加湿量や徐湿量の計算方法と必要性

夏期は気温[℃]も相対湿度[%]も高いため、暑くてジメジメした状態になる。反対に冬期は気温[℃]も相対湿度[%]も低いため、適正な空調を行わないと、寒くて乾燥した状態になる。

空調を行い、湿度をコントロールし相対湿度を適正な状態(40%~70%程度)に保つことが必要になる。加湿や除湿の検討を行っていない室においては、空調機を利用しても、湿度は成り行きで決まってしまう。

加湿器には、常温の水を気化熱により水蒸気に変化させて加湿する水加湿と、水を沸騰させることで水蒸気に変化させて加湿する蒸気加湿とがある。除湿機には、空気を露点より冷却することで除湿するコンプレッサー除湿機と、乾燥材で水蒸気を吸着するデシカント除湿機とがある。
加湿器や除湿機の種類については、詳細は別記事にまとめた。

参考記事
参考

空気環境の基準

浮遊粉じんの量 0.15mg/m3以下
一酸化炭素の含有率 100万分の10以下(=10ppm以下)
※特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下
二酸化炭素の含有率 100万分の1000以下(=1000ppm以下)
温度 (1)17℃以上28℃以下
(2)居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。
相対湿度 40%以上70%以下
気流 0.5m/s以下
ホルムアルデヒドの量 0.1mg/m3以下(=0.08ppm以下)

建築物環境衛生管理基準(厚生労働省)

湿度コントロールの必要性

空調を行い、湿度をコントロールし相対湿度を適正な状態に保つことが必要になる。相対湿度が70%以上の高湿度となると、身体が潜熱を空気中に発散出来ず汗がベタベタと貼り付くような不快感を感じたり、ダニやカビなどの有害な微生物が繁殖しやすい状況の原因となる。相対湿度が30%以下の低湿度になると、身体の水分が奪われることで喉や肌の乾燥を感じたり、空気中の水分が少なく電気を帯電しやすくなるので静電気の発生の原因となる。

このように湿度をコントロールすることは重要であるが、実際は一般室においては湿度調整を行っていないことも多く、ほとんどの場合は湿度は成り行きとなってしまっている。(この場合は必要に応じて別途加湿器を設置することが多い。)

湿度調整が行われる場所は、体温調整が難しい人の利用する室(乳幼児室など)や、湿度が装置や製品に影響を与える室(電算機室や工場の製造室など)があげられる。以下に、湿度対策が重要な室で湿度コントロールがされないことで起きる問題点について記載した。これらの室では湿度の目標値が定められており、その湿度になるように空調を行うことになる。

印刷工場の湿度調整

低湿度の場合…乾燥により用紙の含水量不足による紙の反り返りや紙切れなどが起きる。
高湿度の場合…水蒸気による用紙の波うちなどが起きる。

塗装工場の湿度調整

低湿度の場合…乾燥により静電気が発生し、有機溶剤の発火や塗装面へのホコリやゴミの付着が起きる。
高湿度の場合…塗膜(塗料を塗って乾燥させ硬化したもの)強度が含水量過多により影響を受ける。

食品工場の湿度調整

低湿度の場合…乾燥により食品の鮮度低下が起きる。生鮮食品であれば人々の快適範囲より高湿度であることが要求される。
高湿度の場合…カビの発生が食中毒の発生要因となる。

美術館や博物館の湿度調整

低湿度の場合…乾燥により展示物がダメージを受ける。
高湿度の場合…展示物へのカビの発生などが起きる。

電気室や電算室の湿度調整

低湿度の場合…乾燥により静電気が発生し、機器の発火等が起きる。
高湿度の場合…水蒸気による部品の腐食などが起きる。

加湿器や除湿機の能力計算

加湿器や除湿機の能力は以下の式によって求められる。

全熱能力[W]=0.33×送風量[m3/h]×比エンタルピーの変化量[kJ/kg(DA)]
顕熱能力[W]=0.33×送風量[m3/h]×温度の変化量[℃]
潜熱能力[W]=833×送風量[m3/h]×絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]

※0.33と833の換算については以下を参照
【参考】温度と湿度

加湿能力[W]や除湿能力[W]は、上記の全熱能力の式から求められる。
なお、冷却や加熱が無く室内温度に変化が無い場合は、顕熱変化が無いため潜熱能力の式からも能力が求められ、この時の全熱能力[W]=潜熱能力[W]となる。

加湿器の能力計算

加湿能力は、以下の式でも求められる。

全熱能力[W]=加湿定数(2680[kJ/kg])×加湿量[kg/h]/3.6≒0.33×送風量[m3/h]×比エンタルピーの変化量[kJ/kg(DA)]

水の加湿定数(熱水分比)=0[kJ/kg]
蒸気の加湿定数(熱水分比)=2680[kJ/kg]

