湿り空気線図より空気の状態点や混合点を求める

湿り空気線図とは、湿り空気(水蒸気を含んだ空気)の状態値を表した線図で、空気の状態値(乾球温度、湿球温度、相対湿度、絶対湿度、比エンタルピ、比容積)のうち2つがわかれば、空気の状態値を湿り空気線図から読み取ることができる。

空気線図は大気圧(101.325[kPa])での空気の状態値を図に示したものであるので、標高が高い場所など大気圧から大きく異なる空気では使用できない。
湿り空気線図は湿り空気の状態値算出の近似式を用いて線図にしている。よって計算式により状態値を求めることも出来るが、空気の状態変化を伴う場合は状態値を可視化するために湿り空気線図を使用することが多い。

湿り空気線図に状態点をプロットすることで、
空気の状態値が変化するのに必要な熱負荷や、混合された空気の状態点を読み取ることができる。

通常使われている空気線図はNC線図で乾球温度範囲が-10℃~50℃のもの。
温度範囲が低ければLC線図、高ければHC線図があるが今回は設備手帳にあるNC線図を使い説明している。

湿り空気線図(NC線図)

湿り空気線図の用語等

乾球温度[℃]DB

普通の温度(気温)のこと。DBは、dry bulb の略。
湿球温度と区別する意味でこのように呼ぶ。

湿球温度[℃]WB

乾湿計の湿球温度計が表示する温度のこと。WBは、wet bulb の略。
温度計感部を湿らせた布で包み、風が当たることで布の水分が蒸発し周囲から熱を奪う(気化熱)ことにより
湿球温度計には乾球温度-気化熱の温度が表示される。これと乾湿計用湿度表から相対湿度を求めることができる。

飽和水蒸気圧[kPa]

飽和水蒸気量の時の水蒸気の圧力のこと。
飽和水蒸気とは、現在の空気温度にできる最大の水蒸気含有量のこと。
これ以上水蒸気が増えると水蒸気は水(霧)となって目に見えるようになる。

相対湿度[%]RH

空気中の水蒸気含有量と、現在の空気温度にできる最大の水蒸気含有量(飽和水蒸気量)との比を百分率で表したもの。
相対湿度[%] = (空気中の水蒸気含有量/飽和水蒸気量)×100
RHは、relative humidity の略。

絶対湿度[kg/kg(DA)]AH

乾燥空気(DryAir)の単位質量[kg(DA)]当たりの水蒸気量[kg]のことをいう。
AHは、absolute humidity の略。

比エンタルピ[kJ/kg(DA)]

乾燥空気(DryAir)の単位質量[kg(DA)]当たりのエンタルピー(空気の持つエネルギー)[kJ]のことをいう。

比容積[m3/kg]

乾燥空気(DryAir)の単位質量[kg(DA)]当たりの湿り空気の大きさ[m3]のことをいう。
比容積は密度[kg/m3]の逆数。

露点温度[℃]

不飽和状態の湿り空気の温度を下げると最大の水蒸気含有量が下がる。現在の空気から温度のみを下げていって飽和状態(相対湿度100%)になる点を露点温度という。

湿り空気線図より空気の状態値を求める

湿り空気線図に状態点をプロットすることで、空気の状態値を読み取ることができる。例題を利用して説明する。

以下では、乾球温度をDB[℃]、湿球温度をWB[℃]、相対湿度をRH[%]、絶対湿度をx[kg/kg(DA)]、比エンタルピーをh[kJ/kg(DA)]、比容積をv[m3/kg]と表記した。

例題
 
問題

顕熱温度28℃、相対湿度45%の時の空気の状態点を湿り空気線図より求める。

解答

湿り空気線図に状態点をプロットすると以下のようになる。

状態値の湿り空気線図

よって湿り空気の状態値は、DB=28.0[℃]、WB=19.5[℃]、RH=45[%]、x=0.0106[kg/kg(DA)]、h=55.3[kJ/kg(DA)]、v=0.868[m3/kg]となる。

