送風機の性能曲線

送風機(ファン)の能力は、送風機の種類や大きさなどの形状によって決まる部分と、運転状態によって決まる部分とがある。同一の送風機であっても運転状態によって風量と静圧が変動する。この記事では、ある運転状態における各種状態点を記載した図である、性能曲線図の読み方について記載する。

性能曲線図の見方

以下の性能曲線図を参考に、送風機の風量からその時の静圧などの状態値を読む。なお、静圧と風量の決定については別記事を参照。

参考記事
例題
 
問題
 

下記の性能曲線に示された、遠心送風機について、必要風量は5500CMH、必要機外静圧は250paであった。この時の各状態値を求める。

性能曲線図 風量 静圧 全圧 軸動力
解答
 

この時の風量をプロットすると各状態値は以下のようになる。
風量(CAPACITY):5,500CMH
全圧(T.P.):370Pa、静圧(S.P.):280Pa
軸動力(OUTPUT):0.41kW
効率(EFF.):59%
これは必要機外静圧の250Paを満たしている。(送風機の選定に問題ないといえる。)

性能曲線図 読み方

送風機の並列運転と直列運転

同系統のダクト上に送風機が複数ある場合、送風機の能力は単純な合算にはならない。送風機の並び方が並列か直列かによって異なる特徴を示す。

並列運転する場合

送風機が並列に接続されている場合、複数台設置の総合特性は理論上同一圧力時の風量の和で表せる。つまり、同一能力の送風機を2台並列設置した場合、静圧は1台の時と変わらず、風量は2倍になる。実際は、同ダクト上で送風すると風量の増加により圧力損失が増加するため、吐出時の風量は2倍より小さくなる。
並列運転とすると、片側のポンプが故障した場合など非常時に、1台のみでも運転することが出来るのでバックアップ機としてのメリットもある。また並列運転の場合、送風機の能力特性に差があると容量の大きい送風機の圧力に容量の小さい送風機が押し負けて、逆流となってしまう可能性もあるため、基本的には同容量の送風機とすることが望ましい。なお、並列運転の運転方式は大きく並列交互運転方式単独交互運転方式とがある。

 

 

送風機の並列運転 イメージ図

 

送風機接続イメージ

送風機の並列運転の性能曲線
性能曲線

並列交互運転は、2台並列とした場合の1台当たりの風量を、必要風量の半分(50%)で計画する運転方式。風量が小さいときは送風機が単独(1台のみ)で交互に運転、風量が大きくなると送風機が2台同時に運転する。
単独交互運転は、2台並列とした場合の1台当たりの風量で、必要風量の全て(100%)を賄う運転方式。 送風機が単独で交互に運転する方式で、片方を予備機とすることで、どちらかの送風機が故障しても単独運転に切り替えて風量を満足させることが出来るため、給気または排気の維持が必須の室などで利用する。

直列運転する場合

送風機が直列に接続されている場合、複数台設置の総合特性は理論上同一風量時の圧力の和で表せる。つまり、同一能力の送風機を2台直列設置した場合、風量は1台の時と変わらず、静圧は2倍になる。実際は、複数の送風機を通過させることで台数分の圧力損失が増えるため 、吐出時の圧力は2倍より小さくなる。
直列運転とすると、同風量のままでの加圧(ブースト)が可能になる。直列運転の吐出側の送風機をブースター機と呼ぶ場合もある。ブースター機は吸込圧力が大きくなるので、前段の送風機より耐圧性が高いことが求められる。

 

 

送風機の直列運転 イメージ図

 

送風機接続イメージ

送風機の直列運転の性能曲線
性能曲線

また直列運転の場合、吐出風量に差があると逆流の原因になるので同容量の送風機とすることが望ましいが、ブースター機は枝分かれする系統ごとに加圧用で設置する場合などもあるので、必ずしも同容量の送風機である必要はない。送風機の始動順序は、ブースター機を先に始動すると、停止している前段の送風機が抵抗となって、吸込損失が増加するので、前段の送風機を先に始動する。
なお、多段式送風機も直列運転と同様の考え方で、送風を複数の羽根車内に通すことで加圧していく。

ブースターファン 直列運転 イメージ図

性能曲線図の各項目について

風量(CAPACITY)

風量とは、送風機によって運ばれる、単位時間あたりの空気量のことをいう。この空気量は大きさ基準の体積流量であり、主に立方メートル[m3]で表記される。
単位は、1時間当たりの空気量[m3/h]([CMH]ともいう)、または1分間当たりの空気量[m3/min] ([CMM]ともいう) が主に利用されている。

