室内負荷と外気負荷

空調において熱負荷となるのは、構造体などの外皮から外部の熱などが伝わることで発生する外皮負荷、人体や照明の熱などの室内で発生する室内負荷、外気を取り込むことで起きる外気負荷の3種類である。

なお、このページは詳細記事にあたり、ここでは「室内負荷」と「外気負荷」について記載している。熱負荷計算書の全体像については別記事にまとめている。

参考記事

室内負荷

室内負荷とは、「室内」で発生する熱負荷の総称で、熱負荷計算書で計算される室内負荷は以下の3項目である。

  • 照明負荷   (電球などによる発熱負荷)
  • 人体負荷   (人による発熱負荷)
  • その他の負荷 (その他の装置などによる発熱負荷)

照明負荷

照明負荷は、照明器具の個数と消費電力により求められる。
照明負荷[W]=照明個数×照明器具の消費電力[W/個]

※不明の場合は以下の表より、単位面積当たりの照明器具の消費電力より求める。
照明負荷[W]=室面積[m2]×照明器具の消費電力[W/m2] より求める。

各室の設計照度と単位面積当たりの照明器具の消費電力[W/m2]

設計照度[lx] 室の例 LED照明 蛍光灯
下面開放形 ルーバー有 下面開放形 ルーバー有 アクリルカバー有
750 事務室、上級室、設計室、製図室 10 11 16 18 25
500 電子計算機室、会議室、講堂、厨房、監視室、制御室 7 8 11 12 17
300 受付、食堂 4 5 7 7 10
200 電気室、機械室、書庫、湯沸室、便所、洗面所、更衣室 3 3 5 5 7
150 階段室 2 3 4 4 5
100 玄関ホール、廊下、倉庫 2 2 3 3 4
75 車庫 1 2 2 2 3

建築設備設計基準平成30年度版

人体負荷

人体負荷は以下の式より求められる。
人体負荷(顕熱)[W]=人数×1人当たりの顕熱量[W/人]
人体負荷(潜熱)[W]=人数×1人当たりの潜熱量[W/人]

※人数は以下の表より、室面積[m2]×人口密度[人/m2]

室内の人員密度及び人体の発熱量

室名 人員密度 室内温度が28℃の場合 室内温度が26℃の場合
顕熱SH[W/人] 潜熱LH[W/人] 顕熱SH[W/人] 潜熱LH[W/人]
事務室 0.1~0.2(0.15) 55 66 69 53
会議室 0.3~0.6(0.5) 55 62 67 49
講堂 0.3~1.0(0.7) 51 47 64 34
食堂 0.5~1.0(0.8) 65 81 79 67

建築設備設計基準平成30年度版

その他の負荷

照明や人体の他の熱を発生する機器の熱負荷をその他の負荷として計上する。具体的にはコンセント負荷、OA機器の負荷、制御盤や熱源機器による負荷等をいう。

コンセント負荷

コンセント負荷は以下の式より求められる。
コンセント負荷[W]=室面積[m2]×消費電力[W/m2]×負荷率(≒0.6)

消費電力は一般事務室で10~15[W/m2]、OAフロア事務室は15~30[W/m2]程度になる。

OA機器の負荷

OA機器の負荷は、各機器の発熱負荷を合計することで計上する。
台数×発生熱量[W/台]

制御盤や熱源機器による負荷等は大きな熱負荷になるため、どんな装置が室内に配置され、どの程度の熱負荷になるかは必ず機器ごとに確認する必要がある。各機器の熱負荷がわからない場合は以下の表を参考に求める。

OA機器の負荷

機器・器具名 発生熱量[W/台]
ワープロ 100
パソコン・オフコン端末 200
CAD端末 500~800
電子黒板・ファクシミリ 100
パソコン用プリンタ 50
パソコン用カラープリンタ 300
端末用ライブプリンタ 500
ミニコン・オフコンセンター装置 1000以上
複写機 300程度

空気調和衛生工学便覧第14版

外気負荷

外気負荷とは、室内と温度差のある「外気」を導入することで発生する熱負荷の総称で、熱負荷計算書で計算される外気負荷は以下の1項目である。

  • すき間風負荷

外気負荷の計算

すき間から風が入ってくる場合のほか、換気のために換気扇などにより機械的に外気(室内と異なる温湿度条件の空気)を導入する場合は、以下の式により外気負荷を求める。

全熱負荷[W]=0.33×外気量[m3/h]×内外比エンタルピー差[kJ/kg(DA)]
顕熱負荷[W]=0.33×外気量[m3/h]×内外温度差[℃]
潜熱負荷[W]=833×外気量[m3/h]×内外絶対湿度差[kg/kg(DA)]

