合成樹脂(ポリマー)配管の種類・特徴まとめ

PVC管(硬質ポリ塩化ビニル)のほかにも、合成樹脂系の材料を利用した配管は数多くある。PVC管と同様に、金属性の配管と異なりサビが発生しない(腐食しない)こと、軽量なこと、施工が容易なこと、摩擦抵抗が少ないこと、耐薬品性(耐酸性・耐アルカリ性)が高いことなどのメリットがある。

合成樹脂配管の種類

ポリ塩化ビニル管(PVC)

ポリ塩化ビニル管(塩ビパイプ)は、合成樹脂配管で最も安価で使用頻度の高い配管種類である。管材屋だけでなくホームセンターなどでも調達しやすい。
耐熱性はやや低いため常時高温になる用途では使用しないほうが良い。
接続方法は通常は差込接続が利用される。その他、差込接合の補助や無圧力配管の接続に利用される溶接接続1、上下水道配管の場合はゴム輪接続、継手(あるいは配管加工)によりフランジ接続やネジ接続なども可能である。積水化学工業(株)や旭有機材(株)でHI-PVC系の耐溶出性を高めたクリーンパイプ※2の製品がある。
PVC配管については別記事にまとめた。

参考記事

ポリプロピレン管(PP)

ポリプロピレン管は、強度があり、耐薬品性や耐熱性が高く、耐溶出性も高い(クリーンパイプにも適している)ため、硬質ポリ塩化ビニル管の代替としてプラント関係で使用されることがある。
耐熱温度は120℃程度、耐寒性は脆化温度-20℃程度で、対候性は低い。合成樹脂配管系の中でもかなり軽量で、強度も高い。
PPは有機溶剤に溶けないので、接続方法は熱で配管を溶かして継手と溶着させる融着接続(BF・H接合)が主に利用される。その他、融着接合の補助や無圧力配管の接続に利用される溶接接続、継手(あるいは配管加工)によりフランジ接続やネジ接続、電気融着なども可能である。

ポリフッ化ビニリデン管(PVDF)

ポリフッ化ビニリデン管は、強度があり、耐薬品性や耐熱性が高く、耐溶出性も高い(クリーンパイプにも適している)ため、硬質ポリ塩化ビニル管の代替としてプラント関係で使用されることがある。
耐熱温度は150℃程度、耐寒性は脆化温度-40℃程度で、対候性も高い。価格はPP管より高価であるが、PP管でも対応不可の強酸性の薬品も対応できることが多いため、配管種としてはPP管の上位互換として利用されることが多い。(あくまで対応薬品が多い傾向というだけなので、使用薬品種類によっての確認が必要である。)
PVDFは有機溶剤に溶けないので、接続方法は熱で配管を溶かして継手と溶着させる融着接続(BF・H接合)が主に利用される。その他、融着接合の補助や無圧力配管の接続に利用される溶接接続、継手(あるいは配管加工)によりフランジ接続やネジ接続、電気融着なども可能である。

ポリエチレン管(PE)

ポリエチレン管は、強度があり、耐寒性と耐衝撃性が高いため、主に埋設配管に使用される。
PEは有機溶剤に溶けないので、接続方法は熱で配管を溶かして継手と接続する溶着接合の中でも、埋設配管として利用するため溶着のバラつきの少ない電気融着(EF接合)が主に利用される。電気融着は、継手内にあらかじめ埋め込まれた電熱線に通電し(熱を与える)、配管と継手を溶着する接続方法である。電気融着による接続には、専門の融着機が必要で、継手一か所ごとにかかる施工時間も長く、継手自体も高価であることから、埋設配管以外の用途では硬質ポリ塩化ビニルが利用されることが多い。ポリエチレン自体の対候性は高くないが、安定剤を加えることで屋外配管向けとする製品もある。
ポリエチレン自体は溶出性が低いが、電気融着継手において金属溶出が発生するためクリーン用途との相性が悪い。その他、ポリエチレン配管用メカニカル継手、溶着接合、融着接合の補助や無圧力配管の接続に利用される溶接接続、継手(あるいは配管加工)によりフランジ接続やネジ接続なども可能である。
PE配管については別記事にまとめた。

