熱負荷計算書
熱負荷計算は、室内を設計温湿度にするのに必要な空調能力の検討するために行われる。
熱負荷(室内に発生している熱量)は大別すると、外皮負荷、室内負荷、外気負荷の3つに分けられる。
各負荷について以下に記載する。
なお、負荷項目は茶本の「熱負荷計算書」の作成で検討している項目とした。
熱負荷計算の用語等と空気の状態値
まず、熱負荷計算に関わる用語を説明する。
空気の状態値は、この内の2つの値がわかれば湿り空気線図により他の状態値も求めることができる。
乾球温度(DB)
普通の温度(気温)のこと、WB(湿球温度)と区別する意味でこのように呼ぶ。
26℃(DB)などと表記する。
DBは、dry bulb の略。
・内外温度差
室内と屋外の乾球温度の差、顕熱計算に必要になる。
相対湿度(RH)
空気中の水蒸気含有量と、現在の空気温度にできる最大の水蒸気含有量(飽和水蒸気量)との比を百分率で表したもの。
50%(RH)などと表記する。
RHは、relative humidity の略。
絶対湿度(AH)
乾燥空気(DryAir)の単位質量[kg(DA)]当たりの水蒸気量[kg]のこと。
0.0105[kg/kg(DA)]などと表記する。
AHは、absolute humidity の略。
・内外絶対湿度差
室内と屋外の絶対湿度の差、潜熱計算に必要になる。
比エンタルピー
乾燥空気(DryAir)の単位質量[kg(DA)]当たりのエンタルピー(空気の持つエネルギー)[kJ]のこと。
52.9[kJ/kg(DA)]などと表記する。
・内外比エンタルピー差
室内と屋外の比エンタルピーの差、全熱(顕熱と潜熱の合計)計算に必要になる。
顕熱(SH)
温度変化のエネルギーのこと。
通常、熱負荷は顕熱負荷のことを指し、一部負荷(外気負荷や人体負荷)には顕熱負荷の他に潜熱負荷がある。
500[W]などと表記する。
SHは、sensible heatの略。
潜熱(LH)
状態変化のエネルギーのこと。
熱負荷計算における潜熱は、ほとんど蒸発(液体から気体になること)の状態変化を指す。
少量の蒸発でも大きなエネルギーになる。
外気負荷(湿度を含んだ空気がある)と人体熱負荷(汗を蒸発させる)については潜熱負荷も検討する。
LHは、latent heatの略。
全熱(TH)
顕熱と潜熱の合計。
THは、total heatの略。
熱負荷計算の係数や補正値
間欠運転係数
空調停止時の蓄熱分の熱負荷を加味する場合の係数。空調開始時刻の熱負荷に補正係数としてかけている。
空調室は停止期間中に外皮等から蓄熱しており、運転後は蓄熱分を放熱するので空調の熱負荷が大きくなる。
熱負荷計算書では冷房時は9時の外皮負荷に、暖房時は顕熱負荷全体に補正係数としてかけている。
冷房時の係数は1.1程度、暖房時の係数は1.0~1.1程度
送風機負荷係数
送風機の運転で発する熱量による負荷を加味する場合に用いる係数、顕熱負荷全体に補正係数としてかけている。
冷房時の係数は1.05程度、暖房は余裕側なので見込まない
ダクトにおける負荷係数
ダクトからの熱負荷を加味する場合に用いる係数、顕熱負荷全体に余裕係数としてかけている。
ダクトからの空気漏洩やダクト表面からの放熱を考慮している。
ダクトが設計室温と異なる温度の外気や排熱などを運搬する場合に用いる。
冷房時、暖房時の係数はともに1.0~1.1程度
天井高さによる暖房乾球温度の補正値
高天井である場合に用いる係数。暖房設計用屋内乾球温度に補正係数としてかけている。
暖房の暖かい空気は室内の上方に向かうため、同じ室容積でも天井が高い部屋のほうが暖房効果が薄れてしまうことを考慮している。
係数は以下の表による。
天井高さによる暖房乾球温度の補正値
天井高[m] | 温水暖房 | 蒸気暖房 |
---|---|---|
4.2 | 1.02 | 1.03 |
4.8 | 1.04 | 1.06 |
