ダクトの材質や板厚、接続方法などの仕様について

ダクトには様々な種類や形状があり、それらから最適なダクト仕様を決定することが重要になる。
具体的には、ダクトの材質や板厚、接続の方法やガスケット種類や金具寸法の他、吊間隔や振れ止め間隔、吊鋼材の寸法、補強方法を決定する。
項目ごとに以下に記載した。

ダクトの材質

ダクト材は使用箇所や用途、価格や施工性などを考慮し決定する。
以下に表でまとめた。

材質 商品名称 材料 使用用途 特徴 備考
亜鉛鉄板   鋼板に亜鉛をメッキ(溶融亜鉛メッキ) 屋内ダクト(酸に弱いため外部には不向き) 耐食性(錆びにくさ)が高いため、ダクト材として最も一般的に使用される。安価で加工性も高い アルカリに強い、防錆塗装して屋外に利用することもある
ガルバリウム鋼板   鋼板に亜鉛とアルミとケイ素をメッキ 屋外ダクトや厨房ダクトや排煙ダクト 耐食性が亜鉛鉄板より高い、耐候性に優れるため屋外ダクトに向いている、アルミ含有でアルカリに弱い 酸に強い
高耐食性鋼板 ZAMスーパーダイマ 鋼板に亜鉛とアルミとマグネシウムとシリコンを被膜 塩害・重塩害仕様 耐食性がガルバリウム鋼板より高い、耐塩素・耐アルカリ性が高いので重塩害仕様や耐薬品も可能 基本的にはガルバリウムの上位互換、黒く変色するので美観はガルバリウムに劣る
ステンレス鋼板   SUS304 蒸気排気ダクト、有機溶剤発生場(塩ビだと溶ける) 耐食性がガルバリウム鋼板より高い、耐候性に優れるため屋外ダクトに向いている、耐熱性が高いため排熱ダクトに向いている、高価で加工性は悪い、気密性や水密性に優れる 錆びにくいが海水に浸るなど接触により腐食する、塩ビと比較すると水密性が劣る
塩ビライニング   鋼板に塩ビを内外面ライニング 腐食性のガス発生場、浴室・地下等多湿箇所など 錆びにくい、耐薬品性や耐水性から薬剤に強い、高温(40度超)不可より溶接不可、納期がかかる プラズマ切断機が使用できない(片面ライニングであれば可能)
硬質ポリ塩化ビニル ダクトE管 PVC、塩ビ 腐食性のガス発生場、浴室・地下等多湿箇所など 錆びない、耐薬品性や耐水性から薬剤に強い、高温(40度超)不可より溶接不可、鋼板製より耐圧が劣る、軽量で作業性が良い 丸ダクトなら配管工にも施工できる
グラスウール   グラスウール 大規模空調用ダクト、低圧の制気口ボックスまでの接続 断熱性が高く吸音性に優れる(保温の施工が不要)、とても軽いので落下の危険が少ない、高温(70度超)不可、高圧には耐えられない  

※排煙ダクトは火災時に十分に耐えるものであれば良いため、亜鉛鉄板ダクトは250℃でメッキが剥離してしまうが良く利用される。
※亜鉛鉄板系(亜鉛鉄板、ガルバリウム鋼板、高耐食性鋼板)の切断面や溶接面などは鋼板が剥き出しになるため耐食性がかなり落ちる。(錆止めのためローバルを塗ることが多いが、塗ったとしても通常よりは耐食性はかなり落ちる。)

ダクトに水や油など空気以外も通る場合

厨房排気などで湿気や油のようなダクトに好ましくないものが付着するような場合、湿気溜まりによる腐食や油溜まりによる火災リスクの増加などを防ぐための措置が必要になる。
水や油が溜まらないように、ダクト内部に勾配を与えて下部で水抜きできるようにしたり(スパイラルダクトのビス止めから漏水しないよう注意)、水や油が溜まるような凹凸を作らないようにボタンパンチや補強リブを使用を避けるなど対策が必要。

ダクトの板厚

ダクトに掛かる圧力が大きいほど、丈夫なダクトを選定することが求められる。
よって低圧のダクトと高圧のダクトでは求められる板厚が異なる

圧力とダクト材質により区分されるので以下に表にまとめた。

ダクト圧力区分表

  常用圧力 制御圧力
低圧ダクト +500以下 -500以内 +1000 -750
高圧1ダクト +500超+1000以下 -500超-1000以内 +1500 -1500
高圧2ダクト +1000超+2500以下 -1000超-2000以内 +3000 -2500


材質:亜鉛鉄板製ダクト(亜鉛鉄板、ガルバリウム鋼板、高耐食性鋼板、塩ビライニング)

  低圧 高圧1、2
板厚 矩形長辺mm スパイラルφ 矩形長辺mm スパイラルφ
0.5 ~450 ~450 ~200
0.6 ~750 ~710 ~560
0.8 ~1500 ~1000 ~450 ~800
1.0 ~2200 上記を超える ~1200 ~1000
1.2 上記を超える 上記を超える 上記を超える


