鋼管の種類

鋼管は配管材として様々な規格があり、使用用途や使用箇所によって塗装やめっきの有無やライニングの方法などを選択する必要がある。それらについて記載する。鋼管以外の配管材も含む配管材料については以下の別記事を参照。

参考記事

鋼管

炭素などの含まれた鉄鋼で作られた配管を鋼管といい、一般的に鋼管にはサビを防ぐための塗装(一次防せい塗装)やめっき(亜鉛めっき)がされている。
なお、サビを防ぐために塗装やめっきに代わり樹脂系の被膜層が設けられた鋼管はライニング鋼管という。

鋼管は金属管なので、サビが起きる可能性がある。よって内面に樹脂系の被膜層が設けられたライニング鋼管以外の場合は上水配管に利用できない

補足
 

ひと昔前には上水管でも鋼管が使用されていた。しかし配管内のサビの発生による問題が多数起こり、1970年頃から内面に樹脂系の被膜層が設けられたライニング鋼管による施工が主流となった。(1997年にJIS規格が改正され、上水管に鋼管が利用できなくなった。)

しかし、ライニング鋼管用の継手である管端防食継手(コア内蔵継手)が認可されたのが1993年頃であり、それまでのライニング鋼管の継手には水道用樹脂コーティング継手という樹脂を内面に塗布した管端の鋼管ねじ部分が露出した継手が利用されていた。(より古いものだと通常の鋼管用継手が利用されていた。)これによって継手からサビが発生することが多かった。よって改修現場などで配管の修繕の際はライニング鋼管であっても継手が旧式のものである場合も多いので、既存配管の利用時は慎重な検討が必要になる。

配管用炭素鋼鋼管

配管用炭素鋼鋼管は一般的な鋼管の配管であり、上水以外の水や、油、ガス、空気などに幅広く利用できる。ただし、酸性の廃液などでは腐食が起きるため利用しない。配管用炭素鋼鋼管には、外面に一次防せい塗装を施した黒管と、内外面に亜鉛めっきを施した白管とがある。

配管用炭素鋼鋼管(黒管)

配管用炭素鋼鋼管の黒管

黒管は防せい塗装により黒っぽい色をした配管でSGP黒黒ガス管配管用炭素鋼鋼管の黒などと呼ばれる。防せい塗装は半年程度の屋外防露に耐える塗装とされており、基本的には屋内配管に利用される。

配管用炭素鋼鋼管(白管)

配管用炭素鋼鋼管の白管

白管は亜鉛めっきにより白っぽい色をした配管でSGP白白ガス管配管用炭素鋼鋼管の白などと呼ばれる。通常は黒管より白管のほうがサビにくいので上位の配管材になるが、亜鉛めっきは高温で剥がれが起きるため、白管は蒸気配管に利用できない。亜鉛めっきは10~20年程度は屋外防露に耐えるともいわれ、屋内配管や屋外配管に利用される。

圧力配管用炭素鋼鋼管

圧力配管用炭素鋼鋼管は、配管用炭素鋼鋼管より高い使用圧力に耐えられる配管で、白管はSTPG白、黒管はSTPG黒などと呼ばれる。
配管用炭素鋼鋼管の使用圧力は1.0MPa以下で、それ以上の場合は圧力配管用炭素鋼鋼管が使用される。

管に作用する圧力の大きさによりsch10、sch20、sch30、sch40、sch60、sch80とsch(スケジュール)の大きさが上がっていく。汎用品はsch40sch80である。スケジュール番号は、使用圧力P[MPa]/許容応力S[MPa]×10から決められている。

水配管用亜鉛めっき鋼管

水配管用亜鉛めっき鋼管は、内外面に亜鉛めっきを施した配管でSGPWなどと呼ばれる。
亜鉛めっきの付着量に規格があり高い防食性を持つ。(配管用炭素鋼鋼管の白管には、亜鉛めっきの付着量に規定は無い。)

