配管流体の種類と配管径

配管は、水・空気・その他様々な流体を運ぶために利用される。
配管の管径を求めるためには、各流体ごとに重要視すべきポイントが異なってくるので、主な配管流体の管径選定のポイントを記載した。

水や空気の配管流体の種類

水配管

給水配管

給水配管は、各所水栓や器具に水を供給するための配管をいう。
道路に埋設された上水道などから給水を引き込んでいる。目的地まで給水を運ぶために、引き込む際の圧力を利用する場合と、別途ポンプを設置し圧力をかける場合とがある。

給水配管は、供給する水の種類により細分される。
上水管から引き込み人体に利用できるものを上水管、その他のものを中水管雑用水管という。中水管は、工業用水や井戸水、雨水再利用水などを利用する給水管である。

給水管の配管径は、圧力損失が過大にならないように流量線図より求めるのが一般的である。
配管の圧力損失と、吐出圧や重力による位置エネルギーを考慮しポンプ静圧を決定する。

参考予定>>給水配管径の決め方

給湯配管

給湯配管は、各所水栓や器具に湯を供給するための配管をいう。
給水配管により引き込んだ上水に、ボイラなどの器具で熱を加えて給湯にしている。

給湯配管は、給水管に比べてループ配管とされることが多く、その際は末端の吐出口までの配管を給湯管、そこからループ配管のスタート地点に戻るまでの配管を返湯管と分けて表示することが一般的である。ループ配管とするメリットである、供給流体の状態が平準化によって温度差が減らせるためである。

給湯管の配管径は給水管と同様に、流量線図により求めるのが一般的である。

排水配管

排水配管は、給水や給湯などで利用された不要な水を排出する配管をいい、排水中の不要な固形物を排水とともに排出することも含む。
道路に埋設された下水道管などに接続し排出する。通常は圧力をかけず、配管の自然勾配で排水が運ばれる。

排水配管は、排出するものの種類によって名称が異なる。
便器などから排出されたの汚物と排水を流す汚水管、洗面器などから排出された小さなゴミや排水を流す雑排水管、空調機から排出された結露水やスライム状の固形物を流すドレン管、雨水を集めて流す雨水管、などがある。

排水配管の配管径は、圧力配管か非圧力配管かで求め方が異なる。流体を重力により自然勾配で移動させている非圧力配管である場合は、配管径の算定方法が他の配管と全く異なる。
計算により求めることは難しいため、管径の算定表などを用いて配管径を決定する。なお、圧力配管と非圧力配管については以下にまとめた。

ポンプを使用し圧力配管とする場合は、排水中の固形物も一緒に圧送する場合と排水中の固形物を粉砕してから圧送する場合とがある。各種ポンプの仕組みによって標準配管径が異なってくるため確認する必要がある。
なお、粉砕して圧送する場合のほうが配管径を小さくできる。

また、排水配管は排水だけでなく固形物も運んでいるので、固形物が配管内に滞留しないような継手形状をとる必要がある。

参考記事
補足

通気配管

排水配管が非圧力配管である場合は、空気を取り入れるために適所に通気管が取り付けられることが多い。

衛生器具に接続される汚水管・雑排水管は、排水が一気に排出されるため、排水によって配管内が閉塞することが無いように、通常は通気管を取り付ける。反対にドレン管や雨水管などは、排水が一気に排出されて配管内が閉塞するという事態は起きにくいため、通常は通気管を取り付けない。
両者とも配管内に空気を取り入れることが出来るように配管径を選定する必要がある。

参考予定>>汚水配管・雑用水配管の管径の求め方、ドレン配管の管径の求め方

消火配管

消火配管とは、火災が発生した際に火を止めるための薬剤を供給するための配管をいう。消火設備への供給用配管や、消火活動上必要な施設の連結送水管や連結散水設備の配管を総じて消火配管としている。

消火設備のうち、第1種・第2種・第3種消火設備には配管が必要になる。消火剤の種類は水や泡、ガス、粉末があり、消火剤は火災の種類によって使い分ける必要がある。

消火配管や消火剤の種類

消火配管の配管径は、消防法により器具接続部の最低口径が定められているものが多い。定められていないものは、消火剤の種類に応じた流量線図より求める。

冷温水配管

冷温水配管は、空調機や装置などの負荷に熱媒体となる冷温水を供給するための配管をいう。
冷温水は、水をチラーやボイラなどの熱源機器で冷却または加熱し、負荷で熱エネルギーを利用したのち、熱源機器に戻る循環配管である。

