パッケージ空調機(PAC)
パッケージ空調機は、空調機ごとに熱源であるチラーと送風機などが一つにまとまった装置である。
空調送風を送るために必要な装置がセットになっているのでパッケージ空調方式(=個別空調方式)と呼ばれる。チラーは仕組みによって圧縮式と吸収式に分けられるが、個別空調方式には圧縮式のチラーが内蔵されている。
空調機の容量(能力)については熱負荷計算を行い、それを満足できる空調能力の機器を選定する。
パッケージ空調機は一部機器を除いて、室内空気を循環させており、換気は行っていない。よって、換気空気の導入については、送風機や全熱交換器などの別途機器を検討する必要がある。
パッケージ空調機の種類
空冷ヒートポンプは空気で熱交換するため、通常は室内機と室外機を持つ。室内機と室外機が1:1のものをパッケージ空調機、室内機と室外機が1:複数のものをマルチ空調機、住宅用の小型のものをルームエアコンという。
通常のパッケージ空調機と、その他の室外機を持たないパッケージ空調機のピーマック(水冷式パッケージ)、ウォールスルー空調機、スポット空調機とのシステムの違いは別の記事にまとめた。
ルームエアコン
住宅用エアコンの総称
住宅内の居室部分に利用されることを想定しているため、空調能力の目安を畳数で表示していることが多い。0.35~0.45[kW/畳]程度とされている。
ルームエアコンは主に室内機が壁掛式であり、室内機と室外機が1:1の住宅用エアコンタイプを言う。ルームエアコンでも室内機と室外機が1:複数のものは、ハウジングエアコンと呼ばれ、壁掛式以外もある。
室内機の形状についてはこちらの記事にまとめた。
※空調能力の目安はあくまで一般的な負荷の居室を想定されており、実際は構造体条件や気象条件などの諸条件によって数値は大きく異なってくる。
これを個々に計算し集計するものが熱負荷計算であり、設備技術者としてはクレームを少なくするためにも、目安に頼らず簡易的にでも熱負荷を計算をすることをお勧めしたい。
住宅用エアコンと同じように、業務用エアコンであるパッケージ空調機とマルチパッケージ空調機でも空調能力の目安を参考にすることはできる。
パッケージ空調機
室外機と室内機が1:1の業務用エアコンを指す。
室内機の数だけ室外機が必要なので室外機設置の場所を取るが、他室の空調機に関わらず空調機を更新出来るメリットがある。
室外機と室内機が1対1で無くても、室内機が同容量で同一動作をする場合はパッケージ空調機に分類される。室内機の台数により、室内機2台をツインや室内機3台をトリプルと言う。
マルチ空調機(マルチパッケージ)
室外機と室内機が1:複数の業務用エアコンを指す。
同系統の室内機が各自で異容量で異なる動作が可能であり、系統ごとに室外機をひとまとめに出来るので省スペースと出来るメリットがある。
なお、電源配線は、マルチエアコンでは室外機と室内機それぞれに電源が必要で、パッケージエアコンでは室外機に電源が必要で室内機には室外機からの渡り線で電気を送っている。
空調機の改造や各種オプション部品など
パッケージングされている空調機であるので標準の仕様が各メーカーごとに決まっており、その他に必要な機能がある場合は、その要素に合わせて空調機の選定しなおすか、空調機の改造や各種オプション部品により対応することになる。
パッケージ空調機は、改造や各種オプション部品などが充実している。
ただし、メーカーや機種によって名称や対応可否が異なることがあるのでカタログなどでオプション内容の確認が必要。以下に主な改造や各種オプション部品などをまとめた。
空調機能力関連の改造やオプション
モーター改造、プーリー改造
空調機ごとに標準の送風量と静圧は決まっている。よって標準以上のダクト接続による静圧不足や、空調空気の到達距離不足などがある場合は、空調機のモーター(電動機)の回転数を上げたり、送風機プーリー(滑車)の径を上げたりすることで必要な送風量や静圧にする場合がある。
これは主に受注対応になる。
※空調機のメーカーにより改造可否や改造方法が異なるので、注文する場合はモーター改造やプーリー改造と記載するのではなく、風量アップや静圧アップと要望事項を書くほうが間違いない。
