ダクトの支持や固定について
ダクトも配管と同様に、建築構造体などの剛体から固定または支持をとる必要がある。ダクトは材質や工法基本的な内容は配管支持に記載している内容と重複するので、ここではダクトの支持方法と吊ピッチ(支持間隔)に絞って記載する。
ダクト支持の方法
横走りダクトの支持
ダクトの自重を支えるため、横走りダクトの自重支持として吊支持がとられている。 さらに配管支持と同様、ダクトに外力がかかりダクトが振れるのを防止するため、吊支持の何本かに1回は、吊棒に斜材を加えたり、吊棒を鋼材に変えるなど横走りダクトにも振止支持を施す必要がある。
矩形ダクトの自重支持
矩形ダクトの場合は、ダクト底に鋼材を流して2本以上の吊棒で吊る方法が一般的な支持の取り方になる。
矩形ダクト吊り金物表
ダクトの長辺 | 山形鋼寸法 | 吊り用ボルト |
---|---|---|
750以下 | 25×25×3 | M10又は呼び径9 |
750を超え、1,500以下 | 30×30×3 | M10又は呼び径9 |
1,500を超え、2,200以下 | 40×40×3 | M10又は呼び径9 |
2,200を超えるもの | 40×40×5 | M10又は呼び径9 |
注:ダクトの周長が3,000mmを超える場合の吊り用ボルトの径は、強度を確認の上、選定する。
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)平成31年版
丸形ダクトの自重支持
スパイラルダクトなどの丸形ダクト場合は、基本的には矩形ダクトと同様の支持方法になるが、実際は小口径で用いられる事が多いため以下のように配管と同じように支持を取ることが多い。
公共建築工事標準仕様書に「呼称寸法750以下の横走りダクトの吊り金物は、厚さ0.8mm以上の亜鉛めっきを施した鋼板を円形に加工した吊りバンドと吊り用ボルトとの組合せによるものとしてもよい。なお、小口径(呼称寸法 300 以下)のものにあっては、吊り金物に代えて、厚さ0.6mmの亜鉛鉄板を帯状に加工したものを使用してもよい。ただし、これによる場合は、要所に振れ止め支持を行う。」
との記載があり、簡単に言うと寸法の小さい丸ダクトは配管の吊支持のように吊バンドを使用してよく、さらに小さい丸ダクトは帯状の亜鉛鉄板のみで支持してよいということになる。
また、通常は上記のように吊バンドには亜鉛鉄板製のものを利用するが、ニューホープなどの保温付フレキシブルダクトは鉄板などのダクトに比べてダクト材が傷つきやすいため、フレキシブルダクト用の樹脂製吊りバンドを利用する。
丸形ダクト吊り金物表
呼称寸法 | 山形鋼寸法 | 吊り用ボルト |
---|---|---|
750以下 | 25×25×3 | M10又は呼び径9 |
750を超え、1,000以下 | 30×30×3 | M10又は呼び径9 |
1,000を超え、1,250以下 | 40×40×3 | M10又は呼び径9 |
注:呼称寸法1,000を超える場合の吊り用ボルトの径は、強度を確認の上、選定する。
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)平成31年版
SHASE基準の場合
吊り金物の鋼材寸法はSHASE基準にも記載があり、基本的には公共建築工事標準仕様書と同程度の鋼材寸法が求められているが
スパイラルダクトの場合は、呼称寸法1,250以下はすべて25×25×3
硬質ポリ塩化ビニル製ダクト(矩形)でダクトの長辺が、500以下は30×30×3、500を超え1,500以下は40×40×3、1,500を超え3,000以下は40×40×5
硬質ポリ塩化ビニル製ダクト(円形)で呼称寸法が、300φ以下は30×30×3、500φ以下は40×40×3となり、 公共建築工事標準仕様書と異なっている。
立てダクトの支持
立てダクトの支持は、吊棒を用いないため鋼材を流して支持を取ることになる。鋼材をダクトに固定するためにダクトにボルトを直打ちすることになるが、硬質塩ビダクトなどボルトによる直打ちが適さない場合は鋼材をダクトに溶接するなどして接着する必要がある。
公共建築設備工事標準図(機械設備工事編)平成31年版
ダクトの支持間隔の規定
ダクトの支持間隔(吊ピッチ)は、公共建築工事標準仕様書、SHASE基準、その他各種協会の規格に記載がある。ここでは公共建築工事標準仕様書を元に支持間隔を記載している。なお、設備手帳にはSHASE基準が記載されており、ダクト工法のほかに材質ごとにも支持間隔が定められている。
工法ごとの支持間隔
ダクト工法種類 | 横走りダクト | 立てダクト支持 | |
---|---|---|---|
吊支持[mm] | 振止支持 | ||
アングル工法 | 3,640 | 12m (末端も振止) |
各階1箇所 |
スライドオンフランジ工法 | 3,000 | ||
共板工法 | 2,000 | ||
スパイラルダクト工法 | 4,000 |
※機械室内は、長辺が450mm以下の横走りダクトの吊り間隔は2,000mm以下とする。
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)平成31年版
グラスウール製ダクトの支持間隔
ダクト形状 | 横走りダクト | 立てダクト支持 | ||
---|---|---|---|---|
吊支持[mm] | 振止支持 | |||
円形 | ダクト内径300以下 | 2,400 | – | – |
ダクト内径300を超えるもの | 2,000 | – | – | |
矩形 | 2,000 | 12m (末端も振止) |
2,000 |
※分岐ダクトの吊り及び支持は、横走り主ダクトより1,000mm以内とする。
円形ダクト:公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)平成31年版、矩形ダクト:グラスウール製ダクト標準施工要領2020年10月改定版
SHASE基準の場合
ダクトの支持間隔はSHASE基準にも記載があり、公共建築工事標準仕様書と数値が異なっている。
最大吊間隔はアングル工法とスライド工法で3,680mm、共板工法で3,000mm、スパイラルダクト工法で3,000mm以下
ステンレス鋼板ダクト(矩形)ダクトでは、長辺1,500以下で最大吊間隔2,000mm、長辺1,500を超えるもので最大吊間隔3,000mm、立てダクト支持間隔は4,000mm以下。
ステンレス鋼板ダクト(スパイラル)ダクトでは、最大吊間隔3,000mm以下。
硬質ポリ塩化ビニル製ダクト(矩形)では、 長辺1,000以下で最大吊間隔4,000mm、 長辺1,000を超えて2,000以下で最大吊間隔3,000mm、長辺2,000を超えるもので最大吊間隔2,000mm、長辺1,500以下で支持金物支持間隔4,000mm、長辺1,500を超えるもので3,000mm以下。
硬質ポリ塩化ビニル製ダクト(円形)では、 最大吊間隔4,000mm、支持金物支持間隔も4,000mm以下。