加湿器と除湿機の種類と温湿度変化

加湿器と除湿機は種類によって、状態値の変化の仕方が異なる。以下では加湿器と除湿機の種類ごとの状態値の変化について記載する。なお、この記事では温湿度の変化を示すのに湿り空気線図を利用している。湿り空気線図の見方については別記事にまとめた。

参考記事

加熱と冷却の温湿度変化

加熱時の温湿度変化

加熱をすると、温度が上がり空気が膨張するため飽和水蒸気量(=空気の水蒸気含有量の最大値)が上がる
空気の水蒸気含有量は変わらないので相対湿度(=飽和水蒸気量に対する空気の水蒸気含有量の割合)は下がる

冷却時の温湿度変化

冷却をすると、温度が下がり空気が縮小するため飽和水蒸気量下がる
空気の水蒸気含有量は変わらないので相対湿度(=飽和水蒸気量に対する空気の水蒸気含有量の割合)は上がる

冷却により飽和水蒸気量が下がっていくと、相対湿度が100%に近づき水蒸気が飽和し、抱えきれなくなった水蒸気は凝縮水となる。
この時の温度を露点温度といい、水蒸気含有量が下がることを除湿されたという。露点温度以降は相対湿度を100%に保ちながら冷却と除湿を行う

※理論上は飽和状態になる相対湿度100%で水蒸気が凝縮するが、実際は相対湿度が100%になる前の相対湿度95%程度で凝縮(除湿)を始める。さらに空調機吹出口の前で送風機などの熱により温度が上がり相対湿度が下がる。空調機吹出口での相対湿度の目安は、エアハンドリングユニットでは相対湿度90~95%程度、パッケージ空調機では相対湿度85~90%程度である。

加熱時、冷却時の温湿度変化は以下の湿り空気線図のようになる。今回は24℃、70%の空気を±10℃まで加熱または冷却した場合の湿り空気線図を示した。加熱時の温湿度変化は赤線のようになる。冷却時の温湿度変化は青色点線のようになるが、省略されて青色実線のように表記されることが多い。

加熱と冷却の湿り空気線図

加湿器の種類

加湿器は大きく水加湿蒸気加湿に大別される。
水加湿は、水の粒子が気化熱により周囲の熱を奪って水蒸気に変わる状態変化による加湿方式で、
蒸気加湿は、水を加熱し沸騰させることで水蒸気に変わる状態変化による加湿方式である。

水加湿は断熱変化(外部から熱の出入りがない状態変化)で比エンタルピは変化しないので、熱水分比=0[kJ/kg]である。
蒸気加湿は蒸気熱が加わり比エンタルピーが変化するので、熱水分比=2680[kJ/kg]である。

熱水分比とは、絶対湿度の変化量当たりの比エンタルピーの変化量のことをいい、加湿することで比エンタルピー(空気の持つエネルギー)がどれほど変化するかを表すもの。
熱水分比[kJ/kg]=比エンタルピの変化量[kJ/kg(DA)]/絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]

水加湿について

水加湿式の加湿器は大きく水噴霧式気化式に大別される。

水噴霧式…極めて小さい水の粒子を空気中に噴霧し気化させる加湿方式。ポンプで加圧し水蒸気を噴霧する高圧スプレー式、モーターの遠心力により水蒸気を噴霧する遠心式、圧縮空気と一緒に水蒸気を噴霧するニ流体式、超音波振動によってより細かい粒子にすることで水蒸気を噴霧しやすくする超音波式などがある。

気化式…水を浸透させたフィルターに風を送ることで気化させる加湿方式。水と送風が直接接触するものを滴下浸透気化式、間接接触するものを透湿膜式といい、加熱も行うことで気化しやすくするものを加熱気化式(ハイブリット式)という。

蒸気加湿について

蒸気加湿式の加湿器は蒸気発生タイプと蒸気利用タイプがある。

蒸気発生タイプ…加湿器内で水を沸騰させて蒸気を作る加湿方式。電気振動で水を加熱する電極式、ヒーターにより加熱する電熱式、蒸発皿の水を加熱する蒸気パン式などがある。

蒸気利用タイプ…外部から蒸気を供給する加湿方式。蒸気を減圧して噴霧する直接利用タイプと、蒸気を利用して水を沸騰させて蒸気を作る間接利用タイプとがある。

補足

コップに常温の水を入れて一日置いていたら水が蒸発して少し減っている。水は常温であるが、周囲の熱を奪って気化しているのでコップにあった水の一部は空気中に溶けている。それを極めて小さい水滴にすることで積極的に行うのが「水加湿」である。