材質:ステンレス鋼板

  低圧 高圧1、2
板厚 矩形長辺mm スパイラルφ 矩形長辺mm スパイラルφ
0.5 ~750 ~560 ~250
0.6 ~1500 ~800 ~560
0.8 ~2200 ~1000 ~450 ~800
1.0 上記を超える 上記を超える ~1200 ~1000
1.2 上記を超える 上記を超える


材質:硬質ポリ塩化ビニル

板厚 矩形長辺mm 圧力
3.0 ~500 ~1500
4.0 ~500 ~2000
4.0 ~1000 ~1000
5.0 ~1000 ~2000
5.0 ~2000 ~2000
6.0 ~3000 ~2000

SHASE-S010-13

※硬質ポリ塩化ビニルの円形ダクトには板厚の規定が無いため、板厚は硬質ポリ塩化ビニル配管(薄肉管VU)の規定に準ずることもある。

補足
 

「防火区画を貫通する風道に防火設備を設ける方法を定める件(平成12年)」より当該防火設備と当該防火区画との間の風道は、厚さ1.5 mm以上の鉄板、又は鉄鋼モルタル塗りその他の不燃材料で被覆するとある。つまりFDと防火区画の間は、圧力により決まる板厚に関わらずテンロクダクト(板厚1.6mmのダクトのこと。鉄板の規格に1.5mmはない。)とする。
排煙ダクトは圧力にかかわらず高圧ダクトの板厚とする。
・グラスウール製ダクトの板厚は25mm。使用可能な常用圧力は+500以下-500以内であり、高圧ダクトには使用できない。
・連絡ケーシング(現場組立空気調和機の各機器を連結する鉄板製の外箱)の板厚は、長辺2000mm以下は板厚1.0mm、2000mm超えは板厚1.2mm。

例題
 
問題

送風機(ファン)の風量が10000m3/hで静圧が800Paの系統の亜鉛鉄板ダクト寸法700×550の板厚を求める。

解答

ダクト圧力区分表より送風機静圧が800Paなので高圧1ダクトとなり、亜鉛鉄板ダクトの板厚表より矩形長辺が700なので~1200の範囲で板厚は1.0tとなる。

その他仕様

ダクトの寸法によって異なる、吊間隔振れ止め間隔吊鋼材(平鋼棒鋼)の寸法補強方法
アングルフランジの鋼材寸法共板フランジの抑え金具の間隔スパイラルダクトのビス止め本数などが
国土交通省官庁営繕「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」に規定されているが、ここでは省略する。

ダクトの圧力による区分によって異なる、ダクトのシール方法
国土交通省官庁営繕 「公共建築設備工事標準図(機械設備工事編)」に規定されているが、ここでは省略する。

ダクトの工法

ダクトの接続方法は、アングルフランジ工法スライドオンフランジ工法共板工法の大きく3つ種類がある。

工法名 フランジの製作 フランジ同士の接続 備考
アングルフランジ工法(在来工法) 鋼材を溶接して作ったフランジをリベットまたはスポット溶接でダクトにつける 全方面のフランジをボルトナットで止める(ボルト間隔100mmより寸法目視できる) 高価。製作は手間がかかり、施工にも手間がかかる。強度、耐久性、気密性などは他工法より高く高圧ダクトなどに使われる
スライドオンフランジ工法(TDC2、メイト、メッツ) 鋼材にコーナー金具をかしめて作ったフランジをスポット溶接でダクトにつける 四隅金具と抑え金具(クリップ)で止める 製作は効率的かつ軽量、共板工法よりも強度がある
共板工法(TDC、TFD、コーナーボルト) ダクトを形成する鉄板の一部を折り曲げてフランジにしている 四隅金具と抑え金具(クリップ)で止める 現在最も主流な工法。安価で製作は効率的かつ軽量

ダクトの接続用ガスケット

ダクトはフランジ接続の場合が多く、フランジ接続の場合は接続箇所に空気の漏れ防止のためにガスケットを挟み込む必要がある。(丸ダクトはフランジ接続ではなく差し込み接続による方法も多い)
ガスケットはダクトの使用用途や使用環境を考慮し、適切なものを選択する必要がある。