熱源機器から負荷へ向かう配管を往管、負荷から熱源機器に戻る配管を還管という。また、冷却した水のみを運搬する配管を冷水管、加熱した水のみを運搬する配管を温水管、季節によって冷水と温水を切り替える配管を冷温水配管という。

冷却塔で冷やした水を冷却水といい、熱源機器や負荷と冷却塔と接続する場合はその配管を冷却水配管という。

冷温水にするため導入する水を補給水といい、給水配管から自動供給とする場合は、熱源機器と給水配管を繋ぐ配管を補給水配管という。

冷温水配管の配管径は給水管と同様に、流量線図により求めるのが一般的である。
ただし、冷温水配管は吐出先がないので、配管の圧力損失から重力により冷温水が逆流せずに循環するようにポンプ静圧を決定すればよい。

参考記事

蒸気配管(スチーム配管)

蒸気配管は、空調機や装置などの負荷に熱媒体になる蒸気を供給するための配管をいう。
蒸気は、水をボイラなどの熱源機器で加熱し、気体としている。蒸気とすることで大きなエネルギーを生み出すので主にプラント系で利用されている。

必要な蒸気の圧力が負荷によって異なるため、蒸気管の中でもおおよそ1MPa以上を求められるものを高圧蒸気管、1MPa未満のものを低圧蒸気管、として別配管とすることもある。また、負荷で利用した蒸気を熱源機器で再熱するために回収する配管を蒸気還管または蒸気ドレン管という。

蒸気は、圧力と温度より体積流量が変化する配管であるため、質量流量で表示されることが多い。配管の現状での蒸気の体積流量を求めて、流量線図や流速表などにより配管径を求める。(蒸気は気体で圧力に対しての圧力損失が比較的小さいため、設計時に圧力損失計算が省略される場合もある。)

参考予定>>蒸気の配管径の決め方

純水配管

純水配管は、不純物を含まない水を機器などに供給するための配管をいう。通常の水は、H2O以外にもミネラルや微生物など様々な成分が含まれており、例えば上水であれば殺菌の繁殖を防ぎ人体に利用できるように少量の塩素を含ませている。
純水は、水に精製装置を用いてこれらの不純物を取り除くことで製造される。

純水はその精製の方法によって除去できる不純物の種類が異なるため、精製方法を配管種にも明記することが多い。RO膜(逆浸透膜)によって精製された純水をRO水、イオン交換によって精製された純水をイオン交換水、RO膜とEDI連続イオン交換の組み合わせによって精製された純水をRO-EDI水(Elix純水)、蒸留器によって蒸留水という。

不純物を除去した水はすべて純水にあたるが、その中でも限りなくH2Oに近づけた純水を超純水という。一般的な純水の電気抵抗率が0.1~1.5MΩ・cmであるのに対して、超純水は理論上の水の電気抵抗率が18.24MΩ・cmに限りなく近づけたものになる。ただし、純水や超純水に統一の規格は無く、用途や分野ごとに要求水質が異なり、それぞれで規格が定められている。

純水配管の配管径は給水管と同様に、圧力損失が過大にならないように流量線図により求めるのが一般的である。

空気配管

空気配管(ダクト)

空気配管は、室内の空気を入れ替えるための空気を運ぶ配管をいう。配管としては、主にダクトが使われている。
目的地まで空気を運ぶために、通常はダクト経路上にファンを設けるが、ファンを設けず成り行きで空気運ぶダクト(パスダクト)も存在している。

ダクトは、供給または排出する空気の種類によって名称が異なる。
屋外の空気を屋内に導入するダクトの外気ダクト、空調した空気を室内に供給するダクトの給気ダクト、空調機に室内の空気を還すダクトの還気ダクト、屋内の空気を屋外に排出するダクトの排気ダクト、有害物質を屋外に排出するダクトの局所排気ダクト、火災が発生した際の煙を排出する排煙ダクト、などがある。

空気配管のダクト径は、圧力損失が過大にならないように摩擦抵抗線図より求めるのが一般的である。
ダクトの圧力損失より、ファン静圧を決定する。

参考記事

圧縮空気配管(エア)