参考1:

溶接接合と溶着接合

合成樹脂系配管における溶接接合とは、配管と継手または配管と配管とを重ねた部分に同じ材質でできた溶接棒を熱で溶かして付着させ接着する接合方法になる。母材を溶かさないので金属のろう付け溶接と似ており火花の発生もない。溶接棒は、U-PVC・HI-PVC・C-PVC・PP・PVDF・PEなど種類があり、配管と継手の材質と同じものを利用する。
溶着接合とは、配管または継手の接続面を加熱し、差し込みする接合方法になる。有機溶剤に溶けないPP・PVDF・PE・PBなどで使用される接続方法になる。なお、PVCは有機溶剤で溶けるため、接着剤として有機溶剤で作られた塩ビのりにより差込接着されるので、溶着接合は利用されない。溶着接合は、バットフュージョン接合、バット溶着接合、BF接合、H接合などとも呼ばれる。継手に電熱線が入った電気溶着(EF接合、E種接合)と比較し機械による接着を行うわけではないので施工精度にバラつきが発生しやすく施工管理が難しいため、水道管路に利用する水道配水用の配管の接合には使用しない

参考2:

クリーンパイプ

クリーンパイプとは、純水配管などの不純物を嫌う流体に利用するため、不純物が付着しないようにクリーンルーム内で厳格な規定のもとに、脱脂処理(禁油処理)・洗浄処理を行い、乾燥・組立・包装された洗浄品をいう。溶出が少なく液溜まりを防止するため平滑に作られている。
一般的に合成樹脂は金属溶出が少ないので、クリーンパイプに向いた材料である可能性が高い。

合成樹脂可とう管の種類

ポリブテン管(PB)

ポリブテン管は、耐寒性・耐熱性が高く、可とう性(柔軟で曲げても割れにくい性質)を持つため、機器や器具へのつなぎ込み部分やマンションなどの集合住宅のヘッダーさや管工法※3などで利用される。色は薄黄色。対候性が低いため、屋外利用するためには対候性の高い被覆を巻く必要がある。
接続方法は、配管を差し込むだけで接続できるポリブテン用のメカニカル継手が主に利用される。その他、溶着接合、継手(あるいは配管加工)によりフランジ接続やネジ接続、電気融着(E種・EF接合)なども可能である。

水道用架橋ポリブテン管の規格はJIS K6792、一般用架橋ポリエチレン管の規格はJIS K6778である。

架橋ポリエチレン管(架橋PE、PEX)

架橋ポリエチレン管は、ポリエチレンに架橋処理を行うことで、耐熱性や耐薬品性を向上させた配管材である。耐寒性・耐熱性が高く、可とう性(柔軟で曲げても割れにくい性質)を持つ。色は白色。対候性が低いため、屋外利用するためには対候性の高い被覆を巻く必要がある。
ポリブテン管(PB)とよく似た特性をもち配管材としての大きな違いはなく、同様の使用用途で利用される。ポリブテン管より架橋ポリエチレン管が後発で、現在では架橋ポリエチレン管が主流となっている。架橋ポリエチレンはポリブテン管と比較し、高価でやや硬く扱いにくいが、耐久性や耐衝撃性が高い
接続方法は、配管を差し込むだけで接続できる架橋ポリエチレン用のメカニカル継手が主に利用される。その他、継手(あるいは配管加工)によりフランジ接続やネジ接続なども可能である。架橋ポリエチレン2層管においては電気融着(E種・EF接合)も可能である。

架橋ポリエチレン2層管とは、架橋ポリエチレン管の外装にポリエチレン管を被覆することで架橋ポリエチレン管でありながら溶着接合を可能にした配管である。

水道用架橋ポリエチレン管の規格はJIS K6787、一般用架橋ポリエチレン管の規格はJIS K6769である。JIS K6769については、さらにPN10(水温20℃における管の最高使用圧力が1.0MPa)とPN15(水温20℃における管の最高使用圧力が1.5MPa)がある。水道用PEXと共用規格の一般用PEXは、PN15規格であることが多い。

