送風機(ファン)の種類
送風機とは羽根車を回転させて風を送り出す装置の総称。ファン※ともいう。
機械換気をするための装置であり、空調風を室内に送り出す「空調機」や冷却熱を外部に送り出す「冷却塔」などの構成部品にもなっている。
※以前はファンのほかブロアも送風機とされ、ブロアよりさらに圧力比(出口圧力/入口圧力)が高いものをコンプレッサーと言ったが、2005年にJIS B 0132が改正され現在ではブロアは圧縮機の一部とされている。
参考予定>>コンプレッサー(圧縮配管で取り扱う予定なのでしばらくは書かないです)
送風機の構成要素
送風機の、構成要素には以下のようなものがある。羽根車の形状や軸受けの方式などによって、形状は様々であるが構成要素は大きく変わらない。
(今記事では、遠心送風機の代表格「片吸込シロッコファン」をベースに記載している。)
羽根車
羽根車は、複数の羽根板(プロペラ)を取り付けた部品である。電動機の回転エネルギーを主軸を通して送風機の内部にある羽根車に伝えることで、送風を発生させる。送風機の最も重要な部品である。
羽根車の形状により、送風機の種類が大きく以下のように分類されている。
羽根車の形状による分類 | 風方向 | 特徴 | 送風機の種類 | 構成部材となってる機器の一例 |
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遠心送風機 | 中央に入って、遠心方向に出る | 風量は少ない、静圧(空気を押し出す力)は大きい | シロッコファン(多翼ファン)、ターボファン(リミットロード) | 空調機、レンジフードファン、ロスナイ |
軸流送風機 | 中央に入って、中央に出る | 風量は大きい、静圧(空気を押し出す力)は小さい | 換気扇、有圧扇、軸流ファン | 冷却塔、ヒーター |
斜流送風機 | 中央に入って、中央広がり方向に出る | 遠心ファンと軸流ファンの中間性能を持つ | ラインファン | |
横流送風機 (貫流送風機、クロスフロー) |
横から入って、横から出る | 風量も静圧も小さい。 軸方向を長く出来る、羽根車が小口径でも効率の低下は少ない |
エアコン |
軸と軸受け
軸(シャフト)
軸(シャフト)は、回転力を伝達するための部品である。
電動機(モータ)の回転軸から、直動またはベルト駆動により、送風機の主軸に回転を伝達する。
軸受(ベアリング)
軸受(ベアリング)は、軸の荷重を支持する部品である。
軸受は、軸の回転の抵抗を軽減するための措置がされており、滑り軸受けでは軸と軸受けの間に油を充填させて抵抗を軽減し、転がり軸受けでは軸受けに玉やころ(ローラー)を据え付けて抵抗を軽減している。
送風機においては、寸法や精度が規格化されている転がり軸受けが主に利用されている。
軸受けは、転がり軸受けが潤滑に回転するためにグリスの充填が必要になる。
送風機の軸受け(ファンベアリング)においては、ケーシング側とベルト側の2ヶ所にグリスアップする場合が多い。
電動機の軸受け(モーターベアリング)においては、55kW以上の大型電動機などの特殊な電動機以外はほとんどグリスアップできないため、ベアリング交換にて対応する。
軸封装置
軸受けと軸の間から、ケーシング内の気体が外部に漏れることを防止するために軸封装置を付ける場合がある。
ポンプにおいては軸封装置は必須であるが、送風機においては設けないことが多い。なお、昭和電機株式会社によると「取扱うガスが標準空気の場合で静圧が1kPa程度以下であれば、特に軸封装置を設ける必要はありません」とのこと。
参考予定>>軸封装置(グランドパッキンとメカニカルシール)(ポンプについて記載時作成予定)
ファンの駆動方式
遠心送風機の駆動方式は、電動機の回転軸エネルギーを送風機の主軸に伝える方法の分類で、直動式、ファンベルト方式(Vベルト方式)、カップリング駆動方式がある。
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直動式
直動式は、モータとファンが同軸で、モータによりファンが直接動かされているものをいう。
最もコンパクトな方式で、設置スペースが小さく、駆動部品が少ない。
ファンベルト駆動方式やカップリング駆動方式と異なり、モータとファンが一体になっているため、ファンとモータを自由に組み合わせることは出来ない。
大型のファンは、同軸上にモータを設置することが難しく、メンテナンスも難しくなるため、直動式を選択できない。
そのほか、ダクト内の空気が高温になる場合や酸アルカリ排気の場合などでモータとファンが同シャフトにあると悪影響を受ける場合にも、直動式を選択できない。
ファンベルト駆動方式
ファンベルト駆動方式(Vベルト方式)は、モータとファンが別軸で、電動機と送風機に溝を持つ滑車(プーリー)を設けて、両プーリー間をベルトでつないでファンが動かされているものをいう。