なお、絶対湿度0.0106kg/kgのとき、飽和水蒸気圧は1.71kPaなので
露点温度は15℃、水蒸気分圧1.71kPaになる。

なお、乾球温度28℃なので、飽和水蒸気圧は3.79kPaになる。

補足

計算により状態点を求める場合、以下の式を参照。

飽和水蒸気圧ET[hPa]はテテンの近似式より温度Tから求められる。
ET=6.1078×107.5T/(T+237.3)

飽和水蒸気量aT[g/m3]は水蒸気を理想気体とみなすと、ボイルシャルルの定理(PV=nRT)より変形し、飽和水蒸気圧ET[hPa]と温度Tから求められる。
aT=(217×ET)/(T+273.15)

相対湿度RH[%]は飽和水蒸気圧ET[hPa]と水蒸気分圧EP[hPa]から求められる。
RH=(EP/ET)×100

絶対湿度x[kg/kg(DA)]は飽和水蒸気量aT[g/m3]と相対湿度RH[%]から近似式で求められる。
x=0.62198×EP/(大気圧1013.25-EP)

乾球温度T[℃]と湿球温度TW[℃]の関係はスプルングの式より
湿球温度での飽和水蒸気圧ETW[hPa]と水蒸気分圧EP[hPa]として
EP=ETW-0.000662×(大気圧1013.25)×(T-TW)
(湿球が氷結していない時の乾湿計定数0.000662[K-1])

露点温度Td[℃]は
Td=240.7263/(7.591386/log10(EP/6.116441)-1)

比エンタルピh[kJ/kg(DA)]は
h=T×(1.01+0.00189×混合比)+2.5×混合比
※混合比[g/kg]=621.9907×aT/(大気圧1013.25-ET)

湿り空気線図より混合空気の状態点を求める

外気と還気を混合し空調機に導入する際など混合空気がある場合、混合比率から混合空気の状態点を読み取ることができる。例題を利用して説明する。

※空気は温度により体積が変化し、各温度ごとの空気量の比率では正確な混合空気状態点は求められないが、一般の空気状態では温度による体積変化はわずかであるため簡易的に混合比率から求めることが多い。

例題
 
問題

空気A(28℃、45%)1500m3と空気B(32℃、60%)500m3の混合空気の状態点を求める。

解答

湿り空気線図に状態点をプロットすると以下のようになる。

空気Aの状態値は、DB=28.0[℃]、WB=19.5[℃]、RH=45[%]、x=0.0106[kg/kg(DA)]、h=55.3[kJ/kg(DA)]、v=0.868[m3/kg]である。
空気Bの状態値は、DB=32.0[℃]、WB=25.6[℃]、RH=60[%]、x=0.0180[kg/kg(DA)]、h=78.4[kJ/kg(DA)]、v=0.889[m3/kg]である。

混合比A:B=1500:500=3:1から、湿り空気線図より混合空気の状態値は、
DB=29.0[℃]、WB=21.1[℃]、RH=49.6[%]、x=0.0125[kg/kg(DA)]、h=61.0[kJ/kg(DA)]、v=0.873[m3/kg]である。

混合空気の湿り空気線図

なお、乾球温度と絶対湿度と比エンタルピーと比容積は、混合比率に比例するため以下のように求められる。
DB=(空気AのDB×空気Aの比率+空気BのDB×空気Bの比率)/(比率の合計)=(28×3+32×1)/(3+1)=29[℃]
x=(空気Aのx ×空気Aの比率+空気Bのx ×空気Bの比率)/(比率の合計)=(0.0106×3+0.0180×1)/(3+1)≒0.0125[kg/kg(DA)]
h=(空気Aのh ×空気Aの比率+空気Bのh ×空気Bの比率)/(比率の合計)=(55.3×3+78.4×1)/(3+1)≒61.0[kJ/kg(DA)]
v=(空気Aのv ×空気Aの比率+空気Bのv ×空気Bの比率)/(比率の合計)=(0.868×3+0.889×1)/(3+1)≒0.873[m3/kg]