可とう管の保護

可とう管(ポリブテン管・架橋ポリエチレン管)は通常は配管が傷付かないように保護管と共に利用するため、裸管と保護管とが一体になっている商品もある。保護管は主に、保温タイプ、コルゲート管タイプ、被覆タイプの3種類がある。保護管のカラーは主に白、水色、ピンクがあり、水色は給水配管用、ピンクは給湯配管用とされている。寒冷地用に電熱線ガイド管を入れることができるヒーターガイド付き保護管もある。

保温付き可とう管

保温タイプの可とう管は、発砲材(ポリエチレンフォームやポリウレタンフォーム)の保温材に外装フィルムの付いた可とう管をいう。保温厚はメーカーによるが3mm、5mm、10mm、20mmとバリエーションがある。基本的には屋内配管用であるが、外装フィルムに対候性を持たせた屋外用もある。可とう管の傷防止・保温目的に使用するが、保温チューブの保護管自体は傷付きやすい。

コルゲート管付き可とう管

コルゲート管タイプは、低密度ポリエチレン管の保護管(波付管)を取り付けたの可とう管をいう。保護厚はエラストマーよりやや厚いが保温管より薄い。屋内配管用で、可とう管の傷防止目的のほか、保温性能を持たせたタイプもある。保温タイプに比べて保護管が傷つきにくく、施工性もよい。

エラストマー被覆可とう管

被覆タイプの可とう管は、可とう管を包むようにエラストマーを射出成形し被覆した可とう管をいう。被覆厚は10Aで1.6mm程度、20Aで3.25mm程度と非常に薄く、継手接続の際は被覆を捲って施工する。屋内配管用で、可とう管の傷防止目的に使用し、保温性能は一般に上記の2件より低い。

メーカー対応品比較

合成樹脂可とう管の各メーカー比較表をまとめた。(2025年1月現在、カタログ掲載品のみ)

チューブ名称 管種 保護管類 さや管類(PE) 継手種類※:名称 メーカー
保温巻き コルゲート付き エラストマー付き ヒーターガイド付き 一般さや管 耐侯性さや管 遮熱管
カポリパイプW・ポリブテン管 PEX・PB O:ダブルロックジョイント、〃P、〃Revos (株)オンダ製作所
PB O:プッシュマスター、S:プッシュロックⅡ、 (株)ブリヂストン
エスロペックス PEX O:エスロカチットS 積水化学工業(株)
オユポリチューブ・オユポリPB PEX・PB O:ダブルロックジョイント、M:オユポリメカ継手、H:HF継手(PB用) (株)イノアック住環境
オユポリEFチューブ 2層PEX E:EF継手、M:EFメカ継手
PEX・PB O:ハードロックS(PB用)、O:ハードロック、M:ESQ-M1(PEX用) バクマ工業(株)
2層PEX H:ESQ、M:ESQ-M
エルメックスパイプ 2層PEX E:エルメックス 三井化学(株)
キューメックスパイプ・ポリブテン管 PEX・PB O:QSジョイントクリア 前澤給装工業(株)
KCペックス、KCポリブテン管 PEX・PB ※日本継手(株)の継手を掲載 (株)クボタケミックス
XLPEパイプ、ポリブテンパイプ PEX・PB O:アレスフィット、M:AT継手 (株)タブチ
PEX O:JKロック (株)カクダイ
PEX O:ワンタッチジョイント SANEI(株)
PB O:Jワンクイック2(PEX・PB用)、E:E種継手、H:H種継手、M:M種継手 日本継手(株)
チューブ無し (PEX) O:ピカッポ 東尾メック(株)