加湿器
パッケージ空調機はユニット空調機と異なり、通常は加湿器が組み込まないが、一部機種では加湿器組込として空調送風を加湿することができる。
これは主に受注対応になる。
補助ヒーター
パッケージ空調機の暖房運転は冷房運転の逆運転である。よって暖房能力を大きくしようとすると冷房能力も同時に大きくすることになり、冷房能力が過大になってしまう場合がある。
そのため冷房負荷に比べて暖房負荷が大きい場合、足りない暖房能力を補助ヒーター組込として補うことが多い。
これは主に受注対応になる。
脱臭装置、除菌装置など
カビやタバコ煙などの有害物質を抑制するため、脱臭装置や除菌装置を組み込むことができる。
これは主に受注対応やオプション部品による対応になる。
ドレン(凝縮水排水)関連のオプション
ドレンアップ、ドレンポンプ
ドレンアップは、空調機内のドレンパンに溜ったドレン水を押し上げるための小型のポンプ装置のことをいう。
ドレンポンプは、ドレンアップより高揚程で逆止弁(排水の逆流を防止する弁)が付いたものをいう。
ドレンアップはドレン押し上げる圧送管部分が短いためすぐに順勾配(自然勾配)の排水管に接続する必要があるが、ドレンポンプは圧送管部分が長いためホースなどで凹凸を避けてから順勾配の排水管に接続するなどの検討ができる。
天井内で複数の空調機のドレン水を配管で連結し排水する場合、自然勾配により排水しようとすると配管が天井内で収まらなくなってしまうことが多い。よってドレン水を配管で連結させる利用が多い、4方向天井埋込カセット形などではドレンアップを内蔵しているのが一般的である。また、ドレンアップを空調機内蔵とせず、空調機数台分のドレンをまとめてドレンアップすることもできる。
壁や床に空調機がある場合、空調機下で配管しドレンを排水することが一般的であるため、ドレンアップは内蔵しないのが一般的である。なお、下階に排水出来ないなどで上部でドレン水を回収する場合にはドレンアップやドレンポンプが必要になる。床置形の空調機の場合などドレン水を高く押し上げる高揚程機種はドレンアップではなくドレンポンプを利用することが多い。
これは主に標準仕様やオプション部品による対応になる。
ドレンパン
室外機はドレン排水口からドレン水が排出される。よって室外機ではドレン水がそのまま屋外に排出され雨水管に集約されるため一般的にはドレン水を配管で回収しないが、屋内に設置する場合などで自然な排水が困難な場所に設置する場合は、空調機下にドレンパンを設置し配管で排水可能箇所までドレン水を送る必要がある。
また、ドレン水の結露によりドレンパン裏から結露水が漏れないように必要であれば断熱措置やヒーター設置等をする必要がある。
これは主にオプション部品による対応になる。
フィルター関連のオプション
高性能フィルター
吸込口には空気中のゴミなどが空調機に入ることによる不具合を防止するため、標準では付属品でロングライフフィルター(フィルターの目が粗く、目詰まりを起こしにくく長持ちするフィルター)が入っている。
室内の集塵濃度を下げるため、通常のロングライフフィルターより捕集効率の高い高性能フィルターを利用することができる。一口に高性能フィルターといっても求められる捕集効率によって性能を選択する必要がある。
これは主にオプション部品による対応になる。
自動清掃ユニット
フィルターは徐々に目詰まりしていくため、定期的な清掃が必要になる。
最近では内蔵されたブラシなどで自動的にフィルターの清掃を行う自動清掃ユニット内蔵の空調機があり、空調機を選ぶ上で重要視するユーザーも多い。
自動清掃ユニット内蔵とすると、その分空調機が大きくなる場合が多いので注意が必要である。
これは主に標準仕様やオプション部品による対応になる。
空調機パネル
空調機パネルとは、室内機のフィルターを保護する取り外し可能なパネルをいう。
通常のパネルを、意匠性の高いインテリアパネルや、リモコンでフィルターを自動的に取り外しできる自動昇降パネルなどに変えることができる。
これは主にオプション部品による対応になる。
吹出口関連のオプション
閉鎖板
