冷温水配管の開放回路と密閉回路

チラーの配管回路は、給水や給湯の配管と異なり水栓などの給水吐出先が無く、機械や空調機などの熱交換に使われた冷水は循環し、再度チラーに戻るため、循環回路とも呼ばれる。以下にチラー回路とチラー周辺機器について記載する。

開放回路と密閉回路

循環回路は、循環水が外気(外部の空気)に触れているかいないかで、開放回路密閉回路に区別される。冷温水回路では、密閉回路用のタンクを用いて冷温水が空気に触れる部分が無いよう計画されている場合を密閉回路、それ以外場合を開放回路という。冷却水回路でも同様に、密閉式冷却塔(クーリングタワー)を用いて冷却水が空気に触れる部分が無いよう計画されている場合を密閉回路、それ以外を開放回路という。

開放回路

開放回路は、通常の水槽を用いた回路であり、一般に密閉式回路と比較し安価で、水槽の大きさが自由に設定出来るので大型化しやすいといったメリットがある。受水槽タンクなどと同様に、水槽の水位管理が必要になる他、必要であれば落水防止弁を付けたり、逃し弁回路を設ける場合もある。水槽で吐水口空間を取れるため、補給水として上水を補給する際も水槽内でボールタップ給水と出来る。

開放式チラー回路

二槽式の開放回路

開放回路のうち、往き管と還り管のそれぞれに、低温槽(往き)と高温槽(還り)の二槽の水槽を持つ場合は以下の図のようになる。水槽からもう一方の水槽までの経路は開放されており、それぞれがポンプを持っている。二槽とすることで、安定して水量が確保しやすくなるため、負荷の種類が一律でない場合や負荷の大きさに変動がある場合などに多く用いられる。

高温槽と低温槽をもつチラー回路

密閉回路

密閉回路は、密閉回路用のタンクを用いた回路であり、一般に開放式回路と比較し高価で水量に対して水槽容積が大きくなってしまうが、タンクが外気と触れ合わないため循環水に不純物が入りにくく配管や機器の腐食が少なく衛生的であるといったメリットがある。水槽内で吐水口空間を取れないため、補給水として上水を自動的に補給する際は加圧シスターンなどの自動供給装置を別途設置する必要がある。

密閉式の回路で利用するタンクは、用途によって形状が異なる。密閉式膨張タンクは、合成樹脂製のダイヤフラムプラダと呼ばれる膜によって仕切られた水室とガス室を持った水槽を利用し、水の膨張量を吸収する形状になる。密閉式クッションタンクとしては、ストレージタンクや貯湯槽などと呼ばれる耐圧式のタンクを用いたり、往きヘッダー還りヘッダーを用いたり、配管径を太くすることで保有水量を大きくする。

密閉式チラー回路

チラーの周辺機器

循環回路には、熱源負荷の他に、循環水を送り込むためのポンプ、水量の確保や熱膨張への対応のために水槽などが必要になる。その他に、配管内のゴミを取り除くために機器の手前に取り付けるストレーナーや機器の発停を制御するためのバルブ類、圧力計や温度計、流量計などの計器類を取り付ける。なお、チラーにはポンプや水槽を内臓している機器もある。

※ここでいう熱源とはチラーのことを指すが、チラーのような冷熱源だけでなく、ボイラーや冷温水機のような温熱源発生機も同様の循環回路とする。

水槽(タンク)

水槽は、水槽の設置目的によって、保有水量確保の場合はクッションタンク、熱伸縮による伸縮しろ確保の場合は膨張タンク、補給水の導入箇所である場合は補給水槽などとも呼ばれる。保有水量確保の目的では水槽の代わりに、大きい配管径としたり、ヘッダー管を用いて保有水量を大きくする場合もある。

水槽の設置位置は、ポンプの圧力低下によるキャビテーション防止の観点からポンプの吸込側とするのが一般的である。さらに、水槽の方式が開放式(開放回路用の水槽)の膨張タンクであれば、循環水が溢れてしまうため循環回路の最も高いところに設置しなければならない。密閉式(密閉回路用の水槽)の膨張タンクであっても、配管にかかる圧力を考慮し封入圧力を決める必要があるため、なるべく封入圧力を抑えようすると循環回路の高い部分に設置することになる。

※キャビテーションとは、ポンプの吸込による圧力低下に伴い、液体が気化することで、ポンプの能力を落とすだけでなく故障の原因にもなる現象である。

参考記事
冷却塔のあるチラー回路

ポンプ

ポンプの設置位置は、チラーの圧力損失(損失水頭)に対応するため、チラーの押込側とするのが一般的である。なお、ポンプ廻りには、仕切弁、逆止弁、防振継手などを設置する必要がある。

空調ポンプ廻りの弁は、国土交通省官庁営繕 「公共建築設備工事標準図(機械設備工事編)」に規定されているので配管要領を参考。

制御弁(二方弁と三方弁)

