量-フィルタ―後の集じん質量)/(フィルタ―前の集じん質量)

比色法(NBS)

1μm(中性能・高性能フィルタ―で集められる程度の集じん)に対応するため
JIS Z 8901に規定する試験ダスト1-11種(細かい粒子)を使って測定した捕集効率を求めたもの。

捕集効率はフィルタ前後の集じんの「光透過率比」で算出しているので比色法という
捕集効率%=(フィルタ―前の集じん光透過率-フィルタ―後の集じん光透過率)/(フィルタ―前の集じん光透過率)

※以前の一般室の発生粉じんは、煙草の煙を考慮し粒子直径0.3μ程度を想定していたが、現在は分煙化されているため花粉やカビなどを考慮した比色法程度(1μmより大きい)の粒子直径が捕集できるものとしてよい。

計数法(DOP)

0.1~1μm(超高性能フィルタ―で集められる程度の集じん)に対応するため
JIS Z 8901に規定する試験ダスト2-1種(とても細かい粒子)を使って測定した捕集効率を求めたもの。

捕集効率はフィルタ前後の集じんの「粒子数量比」で算出しているので計数法という
捕集効率%=(フィルタ―前の集じん粒子数量-フィルタ―後の集じん粒子数量)/(フィルタ―前の集じん粒子数量)

集塵フィルターの種類

集じんフィルターは捕集効率により呼び名が異なる。
捕集効率が高くなると目詰まりが早くなるので交換頻度が高くなる。

通常はフィルタ―性能は初期圧力損失最終圧力損失が記載されている。
フィルタ―の交換時期はフィルター性能からある程度はわかるが、実際は使用状況によって変動するので捕集効率が高いフィルタ―には差圧計を取り付ける。

初期圧力損失…粉じん等を吸着していない新品の状態でのフィルタの圧力損失。
最終圧力損失…フィルタの性能維持の限界の圧力損失。フィルターの使用を続けているうちに、徐々にフィルターが目詰まりしていき圧力損失が大きくなる。

粗じん用フィルター

重量法で60~90%程度の捕集効率があるフィルタ―をいう。

粗めの粒子を中性能フィルタ―や高性能フィルタ―の前(プレ)で取り除くために使用される。外気を直接処理するフィルタ―として使う場合は汚れやすいので交換頻度が高い。

中性能以上の捕集効率を持つフィルタ―と異なり丈夫な材料であることが多く、洗浄可能形や自動巻取りロール形などでメンテナンス負荷を軽減したものもある。

※パッケージ空調機に標準装備されているロングライフフィルタ―は重量法で60%弱程度の捕集効率があるもので、捕集効率が低いのでメンテナンス頻度も高くなく長持ち(ロングライフ)する。

中性能フィルター

比色法で60~65%の捕集効率のあるものをいう。

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法、ビル管法ともいう)での基準を満たすために必要なフィルタ―。外気を取り入れる空調機には中性能フィルタ―以上の性能が求められている。

高性能フィルター

比色法で90~95%の捕集効率のあるものをいう。

中性能フィルターとの捕集効率の違いはあいまいで、比色法で70%程度のフィルタ―でも名称が高性能フィルターとなっている場合もある。

超高性能(HEPA・ULPA)フィルター

HEPAフィルタ―は計数法で99.97~99.99%の捕集効率があるものをいう。
ULPAフィルタ―は計数法で99.999~99.99999%の捕集効率があるものをいう。

清浄度クラスが設けられるような、クリーンルームに用いられる。

特殊フィルターの種類

ここでいう特殊フィルターは、粉じん以外のダクトにとって好ましくないものを取り除くために使用されるフィルターをいう。特殊な環境下で使用されるダクトで利用される。
特殊フィルターには様々な種類があり、必要に応じて設計者の判断で使い分ける必要がある。

脱臭用フィルター

臭気による不快感を取り除くためのフィルター。臭気を気にするような特殊な排気などで用いられる。
活性炭フィルターのほか、各種触媒の化学反応によるフィルタ―もある。

塩害防止用フィルター

塩害によるダクトの腐食等を防止するためのフィルター。海岸沿いなどの塩害の影響がある箇所に設ける。

その他

上記の他にも水切装置であるエリミネーターや油抜き装置であるグリスフィルターなども広義ではフィルタ―に含まれる。
グリスフィルタ―は厨房等で利用されることが多く排気も高温になるので、耐熱性のものも多い。

補足

フィルタ―の代わりとして、電気集じん器(エクストラクター)が使用されることもある。電気集じん器はフィルターより高価であるが集じんのみならず、特殊な用途でも利用可能なものが多い。