空調機の冷房サイクルと暖房サイクル
空調機から室内へ空調した空気を循環する場合、空気はその状態点を変化させながらサイクルしている。これを空調機サイクルとして可視化するため湿り空気線図上に記載する。
エアハンドリングユニットにおいては、空調機風量と冷却加熱コイルや加湿器の能力を個々に選定するため、空調機サイクルとして状態点をプロットすることが重要になる。
なお、空調サイクルの関連で基本的なことは、別記事にまとめている。
空調機の冷房サイクル
空調機の冷房サイクルはエアハンドリングユニットにおいては以下の状態点をプロットする。詳細については以下の例題を参照。
①、外気条件点(OA) 取入外気の状態点
②、室内条件点(RA) 室内空気(還気)の状態点
③、混合空気点(OA+RA) 外気と還気を混合した空気の状態点
④、冷却コイル点※1 冷却コイルにより冷却除湿した空気の状態点
⑤、加熱コイル点※2 加熱コイルにより再熱した空気の状態点
⑥、空調機出口点(SA) 空調機の出口での空気の状態点
※1:冷却コイル点は、空調サイクルの簡略化のため省略されることが多い。
※2:再熱をしない場合、加熱コイルの状態点はない。
外気条件(32℃、60%)、室内条件(26℃、50%)、必要換気量1000m3/hの室へ空調空気を送る冷房サイクルを湿り空気線図にプロットする。
室内熱負荷(顕熱10000W、潜熱2500W)、還気量は必要空調風量=換気量(外気導入量)+還気量となるように計画する。
冷却コイルの相対湿度を95%、空調機の出口相対湿度を90%とする。※
まずは、①外気条件点と②室内条件点をプロットする。
表題より、①(32℃、60%)、②(26℃、50%)とする。
次に、⑥空調機出口点をプロットする。空調負荷の顕熱比と空調機の出口相対湿度の交点より求める。
空調負荷の顕熱比=顕熱/全熱=10000/(10000+2500)=0.8と空調機の出口相対湿度90%との交点より、⑥(14.6℃、90%)となる。
④冷却コイル点は、空調機出口点から相対湿度95%の点に水平移動した値になる。
冷却コイル点から、空調機内で送風機などにより温度上昇があり、空調機出口点温度になるためである。
よって、④(13.7℃、95%)となる。
なおこの時、
冷房吹出温度差=室内温度―空調機出口温度=26.0-14.6=11.4℃
必要空調風量=顕熱量/(0.33×吹出温度差)=10000/(0.33×11.4)≒2660m3/h となる。
冷房吹出温度差と必要空調風量については別記事を参照。
次に、③混合空気点をプロットする。外気条件点と室内状態点より混合点を求める。
表題より、還気量は必要空調風量=換気量(外気導入量)+還気量となるように計画するため、
還気量=必要空調風量-還気量=2660-1000=1660m3/hとなる。
よって、混合比率=外気:還気=1000:1660≒3:5より、③(28.3℃、56%)になる。
混合点の状態値は別記事を参照。
今回は再熱が無いため、⑤加熱コイル点は無い。
以上より、冷房サイクルは下記のようになる。
※理論上は飽和状態になる相対湿度100%で水蒸気が凝縮するが、実際は相対湿度が100%になる前の相対湿度95%程度で凝縮(除湿)を始める。さらに空調機吹出口の前で送風機などの熱により温度が上がり相対湿度が下がる。空調機吹出口での相対湿度の目安は、エアハンドリングユニットでは相対湿度90~95%程度、パッケージ空調機では相対湿度85~90%程度である。
空調機の暖房サイクル
空調機の冷房サイクルはエアハンドリングユニットにおいては以下の状態点をプロットする。詳細については以下の例題を参照。
①、外気条件点(OA) 取入外気の状態点
②、室内条件点(RA) 室内空気(還気)の状態点
③、混合空気点(OA+RA) 外気と還気を混合した空気の状態点
④、加熱コイル点 加熱コイルにより加熱した空気の状態点、加湿器入口の状態点
⑤、空調機出口点(SA)※ 空調機の出口での空気の状態点
※空調機出口点≒加湿器出口点である。実際には加湿器出口点から空調機出口点までに、送風機などによる温度上昇があるが、暖房サイクルにおいては余裕側なので見込まない。
外気条件(2℃、30%)、室内条件(20℃、40%)、必要換気量1000m3/hの室へ空調空気を送る暖房サイクルを湿り空気線図にプロットする。
室内熱負荷は顕熱9000W、水噴霧加湿(熱水分比0kJ/kg)とする。
必要空調風量は、冷却サイクルと同様に2660m3/h、外気導入量は1000m3/h、還気量は1660m3とする。
※暖房サイクルは冷房サイクルと異なり、温度調整と湿度調整は別々に行うので、空調風量は自由に決定することが出来る。
まずは、①外気条件点と②室内条件点をプロットする。
表題より、①(2℃、30%)、②(20℃、40%)とする。
次に、⑤空調機出口点をプロットする。空調負荷と必要空調風量から求めた吹出温度差と室内条件点より水平移動した線から求める。
吹出温度差=顕熱量/(0.33×空調風量)=9000W/(0.33×1660)=16.4℃となるので、⑤(36.4℃、15.4%)となる。
次に、③混合空気点をプロットする。外気条件点と室内状態点より混合点を求める。
表題より、冷房サイクルと同様に
混合比率=外気:還気=1000:1660≒3:5より、③(13.3℃、43%)になる。
④加熱コイル点は、混合空気点から水平移動した線と空調出口点から熱水分比の傾きの交点から求める。
加熱コイル点は混合空気を加熱した値であり、そして加熱コイル点から加湿した値が空調機出口点になるためである。
よって、④(41℃、9%)となる。
熱水分比については別記事を参照。
以上より、暖房サイクルは下記のようになる。