配管用アーク溶接炭素鋼鋼管

配管用アーク溶接炭素鋼鋼管は、鋼管に塗装やめっきを行わずにそのまま利用する大口径用の配管である。STPY400などと呼ばれる。プラント配管、上水道や下水道の配管の原管などとして利用されている。
帯状の鉄鋼から配管の形状を作る際、アーク溶接(アーク放電熱による溶接)により接合して作られている。

耐溝状腐食電縫鋼管

耐溝状腐食電縫鋼管は、鋼管に塗装やめっきを行わずにそのまま利用する大口径用の配管である。元管がSGPならSGP-MN、STPGならSTPG-MNなどと呼ばれる。プラント配管、上水道や下水道の配管の原管などとして利用されている。
帯状の鉄鋼から配管の形状を作る際、電縫溶接(大電流による溶接)により接合して作られている。配管用アーク溶接炭素鋼鋼管より溶接部分が腐食しにくい。

ライニング鋼管

ライニング鋼管とは、鋼管の内面や外面をビニルやポリエチレンなどの樹脂系の被膜層でコーティングした鋼管という。樹脂系の被膜層を設けているので鋼管に比べて防食性に優れているが、熱により溶けるので高温になる配管には利用できない

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管は、内面が硬質塩化ビニルでライニングされた鋼管である。外面の被覆によりVA管VB管VD管の3種類がある。VA管の外面は一次防せい塗装、VB管の外面は亜鉛めっき、VD管の外面は硬質ポリ塩化ビニル被膜である。

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(VA管)

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管のVA

VA管は防せい塗装により赤っぽい色をした配管でVA管SGP-VAなどと呼ばれる。防せい塗装は半年程度の屋外防露に耐える塗装とされており、基本的には屋内配管に利用される。

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(VB管)

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管のVB

VB管は亜鉛めっきにより白っぽい色をした配管でVB管SGP-VBなどと呼ばれる。亜鉛めっきは10~20年程度は屋外防露に耐えるともいわれ、屋内配管や屋外配管に利用される。

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(VD管)

水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管のVD

VD管は水色の硬質ポリ塩化ビニルによる配管でVD管SGP-VD塩ビライニングの埋設などと呼ばれる。硬質ポリ塩化ビニル被膜はサビないので防食性に優れているため、埋設配管に利用される。

水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管

水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管

水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管は、内面が耐熱性の硬質塩化ビニルでライニングされた鋼管である。鋼管の外面は一次防せい塗装により黒っぽい色をした配管でHVA管SGP-HVAなどと呼ばれる。
硬質ポリ塩化ビニルの使用温度は40℃以下で、耐熱性硬質ポリ塩化ビニルの使用温度は85℃以下である。

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管は、内面にポリエチレン粉体が塗布された鋼管である。外面の被覆によりPA管PB管PD管の3種類がある。PA管の外面は一次防せい塗装、PB管の外面は亜鉛めっき、PD管の外面はポリエチレン被膜である。

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管(PA管)

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のPA

VA管は防せい塗装により赤っぽい色をした配管でPA管SGP-PAなどと呼ばれる。防せい塗装は半年程度の屋外防露に耐える塗装とされており、基本的には屋内配管に利用される。

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管(PB管)

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のPB

VB管は亜鉛めっきにより白っぽい色をした配管でPB管SGP-PBなどと呼ばれる。亜鉛めっきは10~20年程度は屋外防露に耐えるともいわれ、屋内配管や屋外配管に利用される。

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管(PD管)

水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のPD

VD管は水色の硬質ポリ塩化ビニルによる配管でPD管SGP-PDポリライニングの埋設などと呼ばれる。硬質ポリ塩化ビニル被膜はサビないので防食性に優れているため、埋設配管に利用される。

補足
 

水道用硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管にはVA管、VB管、VD管があり、水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管には、PA管、PB管、PD管があり、よく似た配管種である。この2種類の配管種について補足する。