圧縮空気配管は、空気の圧力を装置の動力などに利用するために供給する配管をいう。
空気の圧力を高めるために、コンプレッサーによって空気を圧縮して製造される。

圧縮空気配管は、ループ配管とされることが多い。
ループ配管とするメリットである、供給流体の状態が平準化によって圧力差が減らせるためである。

圧縮空気は、圧力と温度より体積流量が変化する配管であるため、現状の空気量を表示するリューベ[m3]表示と、標準状態の空気量(0℃、大気圧)に換算したノルマルリューベ[Nm3](ntp)表示がある。配管の現状での空気の体積流量を求めて、流量線図や流速表などにより配管径を求める。(圧縮空気は気体で圧力に対しての圧力損失が比較的小さいため、設計時に圧力損失計算が省略される場合もある。)

参考予定>>圧縮空気の配管径の決め方

参考

ファンとコンプレッサー

ファンとコンプレッサーはどちらも空気に圧力をかける装置であるが、その違いは圧縮比によって定義されている。圧縮比とは、吐出側の圧力と吸込み側の圧力との比で、圧縮比=吐出圧力/吸込圧力である。ファンの圧縮比は1.1以下、コンプレッサーの圧縮比は1.1を超えるものとされている。

ファンによって送風される空気は体積変化が少ないため、コンプレッサーによって作られた圧縮空気と異なり現在の空気量を標準空気量に換算することは一般的ではなく、温度変化による状態値の変化は補正係数をかけることで補正する程度になる。

さらにファンによる加圧力はコンプレッサーと比較し小さく、圧力に対して圧力損失の占める割合が大きいため圧力損失も無視できないことになる。

真空配管(バキューム)

真空配管は、大気圧より低い圧力の空気を装置の吸引(バキューム)などに利用するために供給する配管をいう。
空気を少なくして真空を作るために、真空ポンプによって空気を圧縮して製造される。

必要な真空状態レベルが装置によって異なるため、真空管の中でも大気圧の1×105Pa~102Paの範囲を低真空管、1×102Pa~10-1Paの範囲を中真空管、1×10-1Pa~10-5Paの範囲を高真空管、10-5Pa~の範囲を超高真空管、として別配管とすることもある。

真空配管の配管径は、圧力損失が過大にならないような流速より配管径を決定するのが一般的である。

集塵配管(集塵ダクト)

集塵配管(集塵ダクト)は、粉じんやチリなどを一箇所に集めて空気とともに吸引(バキューム)していく配管をいう。
粉じんやチリなどを集塵機に集積する。風速が足りないと粉じんを収集できないので、集塵される粉体の種類によって風速を決定する必要がある。通常のダクトと異なり固体輸送のために用いられるため、ダクト内で暴れた粉体によって大きい騒音が発生する。

集塵配管の配管径は、粉じんの種類によって決まる適正速度より配管径を決定するのが一般的である。

その他の流体配管

冷媒ガス配管

冷媒ガス配管は、空調機やチラーなどに熱媒体となる冷媒ガスを供給するための配管をいう。配管工事の分野では、パッケージ空調機などの個別空調機の室内機と室外機をつなぐ配管に限定される。
冷媒ガスは、気化と凝縮を利用した冷媒ガスの状態変化サイクルによる熱移動を行う循環配管である。

冷媒ガスは冷房か暖房かでサイクルが入れ替わるため、往き還り配管と呼ばれることは少なく、凝縮(周りの熱を放出)した冷媒ガスは液体となるので液管、気化(周りの熱を吸収)した冷媒ガスは気体となるのでガス管と呼ばれる。通常は液管・ガス管はまとめて配管される。

参考記事

冷媒ガス配管の配管径は、空調機の能力と冷媒ガスの種類から空調機メーカーが求めた配管径とする。配管全体の圧力損失もメーカーにより計算されているので、配管が長い場合は配管が可能であるか確認が必要になる。

参考記事

燃料ガス配管

燃料ガス配管は、ガス体のエネルギー源を各種燃焼装置に供給するための配管をいう。
道路に埋設されたガス管やガスボンベよりガスを引き込んでいる。

ガスの種類は、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、天然ガスなどがある。ガス配管によって供給されるのは、それらのガスを製造所で混合した都市ガス配管と液化石油ガスを主原料としガスボンベで供給されるプロパンガス(LP)配管がある。

燃料ガス配管の配管径は、吐出圧を考慮し圧力損失が過大にならないように流量線図より求めるのが一般的である。
実務上は責任分岐の問題もあるため、ガス供給の専門業者によって選定される。