ファンベルトには主にベルトの断面形状がV型のベルト(Vベルト)が用いられている。
ファンベルト駆動式は、大きな遠心送風機の駆動方式で最も多く利用されている。
Vベルトは駆動による摩耗が大きく、定期的なメンテナンスが必要である。プーリーもベルトほどではないが摩耗しすり減るので定期的なメンテナンスが必要である。
カップリング駆動方式
カップリング駆動方式は、モータとファンが同軸で、モータシャフトとポンプシャフトをカップリングでつなげているものをいう。
直動式と異なり、カップリング分シャフト長が長く、ファンもモータも独立して支持をとるので、大型になる。現状は、特殊な送風機でしか使用されていない。
カップリング接続のため、送風機の設置時には、芯出し調整が必要になる。
モータ
電動機(モータ)とは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する装置のことである。遠心送風機などの大型ファンでは、送風機と電動機が独立設置とする駆動方式が多く、この場合は送風機と別メーカーの電動機を設置することが可能である。
換気扇などの小型ファンについては、ファンが電動機内蔵としていることが多いのでモーターも小型のものが多い。
なお、電動機と送風機の関係については、以下の記事を参照。
排煙ファンの駆動方式
ファンは通常、電動機(モータ)を用いて電気で駆動する。
しかし、排煙ファンは火災時に発生する煙を屋外に排出するためのファンであるので、非常時でも排気ができるようにする必要がある。
よって、排煙ファンには、火災により常用電源停止した際に、電動機駆動からエンジン駆動に自動で切り替わるエンジン駆動式と、予備電源に自動で切り替わる制御のされた電動駆動式のどちらかが利用される。
遠心送風機の形状
遠心送風機は、形状によっても片吸込-片持形、片吸込-両持形、両吸込-両持形と分類されている。
片吸込と両吸込
吸込口(風が入る方向)が片面(1方)の片吸込と両面(2方)の両吸込がある。
片吸込式は吸込口側にもダクトを接続して利用するが、両吸込式は吸込口側でのダクト接続は行わない形状であり、主に空調機の構成部品などに使用されている。
なお、吹出口側は片吸込式・両吸込式共にダクト接続は可能である。
片持ちと両持ち
送風機の軸受が、羽根車の片面で支持する片持ち(片持形)と羽根車の両サイドで支持する両持ち(両持形)とがある。
どちらの方式であっても軸受けは2つ以上必要であり、片持ちでは主に羽根車の中心付近と同方向のケーシング外との2点で支持する。
片吸込においては基本的には片持形(片吸込-片持形)になるが、大型の機種は片側だけだと支えきれないため両持形(片吸込-両持形)とする場合もある。
両吸込は片持形はなく両持形のみ(両吸込-両持形)である。
両持形は、軸受けがケーシング内になるため片持形よりコンパクトになる傾向になる。
両持形は、軸や軸受けが送風機内の流体と接触するため、酸アルカリ性の排気ガスなど特殊な空気が通る場合は耐性のある軸と軸受けとする必要がある。よって特殊排気には片持形とするほうが低コストで安全性も高い。
駆動方式のほか特殊環境下で使用する場合は、用途に合わせて防水、防油、耐熱などの特殊仕様とする必要がある。
ファンの種類
シロッコ(多翼)ファン
遠心送風機の一種。前向き羽根を多数もっている、前向き羽根は風量が出せるが高速回転には不向き。
小型から大型まで幅広く使われており、遠心送風機は風の方向特性から通常はカタツムリのような形をしているが、小型のものにはストレートシロッコファン(ラインシロッコファン)という箱型のケーシング内に収められたものもある。
過負荷(オーバーロード)による温度上昇で焼損や短絡事故にならにように注意する。
ターボファン
遠心送風機の一種。後向き羽根をもっている、大型で気体の流れに無理がない後向き羽根なので高速回転に向いている。
羽根の形状を工夫することでリミットロード特性をつけられる。リミットロード特性とは、軸動力が一定の値を超えない特性で、これにより過負荷が起きない。
換気扇
軸流送風機の一種。扇風機のように羽根が剥き出しになっているもののうち空気を押し出す力である静圧が無いものをいう。
静圧が無いのでダクトには取り付けられない、有圧扇より小型。
有圧扇
軸流送風機の一種。扇風機のように羽根が剥き出しになっているもののうち空気を押し出す力である静圧が有るものをいう。
静圧が有るのでダクトにも取り付けられる、換気扇より大型。
軸流ファン
軸流送風機のうち、羽根が筒にケーシングされているものを換気扇や有圧扇と区別しこのようにいう。
静圧が有るのでダクトにも取り付けられる、遠心送風機と比較すると小型であるが、換気扇より大型。
ラインファン
斜流ファンがダクトが拡大縮小したような形状の筒にケーシングされているもの。
静圧が有るのでダクトにも取り付けられる、小型で省スペースなファンで他のファンと異なり風量制御は通常行わない。