バルブ(弁)には、手動で開閉の操作をするものと電気信号などを受けて自動で開閉するものがあり、後者を手動式のバルブと区別して自動弁という。自動弁の信号には電気の他に、防爆区域にも使える空気圧信号のものや、油圧回路に利用される油圧信号などがある。電気信号のものには、電磁石により動作する電磁弁、電動機(モーター)により動作する電動弁がある。

弁には、繋ぎ方向の数で2方弁、3方弁…n方弁と名称が変わり、配管を弁の入口と出口のニ方向に繋ぐことが出来るものを2方弁、二方向に加えてもう一方の出口の分岐配管を繋ぐことの出来る3方弁という。

二方弁(2方弁)

2方弁を用いて冷温水の流れを制御する場合、機器に入る流量を絞っていくと、その分配管に流れる流量が少なくなる。よって2方弁制御は、冷温水の流量を変化させて機器の運動を制御するので、変水量(VWV)制御ともいう。

2方弁チラー回路

三方弁(3方弁)

3方弁を用いて冷温水の流れを制御する場合、機器に入る流量を絞っていくと、その分は機器を通らず還り管に繋がる配管(バイパス配管)に流れる。よって3方弁制御は、冷温水の流量を変化させずに機器の運動を制御するので、定水量(CWV)制御ともいう。

3方弁には、分流形と混合形がある。分流形は、制御弁を全開または全閉とすることで冷温水の流れる経路を変更する弁方式で、ON/OFF制御などとも呼ばれる。混合形は、制御弁の開度を0~100%まで調整することで一部の流量を戻して調整する弁方式で、比例制御などとも呼ばれる。一般的に利用されているのは、混合形である。

3方弁は、弁に大きな圧力がかかることを防ぐため、機器の還り配管に取り付ける用に設計されている。ただし、分流形は弁の性質上、往き配管に設ける必要があるため、機器の往き配管に取り付ける用に設計されているので注意する。

分流形の3方弁チラー回路分流形
混合形の3方弁チラー回路混合形
参考
 

電磁弁

電磁弁は、電磁石で動作する自動弁で、磁石の力でバタンッと瞬時に全閉か全開に制御する。瞬時に動作するため、水の勢いを一気に弁で制御するため、電磁弁にかかる負荷も大きく、管径が50A程度までの小口径にのみ利用する。

電動弁

電動弁は、電動機(モーター)駆動で動作する自動弁で、 モーターでクルクルと制御するので全閉と全開のほか中間位置もとれるので流量調整にも使用できる。電磁弁に比べて、弁についた制御装置が大型で高価である。

熱交換器

熱交換器は、負荷の要望温度が熱源の供給温度と異なる場合に利用される。例えば、往き-還り(7℃-12℃)のチラーで、往き-還り(15℃-20℃)の中温用空調機を冷やす場合などに用いる。熱交換器から見てチラー側の配管を1次側配管、負荷側の配管を2次側配管と呼び、3方弁を一次側に、温度センサを2次側に取り付けて流量を制御する。一次側配管回路同様に二次側配管回路も循環回路になるため、補給水の給水方法や水槽の設置方法などに注意する。

熱交換器のあるチラー回路

冷却塔

冷却塔は、チラーが水冷式だった場合や単独で熱源機として用いる場合に使用される。冷却塔については別記事にまとめている。冷却塔側の配管を冷却水配管と呼び、チラー側の冷水配管と区別する。冷水配管回路同様に冷却水配管回路も循環回路になるが、開放式冷却塔であれば冷却塔が補給水の供給口と水槽としての役割を担ってくれることが多い。

参考記事
冷却塔のあるチラー回路

エア抜き弁

エア抜き弁とは空気抜き用のバルブのことをいう。配管の水張時などに混入した空気が、吐出先の無い循環回路では排出されないため、配管の頂部にはエア抜き弁を設ける必要がある。エアが混入していると、循環水ポンプの不具合の原因になり必要な流量や揚程を確保できなくなるなどの問題が起きる。
なお、開放先の無い回路ではエア抜き弁は必須であるが、開放回路で水槽などに水が吐出されるのであれば空気への開放箇所があるのでエア抜きは不要。ただし、給水配管などと同様に鳥居配管になる部分にはエア抜き弁が必要である。

エア抜きは配管頂部に接続する。エア抜き弁とは自動で開閉する自動式エア抜き弁を指し、通常の弁(バルブ)により操作者が手動で開閉するものは手動式と呼ばれる。
なお、エアを押し出すためには、補給水が30kPa以上の圧力を持つ必要があるので注意する。不足する場合は、補給水配管のサイズアップや補助タンクや加圧ポンプの取付などで対策する必要がある。

手動エア抜き弁
自動エア抜き弁