材料名 使用用途 使用温度 特徴
ネオブレン(クロロプレン)スポンジ 一般空調 100℃以下 自己消火性・耐熱・耐候性に優れる。耐薬品性(酸、アルカリ、油などに強い)に優れる、経年劣化等により粉末化がおきる
ニトリルスポンジ+PVC 一般空調 100℃以下 自己消火性・耐熱・耐候性に優れる
ニトリルスポンジ 一般空調 100℃以下 不燃材認定品。ブルーフォームより安価で耐熱性がある。発泡性有機化学物質の含有もなくシックハウス対策に優れる
オレフィン(EVA) 一般空調 80℃以下 不燃材認定品。ブルーフォーム、作業性が良い。発泡性有機化学物質の含有もなくシックハウス対策に優れ、防塵効果もありクリーンルーム等にも適す
ポリ塩化ビニル(PVC) 一般空調 100℃以下 難燃性で耐薬品性(酸、アルカリ、油などに強い)に優れる。プール換気用にも適す
ニトリルゴム 多湿箇所、屋外、厨房 100℃以下 不燃材認定品。防水性、耐水性に優れる。耐油性が高い
ブチルゴム 多湿箇所、屋外 80℃以下 防水性、耐水性に優れる。防塵効果もありクリーンルーム等にも適す。厨房用や排煙用に耐熱性、耐油性を持った製品も開発されている
フッ素樹脂(PTFE) 病院やクリーンルーム -100~260℃ 耐薬品性(酸、アルカリ、油などに強い)に優れる。有機溶剤、有機・無機ガスに強い。高価。弾力性がなく、密閉性や締め付け効果が得にくい
シリコンスポンジ 高温厨房 -60~200℃ 難燃性でかつ耐熱性・耐寒性に優れる、耐摩耗性は低い
ロックウール 排煙 150℃以下 不燃材認定品。軽量で扱いやすい。繊維飛散があるので注意
ガラスクロス 排煙 150℃以下 不燃性でかつ耐熱性・断熱性に優れる

ダクトのハゼ(ダクトの組み立て)

ダクトの組み立てにハゼが利用される、以下の表にまとめた様な使い分けになる為、共板工法ならボタンパンチハゼアングルフランジ工法ならピッツバーグハゼとすることが多い。

種類 特徴 形状
角ハゼ ボタンパンチハゼ、ダクトハゼ 一般ダクトに多く利用されている、外にボタンのような凹凸ができる 外側から内側にU字に折り込まれて、先の部分がスナップで引っかかりボタンをつけたような見た目になる
(板を直角につなぐ) ピッツバーグハゼ、三井ハゼ 手間がかかる、漏気量少なく強度も高い、排煙ダクトに用いられることが多い 外側から内側に入りヘアピンカーブのように折り曲げ、そのまま外側に回り込むように出ていく形状
平ハゼ 甲ハゼ スパイラルダクトにも用いられている、外れにくい 両方のダクトをUの字状にかまし、寝かせたような形状
(板を平面でつなぐ) 立てハゼ 内部に立てるので、抵抗にならないよう気流方向に使用する。補強にもなる 一方のダクトをUの字状にした中にもう一方のダクトをかませたような形状

 

補強

振動音防止や強度強化のため、ダクトに補強を入れることがある。ダクトの仕様や補強目的に合わせて補強方法を決定する。

リブ補強

ダクトの板自体に加工を施す補強方法。スパイラルダクトはリブが入っている。
補強リブ長辺が450mmを超える断熱を施さないダクトはリブで補強する。リブ補強は強度の強化が目的ではなく、断熱を施してあれば振動音は防止されるのでリブ補強は不要となる。
長辺が小さくても、アスペクト比が高く偏流が起きて騒音が大きくなる場合はリブ補強する場合がある。

鋼材補強(アングル補強)

ダクトの横方向と縦方向に鋼材を接着し補強する。接着方法はリベット接合(かしめ)や溶接接合が用いられる。
フランジ形状のアングル鋼を取りつける中間補強もある。鋼材補強はダクトの強度を上げる。

タイロッド補強

ダクトの内寸を保持するように突っ張り棒を取り付け、ダクトの変形を防ぐ補強。タイロッド補強は振動音防止効果はない。
共板ダクトはアングルフランジダクトに比べ強度が低く、突っ張り棒に負けてしまうのでタイロッド補強は用いない。

便利なダクト類

標準的なダクトの他に様々な便利ダクトがある。それらの便利ダクトはダクトの納まりを良くしたり、施工手間や搬入手間を省いたり、工費を抑えたりと様々な効果をもたらしてくれる。

フレキシブルダクト(ニューホープ)

スパイラルダクトの代わりに用いる。
軽量で自在に動かせるので他の配管類の間を縫って施工できるため、スパイラルダクトでは施工困難な場所でも無理なく施工できる。
材質は通常のダクト同様に、鉄(亜鉛鉄板)やステンレス、塩ビ製やグラスウール製など様々あるので使用用途、圧力や温度を考慮し選択する。
スパイラルダクトに比べて圧力損失が高くなるので注意する。

植毛付ダクト(ファイバーコート)

ダクト表面の結露を植毛で吸収することで防止するダクト。
植毛付ダクトは保温を巻くより厚みが薄く、軽量化と材料の省資源化につながる。主に空調用に用いられる。

Zリブ工法ダクト

平滑な面に波の形状をつけるリブ加工をすることにより、ワンランク薄い板厚で同じ強度性能を持つダクトが製作ができる工法。
設計図からの変更のVE案などで提案することが多い。

コンパクトダクト(風船ダクト)

折りたたんで搬入することができる共板工法のダクト。
ダクトの搬入容積が通常のダクトの1/3程度となるので、搬入費用の削減につながる。