※0.33と833の換算については以下を参照する。

参考記事
補足
 

外気負荷の算定値は、外気の導入方法(換気方法)によって異なる。

空調機で処理された外気負荷

室内に設置する空調機の負荷を計算する際に、外気が別の空調機(外調機など)で設計温湿度に処理されて導入される場合は、外気負荷は0になる。
(ただし、隣室等からのすき間風がある場合は外気負荷が別に発生してしまうため、室内が正圧である場合に限る。)

全熱交換器で処理された外気負荷

室内に設置する空調機の負荷を計算する際に、外気が全熱交換器により熱交換されている場合は、外気負荷は実際の導入外気量に交換効率をかけたものになる。

全熱負荷[W]=0.33×外気量[m3/h]×内外比エンタルピー差[kJ/kg(DA)]×(1-全熱交換効率)
顕熱負荷[W]=0.33×外気量[m3/h]×内外温度差[℃]×(1-顕熱交換効率)
潜熱負荷[W]=833×外気量[m3/h]×内外絶対湿度差[kg/kg(DA)]×(1-潜熱交換効率)

※実際のメーカーカタログでは、全熱交換効率と顕熱交換効率のみが記載されている場合が多いので潜熱負荷は、全熱負荷-顕熱負荷から求めることになる。

すき間風の風量

すき間風は天井や壁のすき間などのあらゆる場所から室内に漏れ入ってくるものであるが、茶本では外気に隣接する開閉する扉(ドア)がある場合と、外気に隣接する窓のサッシからすき間風が入る場合についてはすき間風負荷を検討している。

参考書籍

外気に隣接する開閉する扉(ドア)がある場合のすき間風の風量

外気に隣接する開閉する扉(ドア)がある場合のすき間風の風量は、以下の式から求める。
すき間風の風量[m3/h]=室容積[m3]×換気回数

なお、換気回数は
入口が風上側の場合は、夏期2回、冬期3〜4回。
それ以外の場合は、夏期1回、冬期1〜2回 とする。

外気に隣接する窓(のサッシの隙間)から入るすきま間風の風量

外気に隣接する窓(のサッシの隙間)から入るすきま間風の風量は、以下の式から求める。
すき間風の風量[m3/h]=窓面積[m2]×すき間風の風量[m3/m2・h]

すき間風の風量は、設計風速と以下の表より求める。
設計風速は気象データによるか、冷房時6m/sと暖房時8m/sとする。

窓面積1m2に対するアルミサッシの隙間風量[m3/(m2・h)]

窓種別 気密度 風速[m/s]
2 4 6 8 10
引違い A 0.07 0.16 0.25 0.35 0.46
B 1.42 2 2.4 2.7 3
C 5.1 7 8.4 9.6 10.5
片引き A 0.021 0.039 0.059 0.077
B 0.057 0.11 0.16 0.21 0.26
C 0.078 0.18 0.28 0.4 0.52
内倒し A 0.07 0.094 0.112 0.13 0.14
B 0.14 0.23 0.3 0.4 0.52
C 0.068 0.19 0.34 0.52 0.72
すべり出し A 0.03 0.04 0.049 0.056 0.062
B 0.05 0.14 0.27 0.42 0.6
C 0.23 0.56 0.93 1.3 1.7
回転窓 A 0.012 0.031 0.058 0.09 0.12
B 0.054 0.16 0.27 0.4 0.56
C 0.22 0.5 0.81 1.01 1.05
引違い二重サッシ A 0.044 0.11 0.18 0.27 0.36
B 0.95 1.75 2.5 3.2 3.9
C 1.6 3.3 5.1 7.1 9
住宅用 引違い A 1.1 2.3 3.4 4.7 5.9
B 2.8 6.4 10.5 14.5 19
C 5 10.5 16 22 27
BL型、防音 A 0.06 0.11 0.15 0.2 0.24
B 0.13 0.28 0.48 0.66 0.86
C 1.1 2.3 3.4 4.7 5.9

備考(1) 気密性の度合いは次の通り。A:良好、B:中程度、C:不良
備考(2) 風圧は、風速2、4、6、8、10[m/s]に対し、それぞれ、1.8、7.2、16.2、28.8、45.0[Pa]

空気調和ハンドブック 改訂5版