5.4 | 1.06 | 1.09 |
6 | 1.1 | 1.15 |
7.2 | 1.12 | 1.18 |
建築設備設計基準平成30年度版
空調機を選定する際には空調機側でも余裕係数を見込む。
ポンプ、配管、装置蓄熱の負荷による係数は1.0~1.05程度、経年劣化による係数は1.05程度、能力補償係数は1.05程度、全体の余裕係数は1.0~1.1程度を見込むものとする。
係数は古くから使用されているもので、各書で係数は変更されつつある。
室条件により様々に変化する空調に対して一定の係数としてよいのか、空調機効率等が向上した現代においてもこれだけの余裕を見込む必要はあるのか、などが疑問視されている。
外皮負荷
外皮負荷とは、外部から構造体などを通して室内に入る熱負荷の総称で、熱負荷計算書では以下の3つについて計算している。
- 構造体負荷 (構造体の熱貫流)
- ガラス面通過熱負荷 (ガラス面の熱貫流)
- ガラス面日射負荷 (ガラス面の直射日光の熱)
外皮負荷の計算についての詳細は以下のページにまとめた。
参考の図や表はそちらに記載し、ここでは概要を説明する。
構造体負荷
構造体負荷とは、壁、床、天井などの構造体の構成材料を通しての熱貫流量(熱が入ってくる量)を言う。
以下の式により求められる。
構造体負荷[W]=構造体面積[m2]×熱貫流率[W/m2・K]×温度差[K]
ガラス面通過熱負荷
ガラス面通過熱負荷とは、ガラス面を通しての熱貫流量(熱が入ってくる量)を言う。
構造体負荷と考え方は同じで、以下の式により求められる。
ガラス面通過熱負荷[W]=ガラス面面積[m2]×熱貫流率[W/m2・K]×隣室との温度差[K]
ガラス面日射負荷
窓などのガラス面は日射による熱負荷があるためガラス面通過熱負荷の他に、ガラス面日射負荷を考える必要がある。
ガラス面日射負荷とは、ガラス面から入って来る直射日光の熱負荷のことを言う。
冬期は直射日光は余裕側なので見込まない。以下の式により求められる。
・周囲に日陰となるような遮へい物が無い場合
ガラス面日射負荷[W]=ガラス面面積[m2]×各方位の日射熱取得[W/m2]×遮へい係数
・周囲に日陰となるような遮へい物が有る場合
ガラス面日射負荷[W]=ガラス面面積[m2]×{(各方位の日射熱取得-日陰の日射熱取得)[W/m2]×日照面積率+日陰の日射熱取得[W/m2]}×遮へい係数
室内負荷
室内で発生する熱負荷で、熱負荷計算書では以下の3つについて計算している。
- 照明負荷
- 人体負荷
- その他の負荷
室内負荷の計算についての詳細は以下のページにまとめた。
参考の図や表はそちらに記載し、ここでは概要を説明する。
照明負荷
照明負荷は以下の式より求められる。
照明負荷[W]=照明個数×照明器具の消費電力[W/個]
人体負荷
人体負荷は以下の式より求められる。
人体負荷(顕熱)[W]=人数×1人当たりの顕熱量[W/人]
人体負荷(潜熱)[W]=人数×1人当たりの潜熱量[W/人]
その他の負荷
照明や人体の他の熱を発生する機器をその他の負荷として計上する。具体的にはコンセント負荷、OA機器の負荷、制御盤や熱源機器による負荷等をいう。
コンセント負荷は以下の式より求められる。
コンセント負荷[W]=室面積[m2]×消費電力[W/m2]×負荷率(≒0.6)
(消費電力は一般事務室で10~15[W/m2]、OAフロア事務室は15~30[W/m2]程度)
外気負荷
設計温湿度と異なる温湿度の外気を取り込むことで起きる負荷で、熱負荷計算書では以下の1つについて計算している。
- すき間風負荷
外気負荷の計算についての詳細は以下のページにまとめた。
参考の図や表はそちらに記載し、ここでは概要を説明する。
すき間風の風量
茶本では、すきま風負荷を考慮するのは
- 外気に隣接する開閉する扉(ドア)がある場合
- 外気に隣接する窓(のサッシの隙間)から入るすきま風がある場合
