ステンレス鋼管の種類

ステンレス鋼(12%以上のクロム(Cr)を含む鉄合金)を溶解、加工、成形して配管としたものをステンレス鋼管(SUS管)という。ステンレスの表面に不働態被膜を形成することから高い耐食性(錆びにくい)を発揮することが特徴である。金属管のため、全く錆びないというわけではないが、ステン(サビ)がレス(起きない)配管として認識されている。ステンレス鋼管は配管材として様々な規格があり、使用用途や使用箇所によってステンレスの材質や肉厚、接続方法などを選択する必要がある。ステンレス鋼管は、上水を含む水配管(給水・給湯・冷温水)や蒸気などの温度変化の大きい配管まで幅広く利用できるが、主に酸性の液体などにおいては腐食が発生しやすい薬液もあるため注意が必要である。
ステンレス配管の規格は、構造用のものや熱伝達用のものなど数多く規定されているが、今回は配管規格に絞って記載する。
ステンレス鋼管以外の配管材も含む配管材料については以下の別記事を参照。

参考記事

SUS管のステンレス鋼材

ステンレス鋼は配合材料の種類や割合によってそれぞれ番号を持っておりSUS(番号)で表される。SUS材の番号は何百種類も存在しているが、配管に利用するSUS材の番号は数種類のみになるので、それについて記載する。

ステンレス鋼サニタリー管(JIS G3447)は、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316Lの4種類が規格されている。
一般配管用ステンレス鋼管(JIS G3448)は、SUS304、SUS315J1、SUS315J2、SUS316の4種類が規格されている。その中でも、水道用ステンレス鋼鋼管(JWWA G115)はSUS304とSUS316の2種類のみが規格されている。
配管用ステンレス鋼管(JIS G3459)には、31種類が規格されており、一般的に利用されるのは上記の配管種類同様オーステナイト系であるが、それ以外にもオーステナイト・フェライト系、フェライト系のステンレスも規格されているためメーカーによって対応材質が異なるので確認が必要になる。
配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管(JIS G3468)には、15種類が規格されており、配管用ステンレス鋼管同様に対応材質について確認が必要になる。

ステンレスは含有金属の種類や割合によって各番号でステンレス種類が規格されている。各番号の組織の特徴により大きく、ニッケルの含有の無い(Fe-Cr系)のマルテンサイト系、フェライト系、ニッケルの含有のある(Fe-Cr-Ni系)のオーステナイト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系がある。

SUS304、SUS316、SUS315などはオーステナイト系ステンレスで、希少元素のニッケル(Ni)を含有し最もさびにくいステンレス系である。引張強度も耐食性も高く配管材の分野では最も利用されているステンレス鋼種類になる。基本的には磁性がない(磁石に付かない)。加工硬化が大きく切削加工が難しいステンレスになる。

SUS304

SUS304は、鉄にクロム18%、ニッケルを8%添加したオーステナイト系ステンレスである。ステンレスとしては、最も一般的に利用されており、耐食性が高く、耐熱温度も600~700℃程度と高く、加工性も良い。

SUS304Lは、SUS304より炭素が少なく(LowCarbon)で耐粒界腐食性(結晶粒界に沿って進行する局部腐食)を向上させたハイグレード品になる。
SUS304Hは、SUS304より炭素が多く(HighCarbon)でより高温での使用が可能となる。

SUS316

SUS316は、鉄にクロム18%、ニッケル12%、モリブデンを2.5%添加したオーステナイト系ステンレスである。SUS304にモリブテンが添加されたことで加工性が下がり価格が上がるが、耐食性が上がる。酸化土壌に埋設する場合など高い耐食性を求める場所ではSUS304に代えて利用される。

SUS316Lは、SUS316より炭素が少なく(LowCarbon)で耐粒界腐食性(結晶粒界に沿って進行する局部腐食)を向上させたハイグレード品になる。
SUS316Hは、SUS316より炭素が多く(HighCarbon)でより高温での使用が可能となる。
SUS316Tiは、SUS316にチタンを添加し、SUS316Lより耐粒界腐食性を向上させたハイグレード品になる。

SUS315

SUS315は、オーステナイト系ステンレスである。高ケイ素で銅やモリブテンが添加されたことで熱間加工性や耐孔食性が高く、温水中での耐食性に優れるため温水機器などに使われる。

SUS315J1は、鉄にクロム18%、ニッケル9%、ケイ素1.5%、銅2%、モリブテンを1%添加している。
SUS315J2は、鉄にクロム18%、ニッケル12%、ケイ素3%、銅2%、モリブテンを1%添加している。

SUS管の種類

配管用ステンレス鋼管
配管用ステンレス鋼管

 