※変換は以下のように行っている。
・加湿能力[kJ/h]=加湿定数[kJ/kg]×加湿量[kg/h]
・1[kJ/h]=1000[J/h]=1000×1/3600[J/s]=1/3.6[W]
・加湿定数[kJ/kg]=蒸気または水の熱水分比=比エンタルピの変化量[kJ/kg(DA)]/絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]
・加湿量[kg/h]=空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×送風量[m3/h]×絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]

よって計算すると、
H[W]
=H[kJ/h]/3.6=加湿定数[kJ/kg]×加湿量[kg/h]/3.6
={比エンタルピーの変化量[kJ/kg(DA)]/絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]}×{空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×送風量[m3/h]×絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]}/3.6
=比エンタルピーの変化量[kJ/kg(DA)]×空気密度(≒1.2[kg/m3])×送風量[m3/h]/3.6
≒0.33×送風量[m3/h]×比エンタルピーの変化量[kJ/kg(DA)] と変形できる。

加湿器の加湿量計算

加湿器は空気中に水蒸気を散布する仕組みであるので、加湿能力[W]を単位時間あたりの加湿量[L]または[kg]で表記することが多い。

加湿必要量[kg/h]=換気量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]×安全率(=1.2)

ただし、実際の加湿器では加湿効率を考えて噴霧量を決定する必要がある。加湿効率は、茶本より水噴霧式や気化式では0.4、蒸気式は1.0としている。

加湿量[kg/h]=噴霧量[kg/h]×加湿効率

加湿効率が異なるのは以下のような事由である。
・水噴霧式は水蒸気になりきれなかった水分がエリミネーター(水切装置)によって回収されるため、実際の加湿量が少なくなる。
・気化式は水を浸透されたフィルターに風を送り気化するのでフィルターに残って実際には噴霧されない水分があるため、実際の加湿量が少なくなる。
・蒸気式はおおよそ水蒸気として噴霧されるため、実際の加湿量と噴霧量に大きな差が出ない。

参考書籍
例題
 
問題

加湿器を持った空調機によって条件(20℃、40%)の空気を吹き出したい。外気条件(2℃、40%)の空気を加熱と加湿して1000m3/h導入する。
室内での水蒸気の発生はないものとして、この時の必要加湿量[kg/h]と加熱能力[W]を求める。加湿器は水噴霧式として加熱量は0KWとする。

解答

2℃、40%の絶対湿度は0.0017[kg/kg(DA)]、20℃、40%の絶対湿度は0.0058[kg/kg(DA)]である。
加湿器で水蒸気を混合することで空気の絶対湿度を0.0017→0.0058[kg/kg(DA)]にしたい。

加湿必要量[kg/h]=換気量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]×安全率(=1.2)
=1000×1.2×(0.0058-0.0017)×1.2=5.904[kg/h]

水噴霧式の加湿効率は0.4であるので、
必要噴霧量[kg/h]=5.904/0.4=14.76[kg/h]

なお、加熱能力は顕熱能力から求められるので
加熱能力[W]=0.33×送風量[m3/h]×温度の変化量[℃]=0.33×1000×(20-2)=5940[W]

問題

加湿器によって室内条件(20℃、60%)にしたい。現在は空調機の設置は無く、隣室から条件(20℃、40%)の空気が400m3/h導入されている。
室内での水蒸気の発生はないものとして、この時の加湿必要量[kg/h]を求める。加湿器は水噴霧式として加熱量は0KWとする。

解答

20℃、40%の絶対湿度は0.0058[kg/kg(DA)]、20℃、60%の絶対湿度は0.0087[kg/kg(DA)]である。
加湿器で水蒸気を混合することで空気の絶対湿度を0.0058→0.0087[kg/kg(DA)]にしたい。

混合空気の絶対湿度
=(導入空気の水蒸気量[kg/h]+加湿量[kg/h])/乾燥空気量[kg(DA)/h]

={(導入空気の換気量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×絶対湿度[kg/kg(DA)])+加湿量[kg/h]}/(送風量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3]))
=(400×1.2×0.0058+加湿量[kg/h])/(400×1.2)より

(400×1.2×0.0058+加湿量[kg/h])/(400×1.2)=0.0087
加湿量[kg/h]=400×1.2×0.0087-400×1.2×0.0058=4.176-2.784=1.392[kg/h]

安全率(=1.2)をかけると、必要加湿量=加湿量[kg/h]×1.2≒1.670[kg/h]になる。

水噴霧式の加湿効率は0.4であるので、
必要噴霧量[kg/h]=1.670/0.4=4.175[kg/h]

※乾燥空気量は正確には、送風量から水蒸気量を差し引く必要があるが、送風に含まれる水蒸気量は小さいので省略とした。

除湿機の除湿量と除湿能力計算

除湿機は除湿空気の状態値により除湿能力あたりの除湿量が変わってしまうので、前提条件として室内空気の状態値を定め能力値を決定する。
除湿機の能力は、加湿器と基本的には同じように求める。例題を用いて説明する。