のふたつである。
実際には、すき間風は窓サッシのすき間だけでなく、壁の隙間などのあらゆるすき間から漏れる。
外気に隣接する開閉する扉(ドア)がある場合のすき間風の風量は
すき間風の風量[m3/h]=室容積[m3]×換気回数
換気回数は
入口が風上側の場合は、夏期2回、冬期3〜4回。
それ以外の場合は、夏期1回、冬期1〜2回 とする。
外気に隣接する窓(のサッシの隙間)から入るすきま間風の風量は
すき間風の風量[m3/h]=窓面積[m2]×すき間風の風量[m3/m2・h]
すき間風負荷や換気扇負荷
すき間風の風量がある場合や、その他に換気扇により外気が導入されたなどで、空調室と異なる温湿度条件の空気の取り入れがある場合は、以下の式により外気負荷を求める。
全熱負荷[W]=0.33×外気量[m3/h]×内外比エンタルピー差[kJ/kg(DA)]
顕熱負荷[W]=0.33×外気量[m3/h]×内外温度差[℃]
潜熱負荷[W]=833×外気量[m3/h]×内外絶対湿度差[kg/kg(DA)]
※0.33と833の換算については以下を参照する。
※外気の導入は一般に換気のために行われる。換気量は以下を参考のこと。
以下の条件の空調室①の夏期の熱負荷を計算し、空調機を選定する。
室用途:事務室
室容積:25m×8m×2.5m(天井高)
室内温湿度条件:DB28℃、RH50%
屋外温湿度条件:DB34℃、RH50%
外皮負荷:3000W
室内負荷:以下の条件より求める
・人体負荷→人員密度0.15[人/m2]、単位顕熱 55[W/人]、単位潜熱 66[W/人]
・照明負荷→LED照明(下面開放形) 10[W/m2]
・その他 →コンセント負荷 20[W/m2]、大型機器やOA機器等は無し
外気負荷:必要換気量を全熱交換器により導入する
全熱交換器:全熱交換効率70%、顕熱交換効率80%
空調機:4方向天井カセットパッケージ空調機、2台
外皮負荷
表題より
顕熱負荷:3000W
人体負荷
空調室①の在室人数は、
在室人数=人員密度[人/m2]×室面積[m2]=0.15×25×8=30人
よって
顕熱負荷:人数×1人当たりの顕熱量[W/人]=30×55=1650W
潜熱負荷:人数×1人当たりの潜熱量[W/人]=30×66=1980W
照明負荷
顕熱負荷:室面積[m2]×照明器具の消費電力[W/m2]=25×8×10=2000W
その他の負荷
顕熱負荷:室面積[m2]×消費電力[W/m2]×負荷率(≒0.6)=25×8×20×0.6=2400W
外気負荷
室内温湿度条件のとき、絶対湿度0.0118[kg/kg(DA)]、比エンタルピー58.5[kJ/kg(DA)]
屋外温湿度条件のとき、絶対湿度0.0168[kg/kg(DA)]、比エンタルピー77.4[kJ/kg(DA)]
よって
内外温度差は、34-28=6℃
内外絶対湿度差は、0.0169-0.0118=0.0051kg/kg(DA)
内外比エンタルピー差は、77.4-58.5=18.9kJ/kg(DA)
空調室①の必要換気量は、一人当たりの必要換気量を30[m3/h人]とすると
必要換気量[m3/h]=一人当たりの必要換気量×人数=30×30=900m3/h
必要換気量を全熱交換器により導入するため
全熱負荷:0.33×外気量[m3/h]×内外比エンタルピー差[kJ/kg(DA)]×(1-全熱交換効率)=0.33×900×18.9×(1-0.7)≒1684W
顕熱負荷:0.33×外気量×内外温度差[℃]×(1-顕熱交換効率)=0.33×900×6×(1-0.8)≒356W
潜熱負荷:全熱負荷-顕熱負荷=1684-356=1328W
空調機選定
全負荷合計=顕熱負荷+潜熱負荷=(3000+1650+2000+2400+356)+(1980+1328)=9406+3308=12714W
空調機1台あたりの必要能力は、全負荷合計/台数=12720/2=6360W=6.36kW