閉鎖板とは、4方向天井埋込カセット形などの多方から吹き出しまたは吸い込みができる空調機において、使用しない吹出口や吸込口を閉鎖するための板をいう。例えば、壁付近の空調機の送風によって壁面汚れが起きる場合※や不快気流になりうる場合などでは、閉鎖板を利用し空調送風を1~2方向程度閉止することができる。
これは主にオプション部品による対応になる。
※壁面汚れが起きない最小距離は空調機によって異なるが、閉止板を利用しない場合、おおよそ500mm程度は距離を開ける必要がある。
風向調整ルーバー
風量調整ルーバーとは、空調機の外面に設置し、送風方向を変更する遮へい板(ルーバー)のことをいう。各種室内機用、室外機用のものがある。
空調機の外面に取り付けるため意匠性に影響がある。
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
ハイブリットファン
ハイブリットファンとは、空調機パネルの外側に設置するプロペラをいう。送風量を増やすことで空調機に掛かる負荷を減らすことを目的としている。設置効果が不明確なためか、最近はあまり用いられない印象がある。
パネルに取り付けるため意匠性に影響がある。
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
室外機の保護関連のオプション
防護ネット、保護網や背面用金網
室外機を保護するオプション部品。
室外機は熱を効率的に逃がすためにプロペラファンの外装は粗い網目状になっていることが多い。よって人や物との接触が考えられる場所で利用する場合は触れた人のケガ防止や、物が当たることでの空調機の故障防止のために、室外機全体をカバーする防護ネットやプロペラファンに保護網を取り付ける。
また、熱を効率的に逃がすために熱交換器のアルミフィンが露出している場合も多く、その場合は通常背面用金網を取り付ける。
学校用途の室外機では、子供が不用意に近づいたりやボールがぶつけられるなどが想定し得るので防護ネットを取り付ける場合が多い。また、更に強い外部衝撃に耐えられるものとして防球用や学校用と呼ばれる防護ネットもある。
これらの保護器具はメーカーごとに名称は様々であるが、「網」は室外機のプロペラ部分などの部分的な保護部品、「ネット」は室外機全体の保護部品を指すことが多い。(網=ネットなので、実際に使い分けがあるのかは不確かである。)
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
アクティブフィルタ
アクティブフィルタは、需要家の電圧が高く高調波による影響が大きい場合で対策が必要だと判断される場合に取り付ける。
これは主に受注対応やオプション部品による対応になる。
塩害対応品、重塩害対応品
塩分を多量に含んだ大気や土壌により、錆や腐食が発生しやすい地域を塩害地域といい、海岸からの距離など※により塩害地域、重塩害地域に区別される。
塩害地域などの室外機において、塩分を含む風や雨による錆や腐食を防止するため、内外部品をコーテイングや塗装しているものを塩害対応品という。
なお、据付部品もステンレス製にするなどの塩害防止措置を行う必要がある。
これは主に受注対応とするか専用対応品となる。
※塩害地域、重塩害地域は法規による定めはなく各メーカーごとに塩害指定範囲に差がある。
おおよそ海岸からの距離が2km以内を塩害地域、500m以内を重塩害地域としているが、実際は海岸からの距離だけでなく風向や土壌なども影響する。
寒冷地対応品
寒冷地の室外機においては凝縮水(ドレン)が霜となって冷媒配管を覆い熱交換に影響を与えたり、凝縮水(ドレン)が凍結で詰まり排出されなくなったりと問題が起きる可能性がある。
よって寒冷地では、室外機の熱交換器の能力を高めたものやヒーターを搭載したものなどの寒冷地対応品がある。
これは主にオプション部品による対応とするか専用対応品となる。
防雪フード
室外機が雪により埋もれると熱交換が出来なくなり空調機が止まってしまうので、それを防止するため豪雪地帯では室外機を高架台の上に乗せて、防雪フード(傘)をつける。
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