(参考:日鉄ステンレス鋼管株式会社)

一般配管用ステンレス鋼管
一般配管用ステンレス鋼管

 

(参考:株式会社ベンカン)

ステンレス鋼サニタリー管
ステンレス鋼サニタリー管

 

(参考:日章アステック株式会社)

配管用ステンレス鋼管

配管用ステンレス鋼管(SUS-TP管)は、JIS G3459に規格されたステンレス鋼管である。外径規格は通常の鋼管種と同じで、配管肉厚によってスケジュール番号が異なる。製造方法によって、TP以降の末尾に付くアルファベットが異なる。

呼び径 呼び径 外径 厚み
(A) (B) [mm] [mm]
呼び厚(スケジュール番号:Sch)
5S 10S 20S 40 80 120 160
6  1/8 10.5 1 1.5 1.7 2.4
8  1/4 13.8 1.2 2 2.2 3
10  3/8 17.3 1.2 2 2.3 3.2
15  1/2 21.7 1.65 2.5 2.8 3.7 4.7
20  3/4 27.2 1.65 2.1 2.5 2.9 3.9 5.5
25 1 34 1.65 2.8 3 3.4 4.5 6.4
32 1-1/4 42.7 1.65 2.8 3 3.6 4.9 6.4
40 1-1/2 48.6 1.65 2.8 3 3.7 5.1 7.1
50 2 60.5 1.65 2.8 3.5 3.9 5.5 8.7
65 2-1/2 76.3 2.1 3 3.5 5.2 7 9.5
80 3 89.1 2.1 3 4 5.5 7.6 11.1
90 3-1/2 101.6 2.1 3 4 5.7 8.1 12.7
100 4 114.3 2.1 3 4 6 8.6 11.1 13.5
125 5 139.8 2.8 3.4 5 6.6 9.5 12.7 15.9
150 6 165.2 2.8 3.4 5 7.1 11 14.3 18.2
200 8 216.3 2.8 4 6.5 8.2 12.7 18.2 23
250 10 267.4 3.4 4 6.5 9.3 15.1 21.4 28.6
300 12 318.5 4 4.5 6.5 10.3 17.4 25.4 33.3
350 14 355.6 11.1 19 27.8 35.7
400 16 406.4 12.7 21.4 30.9 40.5
450 18 457.2 14.3 23.8 34.9 45.2
500 20 508 15.1 26.2 38.1 50
550 22 558.8 15.9 28.6 41.3 54
600 24 609.6 17.5 31 46 59.5
650 26 660.4 18.9 34 49.1 64.2

スケジュール番号(sch)について

管に作用する圧力の大きさによりsch5s、sch10s、sch20s、sch40、sch80、sch120、sch160とsch(スケジュール)の大きさが上がっていく。配管用ステンレス鋼管については、スケジュール番号の後ろにsのついていない「ノルマルスケジュール系」のほか、~20まではスケジュール番号の後ろにsのついている「スインスケジュール系」が規定されている。スインスケジュールは通常のノルマルスケジュール系より薄肉な規格になる。(オーステナイト系※のステンレス鋼管は、引張強さが炭素鋼鋼管などとに比較しても非常に大きく、ノルマルスケジュール系の肉厚で製作すると不経済となるため、同一スケジュール番号でも肉厚を薄くしたスインスケジュール系が利用されている。)
スケジュール番号は、設計圧力P[MPa]/設計温度における配管の許容引張応力S[N/mm2]×1000から決められている。

設計温度における配管の許容引張応力はJIS B8265の附属書B材料の許容引張応力表にて規定されており、例えば材質SUS304TP(S)の配管用ステンレス鋼管で給水管(設計温度20℃、設計圧力1.0MPa)の場合、設計温度における配管の許容引張応力は、表より129[N/mm2]となり
スケジュール番号=設計圧力P[MPa]/設計温度における配管の許容引張応力S[N/mm2]×1000=1.0/129×1000≒7.75よりsch10sで足ることになる。

配管用ステンレス鋼管の接続には、溶接式管継手とねじ込み式管継手が主に利用されるが、溶接式管継手は一般的にはsch10s以上からのラインナップ、ねじ込み式管継手の推奨配管スケジュールはsch40以上であるため、あくまで前述の計算式は最低必要スケジュール値を求める方法であり、最低必要スケジュール値より大きいスケジュール値を選定する場合もある。