よって、必要能力を満たす最小の空調機は、冷房能力7.1kW(3馬力)の空調機になる。
※熱負荷計算書を利用する場合は以下のようになる。
顕熱比(SHF)と空調機
顕熱比とは、空調機の処理能力の内で顕熱の処理能力の割合をいう。
夏期の熱負荷計算を行う際には顕熱と潜熱を分けて計算し、顕熱負荷と潜熱負荷の割合を確認する。
顕熱比(SHF)=空調機の顕熱処理能力/全熱処理能力
冷房時は空気が冷却されて空気中の水蒸気の一部が凝縮水となり排出されるため、潜熱負荷により増えた水蒸気の処理(除湿)ができる。
暖房時は空気が加熱されても空気中の水分量は変わらないため、潜熱負荷は処理されず、暖房能力は顕熱比(SHF)=1.0である。
顕熱比と空調機選定のイメージ
一般の空調機は、人体負荷における潜熱負荷程度は処理する必要があるので、顕熱比は0.8程度になる。
つまり、空調機の全能力の内の20%程度は潜熱を処理(除湿)するために利用されている。
しかし、熱負荷によっては顕熱負荷と潜熱負荷の割合が一般の空調機から大きく異なる場合もある。
顕熱負荷の割合が大きい場合、一般の空調機を選定してしまうと全体のうち20%程度は使えない能力になるため空調機が過大になる。
潜熱負荷の割合が大きい場合、一般の空調機を選定してしまうと潜熱が取り切れないまま過冷却となってしまう。
オールフレッシュ空調機
オールフレッシュ空調機とは、一般の空調機のように室内の空気を空調機内に循環させることで空調するのでは無く、全て(オール)新鮮な(フレッシュ)外気を導入することで空調する空調機のこと。
外気負荷を処理する必要があるので、潜熱負荷の割合が大きくなる。顕熱比は0.4程度になる。
電算機室用空調機
電算機室用空調機とは、情報や通信用の熱負荷の大きい機器の集めた電算機室を正常な状態に保つための空調機のこと。
電算機室用空調機やサーバー室用空調機、高顕熱機種などとも呼ばれる。
人の出入りが少ない(基本的には無いと考える)室のため、潜熱負荷を発生させる外気負荷(人員がいないため必要換気)や人体負荷がほとんどない。顕熱比は0.9以上のものをいう。
電算機室の注意事項
保守や点検などの人員の換気の必要性
普段は人が立ち入らない室とはいえ、全くの無人というわけではない。
実際は保守や点検などのために人が滞在する時間が必ずあるため、それに伴い電算機室であっても必要換気量がある。
一般的に必要換気量は、人員による必要換気量か換気回数による必要換気量のうちどちらか大きい方とする。
必要換気量[m3/h]=一人当たりの必要換気量(20~35)[m3/h人]×保守や点検などの人員(1~2)[人]
必要換気量[m3/h]=室容積[m3]×換気回数(1)[回/h]
加湿の必要性
電算機室は潜熱負荷が少ないため、顕熱負荷から選定した一般の空調機を使用した場合は除湿しすぎてしまうことになる。
相対湿度30%以下の極端な低湿度状態では、静電気による発火等の原因になり電算機に甚大な被害を与えかねない。
よって加湿器を導入する必要がある。
予備機の必要性
空調機が止まった場合に電算機が熱により故障するなど、空調機の故障が重大な問題につながる電算機室などは、一般的には空調機1台が故障しても問題なく運転出来るように空調能力に余裕をみる。
例えば、電算機室の空調熱負荷が60kWで7台の空調機で負荷を分担する場合、1台は予備機と考えると
1台あたりの必要能力は、全負荷合計/(台数-1)=60/(7-1)=10kWとなる。
大きい電算機室でなければ、一般的には空調負荷の100%を担う空調機を2台設置し交互に運転する場合が多い。
以下の条件の空調室②の夏期の熱負荷を計算し、空調機を選定する。
室用途:電算機室
室容積:10m×4m×2.5m(天井高)
室内温湿度条件:DB24℃、RH45%
屋外温湿度条件:DB34℃、RH50%
外皮負荷:2000W