全圧(T.P)と機外静圧(S.P)

圧力とは、送風機によってかけられる、空気を送り出す力のことをいう。全圧は、送風機によってかけられる全ての圧力を示し、機外静圧は、送風機出口での静圧のことをいう。
送風機における圧力では、空気の流れ方向に働く空気の移動に関わる圧力を動圧、空気の流れ方向と垂直に働く圧力を静圧という。動圧は、空気を動かす力を指すので運動エネルギーによる圧力として速度圧とも呼ばれている。動圧を維持して目的地に送風するためには、ダクトを通過する際に摩擦によって失われてしまう圧力(=圧力損失)を考慮し、機外静圧を決定する必要がある。

参考記事
 

軸動力

軸動力とは、電動機が回転するエネルギーをいう。電動機(モータ)とは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する装置のことで、電源から投入された電気エネルギーを入力(INPUT)、電動機によって変換された力学的エネルギーを出力(OUTPUT)という。出力=軸動力であり、力学的エネルギーが電動機を介して送風機の回転に利用される。

電動機効率(MOTOR EFF.)

電動機効率は、入力した電気エネルギーがどれだけ力学的エネルギーに変換されたかを表す値で以下のように示される。入力した電気エネルギーの一部は、抵抗損失などにより電力が一部消費されてしまうため、出力値は入力値より小さくなる。

電動機効率[%]=出力[kW]/入力[kW] ×100

全圧効率・静圧効率(FAN EFF.)

全圧効率または静圧効率は、軸動力がどれだけ風量や風圧に変換されたかを表す値で以下のように示される。モーターでの力学的エネルギー(回転力)が、送風機での力学的エネルギー(風力)になるために気体に有効に与えられたエネルギーの割合であり、最大効率時でも60%程度になってしまう。

全圧効率[%]=(風量×全圧/軸動力)×100
      =(風力[m3/min]/60×全圧[Pa]/(軸動力[kW]×1000)}×100
      =風力[m3/min]×全圧[Pa]/(軸動力[kW]×60,000)×100
※静圧効率の場合は、全圧を静圧にして計算する。

電圧(VOLTS)と電流(CURRENT)

電圧[V]は、電子を流すための力をいい、送風機に利用する電動機の電源電圧は100V・200Vのほか400V前後である場合もある。直流モータの場合などで電源電圧から電動機用に電圧を変更する場合は、送風機側で変圧器を入れて電圧を変更する。小型送風機であれば変圧器内蔵のものもあるが、大型送風機であれば別置きで変圧器の設置する必要がある。

一般需要家に供給されている電圧は100Vまたは200Vである。有資格者が保安維持する高圧受電設備を持つ需要家は高圧電気を変圧して利用しているので、100Vや200Vでない400V前後の電圧も利用できる

電流[A]は、電線のある断面を1秒間に流れる電子の数をいい、出力[W]同様に送風機の運動状態によって変動する。入力電力は、上述の電圧と電流によって決まり、入力電力が等しい場合は高電圧であるほど電流を小さくすることができる。電流が小さいと電流の配線の口径が小さく熱損失も少なくなるため経済的ではあるが、大電圧であるほど危険性が大きくなるため一概にどちらが良いとはいえない。

入力電力[W]=電圧[V]×電流[A]

回転数

回転数(回転速度ともいう)とは、単位時間あたりの送風機の回転数のことをいう。単位は、1分間当たりの回転数[min-1] ([RPM]ともいう) が主に利用されている。理論上、送風機の風量(流量)は回転数に比例し、全圧(全揚程)は回転数の2乗に比例し、軸動力は回転数の3乗に比例するため、回転数がn1からn2に変化した場合の各値は以下のようになる。

風量Q2=(n2/n1)×Q1
全圧P2=(n2/n1)2×P1
軸動力L2=(n2/n1)3×L1

極数

極数とは、電動機のもつN極とS極の総数をいう。N極とS極が1セットで2極、2セットで4極、3セットで6極…という様になるので基本的に極数は偶数になる。単位は、極またはP(ポール)で表示される。周波数などが同条件の送風機の場合、極数が少ないほうが回転数を上げることが出来る。回転数が多いと風量や圧力、軸動力が上がるため、基本的には極数を最小とすることが望ましい。さらに極数が小さい方がコンパクトでかつ、イニシャルコストもライニングコストも低い傾向にある。ただし、極数が小さいとトルク(送風機が回転する力)が小さくなるため、極数が小さいと回転が停止してしまう要因になる。よって大容量の送風機の場合は極数を多くしている。なお、送風機の極数は一般に4Pであることが多い。