デフロスト運転(霜取運転)
デフロスト運転は、空調機の改造や各種オプション部品などの話ではないが、参考に記載する。
デフロスト運転とは暖房サイクルの反対運転をすることで室外機側で熱を放出し霜を取る運転である。空調機の暖房サイクルは室内機で凝縮熱により熱を放出し、室外機では気化熱により熱を吸収するため、室外気温が5℃程度になると、室外機側の冷媒配管周辺ではさらに温度が下がり霜が発生する
。よって寒冷地でなくても霜取運転(デフロスト運転)が必要になる。
最近ではデフロスト運転と暖房運転を同時に行うものや、制御によりデフロスト運転のタイミングを調整するものなども出ている。
空調機の据付関連のオプション
振止ブレース
上階のスラブ(床)から空調機の吊支持を取る場合に、空調機の振れや脱落を防止するため、振止ブレースをつける場合がある。
明確な基準はないが吊り棒が長くなると振れやすくなるため、目安として吊り棒の長さが500mm以上の場合ブレースを設置するのが好ましい。
(吊り棒の長さが1500mm以上の場合は、2段階に振止ブレースをつけたり、鋼材で機器吊り用のアングルをつけたりなどする。)
これは主に専用メーカー品による対応になる。
防振吊金具と防振ゴム
上階のスラブ(床)から空調機の吊支持を取る場合に、吊り棒を通じて上階のスラブへの振動の伝達を防止するために、防振吊金具と防振ゴムを用いて空調機と上階スラブの縁を切る場合がある。
天井埋込形の空調機には防振吊金具と防振ゴムを利用するのが好ましい。ただし、天井カセット形などで天井に面した機器の場合、天井と上階スラブとの縁が切れていない場合には効果がない。
防振ゴムにスプリング性(バネ性)を持たせて、更に防振性能を高め低周波振動にも対応したものもある。
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
防振ゴムパッド、防振ゴム金具
床置きの空調機などで空調機を床に置く場合に、下階のスラブ(床)への振動の伝達を防止するために使用する。
防振ゴムパッドは空調機が基礎と面している部分の全面に敷いて使用する敷物をいう。防振ゴム金具は防振ゴム入りの据付金具をいう。
ゴムは直射日光や高温に弱く経年劣化や空調機の自重による変形もあるため、振動防止が重要な場所などではあまり使用するべきではない。
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
スプリング防振架台
床置きの空調機などで空調機を床に置く場合に、下階のスラブ(床)への振動の伝達を防止するために使用する。
空調機形状に合わせた架台にスプリング(バネ)を挟み込んだものをいう。
防振ゴム系のものより防振性能が高く、屋上などの振動の床への影響が大きい場所で利用される。
これは主にオプション部品や専用メーカー品による対応になる。
空調機の改修関連のオプション
リプレース対応品
空調機を更新する際に新冷媒機種になり、既存空調機と冷媒種類と異なる場合は冷媒配管も更新する必要がある。ただし、メーカー資料を確認し既存配管の配管径や配管肉厚が適正でキズなどが修正された状態と判断された場合には既存配管を再利用することもできる。
その際は既存冷媒を回収し配管内を洗浄し、新基準のフレア(空調機の冷媒管接続点のこと)に再加工して使用する。
リプレース対応品とは、既存配管を再利用する場合に特化した空調機を指す。具体的には空調機内で従来機種より配管に圧力がかからないよう減圧装置や、既存配管の残留物を除去するフィルターなどを内蔵しているものになる。
ワイドパネル
旧製品から空調機を取り換える際、天井の開口幅が旧製品のほうが大きい場合に開いた隙間を埋めてくれる補助部品。
4方向天井埋込カセット形以外の機種ではそのような補助部品はないことが多い。
これは主にオプション部品による対応になる。
パネルスペーサー
旧製品から空調機を取り換える際、天井内に空調機が納まりきらず天井面に出っ張ってしまう場合にその隙間を埋めてくれる補助部品。
4方向天井埋込カセット形以外の機種ではそのような補助部品はないことが多い。
これは主にオプション部品による対応になる。