硬質ポリ塩化ビニル管の種類
硬質ポリ塩化ビニル管は配管材として様々な規格があり、使用用途や使用箇所によって硬質ポリ塩化ビニルの配合の改良品や被覆品などを選択する必要がある。それらについて記載する。硬質ポリ塩化ビニル管以外の配管材も含む配管材料については以下の別記事を参照。
硬質ポリ塩化ビニル管
硬質な塩化ビニル樹脂を溶融して作られた配管を硬質ポリ塩化ビニル管といい、樹脂系の配管では最も一般的な配管である。
硬質ポリ塩化ビニル管の鋼管などの金属管と比べたメリットは、サビが発生しないこと、軽量なこと、施工が容易なこと、摩擦抵抗が少ないこと、耐薬品性が高いことなどがある。デメリットは、有機溶剤に弱いこと、温度変化に弱く変形や割れを起こしやすいことなどがある。
ビニル管は使用用途によって管種が異なるので以下に記載する。
水道用硬質ポリ塩化ビニル管
上水道用の硬質ポリ塩化ビニル管のこと。VPW管と呼ばれ、規格は上水の硬質ポリ塩化ビニル管と同等(JIS K6742)となる。
水路用の配管であるので、基本的には継手を設けず直管に挿し口と受け口を設けている。
下水道用硬質ポリ塩化ビニル管
下水道用の硬質ポリ塩化ビニル管のこと。VU管と呼ばれ、規格は上水以外の硬質ポリ塩化ビニル管と同等(JIS K6741)となる。
水路用の配管であるので、基本的には継手を設けず直管に挿し口と受け口を設けている。
硬質ポリ塩化ビニル管
硬質ポリ塩化ビニル管は一般的な硬質ポリ塩化ビニルの配管をいい、給水、排水、通気などに利用できる。規格は上水以外の用途でJIS K6741で、上水用途でJIS K6742である。
屋内配管、屋外配管、埋設配管などに幅広く利用できる。ただし、屋外で使用する場合は変形や退色のおそれはあるので、通常の硬質ポリ塩化ビニル管より対候性を高めた屋外用の硬質ポリ塩化ビニル管も存在する。
一般的な色は灰色であるが、露出配管用にカラーバリエーションがあるカラーパイプもある。
硬質ポリ塩化ビニル管には、通常の配管厚の一般管と、その半分程度の配管厚で軽量な薄肉管がある。
硬質ポリ塩化ビニル管(一般管)
一般管はVP管、塩ビパイプなどと呼ばれる。使用圧力は、上水以外の用途の規格では1.0MPa以下、上水用途の規格では0.75MPa以下である。
硬質ポリ塩化ビニル管(薄肉管)
薄肉管はVU管、薄肉の塩ビパイプなどと呼ばれる。使用圧力は上水以外の用途の規格では0.6MPa以下で、上水には使用できない。
VP管との使い分けは使用圧力にある。例えば、衛生器具まわりの排水管は水が勢いよく流れ込むのでVP管、雨水が直接振り込まないような場所の雨水の排水管をVU管などと使い分ける。
耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管
耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管は、硬質ポリ塩化ビニル管の弱点である衝撃がかかると割れやすい性質を改良した配管である。暗い灰青色の配管でHIVP管、HIパイプなどと呼ばれる。
現在は上水用途では硬質ポリ塩化ビニル管ではなく、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管を利用するのが一般的である。
耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管
耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管は、硬質ポリ塩化ビニル管の弱点である熱に弱い性質を改良した配管である。茶色の配管でHTVP管、HTパイプなどと呼ばれる。
硬質ポリ塩化ビニル管の使用温度は60℃以下、耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管は90℃以下であるが、使用温度が上がると使用可能圧力がかなり下がるため設計時には注意が必要になる。
リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管
リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管は、硬質ポリ塩化ビニル管の中間層に発砲性を持つリサイクル材が使われた配管である。灰青色の配管でRF-VP管、リサイクルパイプなどと呼ばれる。
硬質ポリ塩化ビニル管と比べて発砲層を持つので、軽量で、熱による伸縮が少なく、結露しにくいが排水用であり圧力管には使用できない。
空調用ドレン管
空調用ドレン管は、硬質ポリ塩化ビニル管の中間層に発砲層を持つ塩化ビニルが使われた配管である。メーカー規格品であり、代表的なものに積水化学工業株式会社のACドレンパイプなどがある。
空調ドレン用の専用配管で、VP管に結露防止のための処理がセットになった配管である。
なお、ACドレンパイプは配管の外径がVP管の1サイズ上の外径になっている。
排水通気用耐火二層管
排水・通気耐火二層管は、硬質ポリ塩化ビニル管の外層に繊維混入セメントモルタルが使われた配管である。フネンパイプ、耐火二層管、FDP管などと呼ばれる。耐火性を持っているため、特段の区画貫通処理なく配管を貫通できる。
排水・通気用の配管で、VP管に結露防止と区画貫通のための処理がセットになった配管である。
メーカー規格品に、耐火性を持つ硬質ポリ塩化ビニル管がある。これらは緑色の配管で耐火パイプ、耐火VP管などと呼ばれている。耐火二層管とネーミングが似ているが、異なるものなので注意する。耐火性を持っているため、特段の区画貫通処理なく配管を貫通できる。
排水・通気用の配管で、VP管に区画貫通のための処理がセットになった配管である。代表メーカーは、積水化学工業株式会社や株式会社クボタケミックスなどがある。