産業用ガス配管、医療用ガス配管

特殊ガス配管は、上記に記載した気体以外のその他特殊ガスを産業分野や医療分野の各種装置に供給するための配管をいう。
ガスボンベよりガスを引き込んでいる。

各種装置の要求によって様々なガスや混合ガスが用いられている。代表的なものには、酸素O2二酸化炭素CO2空気Air窒素N2亜酸化窒素(笑気)N2Oなどがある。

特殊ガスは、圧力と温度より体積流量が変化する配管であるため、単位物質量molより体積流量に換算する必要がある。配管の現状での体積流量を求めて、流量線図や流速表などにより配管径を求める。(気体で粘度が低く圧力に対しての圧力損失が比較的小さいため、設計時に圧力損失計算が省略される場合もある。)

プラント系の配管

プラント系の配管は、プラントでの製造のために必要な材料類を各種装置供給するための配管をいう。
タンクからポンプによって圧力をかけて運搬している。

各種装置の要求によって様々な液体が用いられている。代表的なものには、塗料(インク)配管糊(グルー)配管などがある。水や空気などと異なり、これらの配管を処分する場合の廃液は産業廃棄物として回収するなど特別な措置が必要になる。

プラント系の配管の配管径は各種配管流体ごとに求め方が異なる。流量線図により標準流速から求める場合もあれば、経験則より求められた固着等が起きにくい配管径を選定したりと様々である。ただし、これらの液体の粘度は水よりはるかに高いため、流体に応じた標準流速とする必要がある。

サニタリー系配管

サニタリー系の配管は、食品や薬品の製造のために必要な材料類を各種装置供給するための配管をいう。
各種材料を配管輸送が可能な様に処理してからポンプによって圧力をかけて運搬している。なお、サニタリー配管とは通常より配管流体を衛生的な状態に保つために配管内の粗度を限りなく小さくし、継手も洗浄性や液溜まりなどを起こしにくいように製造された配管種類のことをいう。

サニタリー系の配管の配管径は各種配管流体ごとに求め方が異なる。流量線図により標準流速から求める場合もあれば、経験則より求められた固着等が起きにくい配管径を選定したりと様々である。ただし、これらの液体の粘度は水よりはるかに高いため、流体に応じた標準流速とする必要がある。

参考

二重配管

二重配管とは、配管を二重構造にして内部からの液漏れを配管の外管側で受け止めることで液体の配管外部への流出が起きないようにする配管である。重要な装置の上を走る配管などに用いられる。

また、プラント系やサニタリー系の液体には、配管から液漏れなどを起こすと危険な有害物質を含んだ液体も存在する。その場合は、平成24年6月改正の水質汚濁防止法により、地下水汚染の未然防止のため「有害物質を含む水の漏洩を防止できる材質及び構造とするか、又は漏洩が有った場合に漏洩を確認できる構造とすること」との記載があり、二重配管とするなど対策が必要になる。

ジャケット配管

プラント系やサニタリー系の液体には、室温が低くなると凝固してしまうものもある。配管液体が室温に関わらず凝固しないように配管をジャケット配管とする場合がある。

ジャケット配管は、配管流体を温めるために配管外部を温水や蒸気などの流体で覆う(ジャケットする)配管である。内側と外側に流体が流れる二重構造なので二重配管のひとつである。

燃料油配管(オイル)

燃料油配管は、液体のエネルギー源を各種燃焼装置に供給するための配管をいう。燃料油はプラント以外でも、非常用発電機の燃料として備蓄している施設も多い。
タンクからポンプによって圧力をかけて運搬している。

燃料油配管によって供給されるのは、灯油管重油管(A重油・B重油)などがある。

燃料油配管の配管径は、吐出圧を考慮し圧力損失が過大にならないように流量線図より求めるのが一般的である。
ただし、これらの液体の粘度は水よりはるかに高いため、流体に応じた標準流速としたり配管勾配をつける必要がある。

特殊排水(プラントや医療)

特殊排水配管は、水以外の不要な液体を排出する配管をいい、廃液中の不要な固形物を排水とともに排出することも含む。
これら特殊排水は直接下水道管に排出することはできない。よって、排水中の不純物のための除去施設を設けてから下水道管に排出や、産業廃棄物として排水とは別に回収するなどの措置を行う。

特殊排水配管は、主にプラント排水や医療排水に多い。高温排水であれば下水道に流せる温度(45℃未満)に冷却してから排水、酸排水アルカリ排水であれば下水道に流せるpH値に中和(pH値5.8~8.6以内)してから排水、油排水などであれば除去施設を設けてから排水基準以内まで除去してから排水、その他の医療排水や薬液排水も規制物質であれば法規に従い回収等を行う。