製造方法について

配管用ステンレス鋼管については、配管に製造方法によって異なる記号が記されている。
ステンレス鋼管の製造方法は、ステンレス鋼板を各管径に合わせて円形に成形し、接合部を溶接した溶接鋼管(W)と、ステンレスの丸棒を拡管し中空配管とすることで溶接部を無くした継目無鋼管(S:シームレス配管)の大きく2種類がある。
溶接管は、溶接方法により鍛接管(B)、電縫管(E)、アーク溶接管(A)があるが現在は主にアーク溶接(SUS-TPA管)が利用されている。
継目無管は、仕上方法により熱間仕上(H)と冷間仕上(C)があり、冷間仕上(SUS-TPS-C)の方が熱間仕上(SUS-TPS-H)より高価ではあるが、熱収縮の影響を受けないため管寸法の精度が高い。(溶接管も仕上方法により、電気抵抗溶接まま(G)、溶接部加工仕上(B)、冷間仕上(C)があるが配管にここまで記入されることは少ない。)

  • 継目無鋼管
    • 熱間仕上(H)継目無鋼管
    • 冷間仕上(C)継目無鋼管
  • 溶接鋼管(W)
    • 自動アーク(A)
      • 自動アーク溶接鋼管
      • 冷間仕上(C)自動アーク溶接鋼管
      • 溶接部加工仕上(B)自動アーク溶接鋼管

      レーザー(L)

      • レーザー溶接鋼管
      • 冷間仕上(C)レーザー溶接鋼管
      • 溶接部加工仕上(B)レーザー溶接鋼管

      電気抵抗(E)

      • 電気抵抗溶接まま(G)鋼管
      • 冷間仕上(C)電気抵抗溶接鋼管

配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管

配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管(TPY管)は、JIS G3468に規格されたステンレス鋼管である。基本的には配管用ステンレス鋼管(TP管)の大口径の規格であるが、製造方法が限られているため別の規格となり、製造方法は溶接管のみでシームレス管は無い。溶接種類は、自動アーク溶接鋼管(A)とレーザ溶接鋼管(L)があり、熱処理は規格要件上の義務ではないが、固溶化熱処理を行った場合は(S)を付ける。(例:TPY-SA管は、固溶化熱処理を行った自動アーク溶接鋼管)

一般配管用ステンレス鋼管

一般配管用ステンレス鋼管(TPD管)は、JIS G3448に規格されたステンレス鋼管である。ステンレス鋼の引張強度が鋼管類より非常に高く、薄肉管でも圧力管に利用することが可能である。一般配管用ステンレス鋼管は、配管用ステンレス鋼管より薄肉の配管あり、1.0MPa以下(※現在は推奨最高使用圧力は2.0MPaに向上した。)の圧力の給水・給湯管などに利用できる施工性の高い軽量な配管として開発された。

薄肉のステンレス鋼管であるので、配管の拡管加工やフレア加工が容易であり、それに対応したメカニカル継手による配管接続が主に利用されている。溶接式継手による接続は可能であるが、ねじ込み式継手には対応していない。このうち水道用に利用するステンレス鋼管は、日本水道協会で水道用ステンレス鋼鋼管(SSP管)として呼び径13~50がJWWA G115に規格されている。

呼び径 外径 厚み
(SU) [mm] [mm]
8 9.52 0.7
10 12.7 0.8
13 15.88 0.8
20 22.22 1.0
25 28.58 1.0
30 34 1.2
40 42.7 1.2
50 48.6 1.2
60 60.5 1.5
75 76.3 1.5
80 89.1 2.0
100 114.3 2.0
125 139.8 2.0
150 165.2 3.0
200 216.3 3.0
250 267.4 3.0
300 318.5 3.0

ステンレス鋼サニタリー管

ステンレス鋼サニタリー管(TBS管)は、JIS G3447に規格されたステンレス鋼管である。ステンレス鋼管を固溶化熱処理をした上、内外面ともJIS R6001による精密研磨用微粉400番研磨するなどして平滑に仕上げた配管である。衛生管理が重要な食品や薬液などの輸送配管に使用されている。

接続方法も液だまりや起きないようにフランジやねじなどの接続ではなく、専用のヘルール継手やサニタリーネジ継手による接続とする。ヘルール継手は簡単に取り外せる形状のため、取外して洗浄することも容易である。配管肉厚はやや薄くサニタリー継手の特性上、耐圧性能は高くない場合が多い。(規格による規定値はないためメーカーによる)

呼び径 外径 厚み
(S) [mm] [mm]
1 25.4 1.2
1.25 31.8 1.2
1.5 38.1 1.2
2 50.8 1.5
2.5 63.5 2
3 76.3 2
3.5 89.1 2
4 101.6 2
4.5 114.3 3
5.5 139.8 3
6.5 165.2 3

BA管などの配管規格について

ステンレス管のうちクリーンパイプとして使用される配管については、表面仕上げの方法によって配管種類が区分されている。こちらについてはステンレス配管の仕上げとして別記事にまとめる予定。