冷媒配管の仕様や配管径の決め方
個別空調機において、室内機と室外機をつなぐ配管を冷媒配管と呼ぶ。
冷媒配管には冷媒ガスが封入されており、空調機内で熱交換を行う前後(往きと還り)の2本の配管を機器に接続する。熱源機器であるチラーにも同様に冷媒配管が内蔵されているが、今回は機器外で冷媒配管を配管する個別空調機についての記載をしている。個別空調機と冷媒配管については別記事に記載している。
なお、熱源機器であるチラーには圧縮式と吸収式があるが、個別空調機に搭載されているのは圧縮式チラーである。
チラーについては別記事に記載している。
冷媒配管の配管材
一般に冷媒配管は、空調用の被覆銅管が利用されている。
配管材は銅管で、被覆材はポリエチレンフォーム保温筒2種である。
画像:因幡電工
冷媒配管はB呼称(インチ系)で配管径は外径で表示している。20A、30A、40Aなどと表記するA呼称(ミリ系)の配管と数値の表示が異なる。
以下にA呼称とB呼称と外径の対応表を掲載した。
A呼称(ミリ系) | B呼称(インチ系) | 銅管の外径 | |
---|---|---|---|
空調用 | 建築用 | ||
8 | 1/4 | 6.35 | 9.52 |
10 | 3/8 | 9.52 | 12.70 |
15 | 1/2 | 12.70 | 15.88 |
– | 5/8 | 15.88 | 19.05 |
20 | 3/4 | 19.05 | 22.22 |
– | 7/8 | 22.22 | – |
25 | 1 | 25.40 | 28.58 |
– | 1 1/8 | 28.58 | – |
32 | 1 1/4 | 31.75 | 34.92 |
– | 1 3/8 | 34.92 | – |
40 | 1 1/2 | 38.10 | 41.28 |
– | 1 5/8 | 41.28 | – |
– | 1 3/4 | 44.45 | – |
50 | 2 | 50.80 | 53.98 |
– | 2 1/8 | 53.98 | – |
65 | 2 1/2 | 63.50 | 66.68 |
– | 2 5/8 | 66.68 | – |
80 | 3 | – | 79.38 |
100 | 4 | – | 104.78 |
125 | 5 | – | 130.18 |
150 | 6 | – | 155.58 |
補足:呼び径と外径の関係が空調用銅管と建築用(配管用)銅管では1サイズ分ズレがあるので注意。
冷媒配管の被覆厚は以下のように決められている。
外径 | 6.35 | 9.52 | 12.70 | 15.88 | 19.05 | 22.22 | 25.40 | 28.58 | 31.75 | 34.92 | 38.10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ガス管[mm] | 20 | ||||||||||
液管[mm] | 7.5 | 10 |
補足:空気調和以外の冷媒管の保温材及び保温厚は、特記による。
SHASE-S010-13
冷媒配管の図面表記
冷媒配管は平面図上では単線で表現されているが、実際は空調機内で熱交換を行う前後(往きと還り)の配管である液管とガス管をまとめて1本線で表現している。
マルチ空調機などで室外機:室内機が1:複数であった場合は、簡略的に表示すると以下のようになる。
しかし、実際の配管は室外機冷媒配管の接続口の数で冷媒配管の本数と管径が異なる。室外機の接続口が室内機の数だけある場合は、各室内機ごとの冷媒配管を合流せず室外機につなぐため、各室内機能力を満たす配管径とする。
室外機の接続口が1つである場合は、各室内機ごとの冷媒配管を合流して室外機につなぐため、室内機の合計能力を満たす配管径とする。
現在の傾向として、配管本数が少なく省スペースで冷媒ガスの充てん量も少なく済むため、室外機の接続口が1つとする機種が増えている傾向にある。
マルチ空調機には、1つの室外機に対して室内機が複数設置されている場合
室内機がすべて冷房運転あるいは暖房運転となる冷暖切替タイプと、室内機ごとに冷房運転か暖房運転かを選択できる冷暖同時タイプとがある。
冷暖同時の機種の一部機種には、分岐用のユニットを取り付けが必要な機種もある。
分岐用のユニットは、冷暖房同時運転時の熱交換効率を上げるために室内機と室外機の間に設置される機器である。
各メーカー配管本数や運転方法が異なっており、2管式(液管とガス管)のほか3管式(液管とガス管とガス管)とするものも多いので確認が必要。
分岐用のユニットの名称は各メーカー異なり、三菱電機(株)では分流コントローラ、ダイキン工業(株)ではBSユニット、(株)日立製作所では冷暖切替ユニットなどと呼んでいる。
冷媒配管の配管径
冷媒管径は空調機の能力により決定する。よって空調機メーカーが仕様書などに記載している配管径とすることが望ましい。
メーカーによって多少の差があるが、冷媒ガスがR410AやR32の時のおおよその値は以下のようになる。
馬力(HP) | 0.8 | 1.0 | 1.3 | 1.5 | 1.8 | 2.0 | 2.3 | 2.5 | 2.8 | 3.0 | 3.3 | 4.0 | 5.0 | 6.0 | 8.0 | 10 | 16 | 20 | 24 | 30 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
能力[kW] | 冷房 | 2.0 | 2.5 | 3.2 | 3.6 | 4.0 | 4.5 | 5.0 | 5.6 | 6.3 | 7.1 | 8.0 | 12.5 | 12.5 | 14.0 | 20.0 | 25.0 | 40.0 | 50.0 | 60.0 | 71.0 |
暖房 | 2.2 | 2.8 | 3.6 | 4.0 | 4.5 | 5.0 | 5.6 | 6.3 | 7.1 | 8.0 | 9.0 | 11.2 | 14.0 | 16.0 | 22.4 | 28.0 | 45.0 | 56.0 | 67.0 | 80.0 | |
ガス管径 目安 | 12.70 | 15.88 | 19.05 | 25.40 | 28.58 | 31.75 | 38.10 | 44.45 | |||||||||||||
液管径 目安 | 6.35 | 9.52 | 12.70 | 15.88 | 19.05 |
なお、冷媒ガスがR410AやR32より効率の悪い冷媒ガスでは配管径が表より大きくなる。
個別空調機の現行機種では、R410AやR32の利用が盛んであり、他の冷媒ガスはあまり利用されていない。
個別空調機の旧機種ではオゾン破壊係数のあるR22が使われている場合があるが、R410AはR22の1.6倍の圧力があるため配管径が変わるだけでなく配管厚も変わるので、基本的にはR22の冷媒配管を現行機種に流用することはできない※。
※R22から現行の冷媒ガスR410Aに既存配管を流用して更新は配管条件によっては可能である場合もあるため、必要であればメーカーに問い合わせる必要がある。なお、三菱電機(株)からR22から現行の冷媒ガスR410A更新する専用機であるリプレース空調機も出ている。