周波数

周波数とは、電流の流れ方向が1秒間に何回切り替わるかを示す数値で、単位は[Hz](ヘルツ)になる。電流の流れ方向が切り替わるのは交流(AC)電流の場合であり、電流の流れ方向が一定の直流(DC)電流の場合は周波数はない。交流電流は電流の流れ方向の切り替わりを利用してモーターが回転するので、周波数と回転数には関係は以下のようになる。

回転数[min-1]=周波数[Hz]×60×(2/極数)×(100-滑り)[%]

周波数 極数 電流

 

2極(2P)イメージ
2Pの場合
電流の流れ方向の切替1回で1回転

4極(4P)イメージ
4Pの場合
電流の流れ方向の切替2回で1回転

※電流の流れ方向が1回切り替わる間にプラスとマイナスをそれぞれ1回ずつ経由するので、極数が2Pであると(2/2)=1回転、4Pであると(2/4)=1/2回転、6Pであると(2/6)=1/3回転となることを、(2/極数)と表現している。
※滑りとは、周波数と極数から求まる回転数と実際の回転子の回転数との速度差を表したもの。同期電動機における回転磁界と回転子(磁石)との間に速度差が発生しないので滑りは無く、誘導電動機における回転磁界と回転子(コイル)との間には速度差が発生する。通常の運転状態での滑りは3~6%程度になる。

補足

直流送電と交流送電

電力供給業者によって発電、変電を経て各所に送電される電気は交流電流である。電源周波数は、東日本で50Hz西日本で60Hzである。電源周波数のまま送風機の運転に利用することを商用周波数運転、反対にインバーターなどの周波数変動装置を利用しての運転をインバーター運転などと呼ぶことが多い。

直流電流は、交流に比べて電流の操作が難しいため一般地域での送電には利用されない。交流電流は、電流の流れ方向が切り替わる際のゼロ点(電流や電圧が0になる瞬間)を狙い容易に電流の遮断ができ、トランス変圧器で交流から交流への変圧が直接行え容易である(直流の場合は、交流に変換してから変圧することになる。)こと等が電力供給にとってのメリットになっている。なお、直流電流は電流の流れ方向が一定であるので無効電力が発生せず電力効率は交流電力より高い。

長距離送電で途中で電流の操作を必要としないような箇所では直流電流が利用されている。日本では本州から各離島への送電には直流送電が利用されている。

交流電動機(ACモーター)の同期電動機と誘導電動機について

交流電動機では主に誘導電動機と同期電動機が利用されている。どちらも固定子と回転子で構成されている交流電動機であり、電流を流すことで固定子から回転磁界を発生させて回転子を回転させている。誘導電動機は、回転子であるコイルに回転磁界による誘導起電力が発生し回転する。同期電動機は、回転子が電磁石または永久磁石であり回転磁界に磁石が追従することで回転する。

誘導電動機は、構造が簡単で丈夫なうえ、安価であるため最も多く利用されている電動機である。同期電動機は、誘導電動機に比べて保守部品が多く高価になるが、滑りが発生しないため回転数を厳密に定めたい装置などに利用されている。

直流電動機(DCモーター)について

直流電動機は、文字通り直流で動作する電動機である。交流電動機に比べて小型で消費電力が少なく、インバーターなどの周波数変動装置を使わずとも電流の大きさを変動させることで無段階的に速度を変化させることが出来る。直流電動機が交流電源から電源を取るには交流を直流に変換する装置のコンバーター(整流器)が必要になる。

交流電動機のインバーター制御が可能になった現在では、大型送風機にはあまり用いられていないが、反対に換気扇や扇風機などの小型送風機では、直流電動機の有用性が見直されてきている。交流の小型送風機は、発停の際の滑りの多さや騒音の大きさを考慮しインバーター制御ではなく回路変更による抵抗の増減で回転数を変動させているので、風量に関わらず同じだけの電力が消費されてしまう。しかし直流の小型送風機は、高効率で無段階制御が可能であるので、交流の小型送風機より電力消費も抑えることが出来る。ただしコンバーターを内蔵するので、一般に交流の小型送風機より高価になる。