鍋にお湯を入れてずっと加熱していくと湯気が出て水が徐々に減っていく。水が加熱され鍋にあった水の一部は水蒸気となり空気中に溶けている。この状態変化を利用したのが「蒸気加湿」である。

加湿器の種類ごとの温湿度変化

加湿時の温湿度変化は加湿方式により異なる。

水加湿は熱水分比0[kJ/kg]の傾きに温湿度が変化していく。ただし、水加湿の中でも加熱気化式は加熱された送風であるため熱水分比0[kJ/kg]の傾きより加熱方向に温湿度が移動する。

蒸気加湿は熱水分比2680[kJ/kg]の傾きに温湿度が変化していく。ただし、蒸気加湿の中でも蒸気パン式は蒸気が機器内(主に空調機で利用される)でさらに加熱されるため熱水分比2680[kJ/kg]の傾きより加熱方向に温湿度が移動する。

加湿の湿り空気線図

除湿機の種類

除湿機はコンプレッサー式(冷却式)とデシカント式(吸収式吸着式)がある。
冷却式は、冷却により凝縮水が出ることを利用した除湿方式で、
吸収式や吸着式は、乾燥剤により水を吸着し、乾燥剤を加熱することで水を放出(再生)を繰り返す除湿方式である。

コンプレッサー式(冷却式)について

冷却式の除湿機は熱源であるコンプレッサーチラーを内蔵しているため、コンプレッサー式(冷却式)と呼ばれる。空調機としては熱源の有無に関わらず、冷却により除湿されるので冷却式と呼ばれる。

従来からある方式で、空調機による除湿はこの方式が多い。デメリットとして、低い露点では凍結するため使用不可になること、冬期の除湿能力が落ちること、相対湿度が高いため機器内部のカビやダニの繁殖の原因になること、低温になりすぎる場合には再度加熱が必要になる(再熱)ことなどがある。

補足

パッケージ空調機には、冷房運転の他に弱冷房除湿(ドライ)という機能が付いている。これは、冷房を弱めに運転し続けて、設定温度になっても冷却を続けることで除湿する機能である。再熱除湿と異なり湿度のコントロールは基本的にはできない。

しかし、一部の高機能なパッケージ空調機は、冷房運転の他に再熱除湿という機能が付いているものもある。これはコンプレッサー式の除湿機と同様に、目標温湿度とするために必要なだけの冷却除湿を行い、除湿量が目標値に達したら低温になりすぎないように再熱する機種である。

デシカント式(吸収式、吸着式)について

デシカント式の除湿機は、乾燥剤の種類により吸収式と吸着式がある。

吸収式…吸収液(塩化リチウム等)で空気中の水を吸収する除湿方式。吸収に液体を利用するため湿式除湿とも呼ばれる。
吸着式…吸着材(シリカゲル等)で空気中の水を吸着する除湿方式。吸着に固体を利用するため乾式除湿とも呼ばれる。

冷却式と異なり、露点の影響を受けないため、冬期の除湿能力が落ちるといったことはない。デメリットとして、イニシャルコストが高くなること、室内温度が上昇することなどがある。

除湿機の種類ごとの温湿度変化

除湿時の温湿度変化は除湿方式により異なる。

コンプレッサー式は冷却時の温湿度変化と同様に、露点温度までは冷却、露点温度以降は冷却と除湿がなされる。

デシカント式は、吸収材や吸着材による外部との熱の出入りが無い断熱変化であるので、等エンタルピー変化である。等エンタルピー変化とは、エンタルピーの変化がなく温湿度が変化することをいい、温度が上がると絶対湿度が下がる。
ただし、水の凝縮熱により周囲の空気は加熱され、周囲に熱を放出した水は排水として外部に排出するため、最終的には断熱変化ではなく加熱変化になる。吸収式の凝縮熱は小さく、吸着式の凝縮熱は大きい。
※再熱時の温湿度変化は除湿時の反対に、等エンタルピー変化で温度が下がり絶対湿度が上がった上で、気化熱により周囲の空気は冷却される。
(冷却式でも水の凝縮熱は発生するが、冷却をしているため凝縮熱による空気の加熱は見られない)

除湿の湿り空気線図

加除湿の必要量の計算

加湿や除湿の必要量は、上記の温湿度の変化と計算によって求められる。別記事を参照。

参考記事