水道用硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管使い分けについて

この2種類の配管は大きな違いはなく、基本的には同じ用途にこの2種類の配管を使用することが出来る。
水道用硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管のほうが機械的強度が高く摩擦抵抗が小さいので一般的に多く用いられており、水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のほうがやや安価で軽量で寒冷地にも強いなどの違いがある。

フランジ付きの規格について

日本水道協会にて、水道用硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管はJWWA K116、水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管はJWWA K132と規格されている。日本水道鋼管協会にて、フランジ接合用に工場で加工されたフランジ付の配管は別に規格されている。フランジ付き硬質塩化ビニルライニング鋼管はWSP011、フランジ付きポリエチレン粉体ライニング鋼管はWSP039と規格されている。

VC管PC管について

現在の規格配管としてA管B管D管があるのに、C管は無い。しかし以前はVC管とPC管というものも存在していたらしい。(職場の大先輩すら詳細については知らなかった、あまり普及しなかったのだろうか…?)
SGP-VC管は、外面を亜鉛めっき、内面を硬質塩化ビニルでライニングされた鋼管である。VC管は亜鉛めっき付着量に規格は無いが、VB管は亜鉛めっきの付着量が規格されているため、VC管よりVB管の方が高い防食性を持っている。PC管は、外面を硬質塩化ビニルでライニングされた鋼管である。C管は、VC管とPC管で仕様が異なることと、需要が少なくなったことから廃れたのではと考えられる。

ナイロンコーティング鋼管

ナイロンコーティング鋼管は、ナイロン粉体で配管全体を被膜した配管でNP管などと呼ばれる。配管色は白、水色、灰色の3色が一般的である。高い防食性と衛生性を持ち、上水を含む各配管のほか、プラント配管や海水の配管などの特殊な用途にも用いられている。

配管材としては高価なものであるが、屋内配管、屋外配管、埋設配管などに幅広く利用できるため、配管材だけでなくバルブなどのコート材としても多く用いられている。

排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管

排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管

排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管は、内面が硬質塩化ビニルでライニングされた鋼管である。鋼管の外面は一次防せい塗装により赤っぽい色をした配管でDVA管SGP-DVAなどと呼ばれる。屋内用排水配管である。
排水用の配管で無圧管なので、SGP-VAに比べて硬質塩化ビニルのライニングの厚みが薄く軽量である。

補足
 

硬質塩化ビニルライニング鋼管の配管を分類するために上記の呼び方の他、水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管をLP管、水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管をH-LP管、排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管をD-LP管などと呼んでいる。

排水用ノンタールエポキシ塗装鋼管

排水用ノンタールエポキシ塗装鋼管

排水用ノンタールエポキシ塗装鋼管は、内面ノンタールエポキシ樹脂で塗装した鋼管である。鋼管の外面は一次防せい塗装により緑っぽい色をした配管でNTA管SGP-NVAなどと呼ばれる。屋内用(湿潤箇所でも利用可能)の排水配管である。

消火用硬質塩化ビニル外面被覆鋼管

消火用硬質塩化ビニル外面被覆鋼管

消火用硬質塩化ビニル外面被覆鋼管は、内面が亜鉛めっき、外面が硬質塩化ビニルでライニングされた鋼管である。配管の外面は茶色の硬質塩化ビニルの配管で、元管がSGPならSGP-VS、STPGならSTPG-VSなどと呼ばれる。埋設用消火配管である。

ポリエチレン被覆鋼管

ポリエチレン被覆鋼管は、外面がポリエチレンで被膜された鋼管である。配管の外面は緑色のポリエチレンの配管で、PLP管などと呼ばれる。ポリエチレンが一層のものはP1H、二層のものはP2Sが規格されている。埋設用の配管で、ガス配管油配管に用いられる。一般的には二層管の方が防食性に優れて高価である。

ポリエチレン被覆鋼管(P1H)

ポリエチレン被覆鋼管の一層管

ポリエチレン被覆鋼管(P2S)

ポリエチレン被覆鋼管の二層管