パスダクト(PA)

パスダクトとは、給気を別室から取り入れる場合に設けるダクト経路のことをいう。
隣室から給気をパスする(渡す)ため、パスダクト(PassAir)と呼ばれている。
隣室から給気をパスするためには、風量の違いによる隣室との圧力差が必要である。

参考記事

なお、配線経路におけるパスダクト(金属ダクト)と同名称だが特に関わりはないので注意する。

空気をパスする目的

空気をパスするために、壁や扉などへの開口設置やパスダクト取付をする目的には以下のようなことがある。

  • 換気経路を明確にすること
  • 空調空気を隣室に送ること

換気経路を明確にすることで、建築物や換気のフローへ予期せぬ影響が出ることを防止する。例えば、ファン(送風機)により給気のみを行った場合、室内は徐々に陽圧(正圧)になっていき、最終的には送風機の機外静圧と同圧力を持った室となり、これ以上送風できなくなるはずである。しかし実際は構造体のあらゆるすき間から相当量の空気が漏れ出しており、それにより建築物や換気のフローへ予期せぬ影響を与えることになりかねない。また、陽圧になればなるほど、扉開放の際に扉を押し込むために必要な力は大きくなるので注意する。

空調空気を隣室から送ることで、効果的であると判断される場合にパスダクトを利用することがある。例えば、室面積が狭いなどで空調機の設置が困難な室に隣室から空調空気を送る場合や、クリーン室の入口などのクリーン室でないが高い清浄度を求められる室に隣室であるクリーン室から清浄度の高い空気を送る場合などに利用される。

参考記事

パスダクトの必要性

パスダクトは壁や扉などに開口設置ができない場合などに、開口設置の代替で取り付けることが多い。
開口を取り付けない理由としては以下のようなものがあげられる。

  • 隣室への音漏れ防止
  • 隣室との間が防火区画であるため安易に開口できないため

※防火区画の開口部はFD付きとする必要があり、意匠性や納まり、価格などからパスダクトにする場合も多い。(ただし、パスダクトにしてもFDは必要になる)

参考記事

また差圧制御などで空気の移動量を調整する装置を取り付けたい場合もパスダクトとすることがある。
壁や天井のすき間など意図しない部分から空気が漏れないように機密性の高い空間である必要がある。

パスダクトのダクト径

パスダクトは通常、他のダクト経路と異なり送風機(ファン)を持たないため、パスダクトより良い空気の逃げ道(壁や天井などの構造体のすき間)が他にあればそちらに空気が流れてしまう。
よってパスダクトは空気が通りやすいように、通常のダクトよりダクト径を大きくする必要がある。

明確な基準や指針がある訳では無いが、目安として隣室への空気量が全てパスダクトを通過した場合にダクト内風速1.5m/s程度になるようにダクトサイズを決定する。

※機密性が高ければ室内がチャンバーボックスの役割を果たし、これより風速が上がってもパスダクトから空気を取り込むことが出来るが、すき間がどれくらいあるかを計算により求めることが困難であるため、どこまで一般ダクトのダクト内風速の標準値(風速10m/s以下)に近付けられるかは不明。

※パスダクトに送風機を設けて強制的にパスダクトに空気を送り込むことで、通常のダクトと同様にダクト径を決定することもできる。(送風機を設けることでダクト径を小さくできる)

参考記事