室内負荷:以下の条件より求める
・人体負荷→人数1名、単位顕熱 69[W/人]、単位潜熱 53[W/人]
・照明負荷→LED照明(下面開放形) 3[W/m2]
・その他 →サーバーによる発熱量 12500W
外気負荷:必要換気量30m3/hを換気扇により導入する
換気扇:天井扇 1台
空調機:4方向天井カセットパッケージ空調機、2台(1台は予備機とする)
外皮負荷
表題より
顕熱負荷:2000W
人体負荷
顕熱負荷:人数×1人当たりの顕熱量[W/人]=1×69=69W
潜熱負荷:人数×1人当たりの潜熱量[W/人]=1×53=53W
照明負荷
顕熱負荷:室面積[m2]×照明器具の消費電力[W/m2]=10×4×3=120W
その他の負荷
表題より
顕熱負荷:12500W
外気負荷
室内温湿度条件のとき、絶対湿度0.0084[kg/kg(DA)]、比エンタルピー45.6[kJ/kg(DA)]
屋外温湿度条件のとき、絶対湿度0.0168[kg/kg(DA)]、比エンタルピー77.4[kJ/kg(DA)]
よって
内外温度差は、34-24=10℃
内外絶対湿度差は、0.0168-0.0084=0.0084kg/kg(DA)
内外比エンタルピー差は、77.4-45.6=31.8kJ/kg(DA)
必要換気量を換気扇により導入するため
全熱負荷:0.33×外気量[m3/h]×内外比エンタルピー差[kJ/kg(DA)]=0.33×30×31.8≒315W
顕熱負荷:0.33×外気量×内外温度差[℃]=0.33×30×10≒99W
潜熱負荷:全熱負荷-顕熱負荷=315-99=216W
空調機選定
全負荷合計=顕熱負荷+潜熱負荷=(2000+69+120+12500+99)+(53+216)=14788+269=15057W
空調機1台あたりの必要能力は、全負荷合計/(台数-1)=15057/(2-1)=15057W≒15.1kW
よって、必要能力を満たす最小の空調機は、冷房能力20kW(8馬力)の空調機になる。
なお、顕熱比(SHF)=14788/15057≒0.98となる。
※熱負荷計算書を利用する場合は以下のようになる。
空調ゾーニング
空調ゾーニングとは、負荷を方位や使用時間などでゾーンごとに分けて別々の空調系統で負荷を処理することをいう。
これによりゾーンによる負荷の差に対応できるので、室内の空調ムラを少なくできて、効率的な運転になる。
空調ゾーニングの検討が重要になるのは、ユニット空調機(エアハンドリングユニットやファンコイル)において全体の空調システムを検討する場合である。パッケージ空調機は各室ごとに空調機を選定する場合が多いため、空調ゾーニングの検討は個々の空調機の選定において空調系統の決定する場合に必要になる。
空調ゾーニングの方法は方位、使用時間、空調条件、負荷傾向などがある。
方位別ゾーニング
インテリアゾーンと各方位ペリメーターゾーンとに分けることをいう。
(例)インテリアゾーンとペリメーターゾーン北側とペリメーターゾーン南側など
インテリアゾーン(内部)負荷は室内負荷であるので、ペリメーターゾーンの負荷と異なり常に加熱側の負荷(冷房負荷)になる。
ペリメーターゾーン(外周部)負荷は外気負荷であるので、外気温に影響されるため、夏期は加熱側の負荷(冷房負荷)、冬期は冷却側の負荷(暖房負荷)になる。更にペリメーターゾーンは方位によって負荷の大きさが大きく異なる。
時間別ゾーニング
利用時間が異なる場合に空調系統を分けることをいう。
(例)一日中空調する事務室と使用する時だけ空調する会議室など
空調条件別ゾーニング
空調温湿度条件が異なる場合に空調系統を分けることをいう。
(例)冷暖房を行う事務室と冷房専用運転をする電算機室など
負荷傾向別ゾーニング
顕熱比が大きく異なる場合に空調系統を分けることをいう。
(例)一般的な事務室と潜熱負荷の大きい講堂と潜熱負荷が少ない電算機室など