上記のもの以外の、特殊な可とう管や複合可とう管など

メーカー 管種 チューブ名称 継手種類※:名称
(株)ブリヂストン PB プッシュマスターシリーズ(追加部材)
(株)オンダ製作所 特殊PEX 特厚カポリパイプW O:特厚カポリ専用継手
(株)オンダ製作所 特殊PEX カポリDパイプ M:カポリ2ジョイント
(株)イノアック住環境 特殊PEX(対候性UP) オユポリチューブUP O:オユポリチューブUP専用継手
特殊PEX オユペックスシリーズ
特殊PEX アイポリーHPシリーズ
特殊PEX アイポリーDXLシリーズ O:インパクトロック
特殊PEX オーツーブロック O:インパクトロック
(株)オンダ製作所 その他(フッ素樹脂・PPS) O:フッ素樹脂・PPS用ダブルロックジョイントP
(株)ブリヂストン その他(複層フッ素樹脂) エコるーぷ(周辺部材) M:エコるーぷ専用継手
(株)オンダ製作所 銅2層管 カポリエコ O:カポリエコジョイント専用継手、
(株)コベルコマテリアル銅管 銅2層管 キュプロサーモCTX O:CTX専用継手、P:CTX専用プレス継手
積水化学工業(株) アルミ3層管 スーパーエスロメタックス O:エスロンメタッチ、M:エスロンメタキュット
(株)イノアック住環境 アルミ3層管 オユポリMPチューブ O:あっとジョイント
(株)カクダイ  アルミ3層管 メタカポリ O:三層管用ワンタッチ継手
SANEI(株) アルミ3層管 アルミックスパイプ O:アルミ三層管用ワンタッチ継手
(株)タブチ アルミ3層管 ドライフレックス、ライトエアー O:ドライフィット、P:ドライタッチ、M:ライトエアー用継手
シーケー金属(株) アルミ3層管 マルチ1パイプ O:マルチ1・マルチ1クリア
(株)オンダ製作所 アルミ3層管 カポリメタル O:カポリメタルジョイント

備考
継手種類の記号について
O:ワンタッチ継手(メカニカル継手の中でもチューブを差し込むだけで施工完了するものをいう。チューブにコアスリーブ挿入が必要なものも含む。)
M:メカニカル継手(メカニカル継手の中でも、チューブ挿入後ナット部分を締め付ける必要があるものをいう。)
E:電気溶着
H:熱溶着

参考3:

ヘッダーさや管工法

ヘッダー工法とは、給水や給湯の供給側に筒状の分岐管(ヘッダー)を設けて、ヘッダーから各所衛生器具接続口に向けて可とう性を持った配管(PB管やPEX管)で接続口まで配管する工法。配管の末端以外は継手レスとすることが可能なので、継手からの水漏れの可能性が少なくなる。エルボ等の継手を利用せずに配管するためには広い曲げ半径を確保する必要がある。配管をさや管(PE管)に入れて保護するヘッダーさや管工法とすることで、中身の樹脂管のみを更新することができる。通常の配管方式(先分岐方式)と比較し、各衛生器具の水圧を一定にしやすいというメリットがある。

合成樹脂配管の種類

以下に上記の合成樹脂配管の各種の特徴を一覧にまとめた。

材料名 略称 主な特徴 耐熱性 接続方法 価格比較
ポリ塩化ビニル管 PVC 安価・一般に流通、PVC系にも種類がある 低い(60℃程度まで) 差込、フランジ、(溶接) PVC<PP<PVDF
ポリプロピレン管 PP 耐薬品性(強酸にはやや弱い)、軽量 高い(100℃前後) 熱融着、フランジ、(溶接)
ポリフッ化ビニリデン管 PVDF 耐薬品性 高い(120℃前後) 熱融着、フランジ、(溶接)
ポリエチレン管 PE 耐衝撃性・耐寒性、電気融着 低い(60℃程度まで) M種、E種(電気溶着)  
ポリブテン管 PB 可とう性有、柔軟 5~90℃ M種、E種、(熱溶着) PB<架橋PE
架橋ポリエチレン管 架橋PE、PEX 可とう性有、耐衝撃性 0~95℃ M種、E種、(熱溶着)