例題
 
問題

空調機によって条件(26℃、50%)の空気を吹き出したい。外気条件(34℃、55%)の空気を冷却と除湿して1000m3/h導入する。
室内での水蒸気の発生はないものとして、この時の必要除湿量[kg/h]と冷却能力[W]と再熱能力[W]を求める。空調機はコンプレーサー式とする。
ここでは空調機の性質から相対湿度が95%で水蒸気が凝縮するものとし、空調機内の発熱は考慮しないものとする。

※理論上は飽和状態になる相対湿度100%で水蒸気が凝縮するが、実際は相対湿度が100%になる前の相対湿度95%程度で凝縮(除湿)を始める。さらに空調機吹出口の前で送風機などの熱により温度が上がり相対湿度が下がる。空調機吹出口での相対湿度の目安は、エアハンドリングユニットでは相対湿度90~95%程度、パッケージ空調機では相対湿度85~90%程度である。

解答

34℃、55%の絶対湿度は0.0185[kg/kg(DA)]、26℃、50%の絶対湿度は0.0105[kg/kg(DA)]である。
冷却で除湿することで空気の絶対湿度を0.0185→0.0105[kg/kg(DA)]にしたい。

必要除湿量[kg/h]=換気量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×絶対湿度の変化量[kg/kg(DA)]
=1000×1.2×(0.0185-0.0105)=9.6[kg/h]

空調機により空気を冷却していくと、24.5℃、95%から除湿が始まり、15.6℃、95%で絶対湿度0.0105[kg/kg(DA)]になる。
この時の湿り空気線図は下図のようになる。

冷却除湿の例題の湿り空気線図

なお、冷却能力は除湿も行うので全熱能力から、再熱能力は顕熱能力から求められるので
冷却能力[W]=0.33×送風量[m3/h]×比エンタルピーの変化量[kJ/kg(DA)]=0.33×1000×(81.7-42.3)※1=13002[W]
再熱能力[W]=0.33×送風量[m3/h]×温度の変化量[℃]=0.33×1000×(20-15.6)※2=1452[W]

※1:冷却により、(34℃、55%、比エンタルピー81.7kJ/kg(DA))から、(15.6℃、95%、比エンタルピー42.3kJ/kg(DA))に変化させている。
※2:再熱により、(15.6℃、95%)から、(26℃、50%)に変化させている。

問題

除湿機によって室内条件(20℃、40%)にしたい。現在は空調機の設置は無く、隣室から条件(20℃、60%)の空気が400m3/h導入されている。
室内での水蒸気の発生はないものとして、この時の除湿必要量[kg/h]を求める。除湿機はコンプレッサー式として加熱量は0KWとする。

解答

20℃、60%の絶対湿度は0.0087[kg/kg(DA)]、で20℃、40%の絶対湿度は0.0058[kg/kg(DA)]である。
除湿機で水蒸気を取り除くことで絶対湿度を0.0087→0.0058[kg/kg(DA)]にしたい。

混合空気の絶対湿度
=(導入空気の水蒸気量[kg/h]-除湿必要量[kg/h])/乾燥空気量[kg(DA)/h]

={(導入空気の換気量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3])×絶対湿度[kg/kg(DA)])-除湿必要量[kg/h]}/(送風量[m3/h]×空気密度(≒1.2[kg(DA)/m3]))
=(400×1.2×0.0087-除湿量[kg/h])/(400×1.2)より

(400×1.2×0.0087-除湿必要量[kg/h])/(400×1.2)=0.0058
除湿必要量[kg/h]=-400×1.2×0.0058+400×1.2×0.0087=-2.784+4.176=1.392[kg/h]

※この除湿量は、20℃、60%の空気の時の除湿量である必要があり、除湿機に記載されている条件がこれと大きく異なる条件の時は除湿量が変わってしまうので利用できない。
※乾燥空気量は正確には、送風量から水蒸気量を差し引く必要があるが、送風に含まれる水蒸気量は小さいので省略とした。

補足

実際の設計では、室内の熱負荷を考慮し空調機の吹出温度を決定する。そのためには室内の熱負荷を計算し、空調機の吹出温度が何度であれば、目標の室内温度になるかを計算する必要がある。

この回では、加湿や除湿についての検討がメインであるので、空調機の吹出温度と室内温度については省略したが、別記事にまとめているので必要であればそちらを参照いただきたい。

参考記事

加湿器や除湿機に必要な配管について

加湿器には給水機能が、除湿機には排水機能が必要になる。家庭用であればタンクを持ち、給水や排水のための配管を持たないものが多いが、業務用はタンクを利用せず自動的に給水や排水が行われるようにしているものが多い。ここに加湿器や除湿機に必要な配管について記載した。

加湿器用の給水配管

加湿器用の給水は、通常は上水(水道水)を使用している。加湿器の給水配管は、クロスコネクションの恐れがある場合にはチラー等の冷却水系統と同様に上水配管とせず、タンクやシスターン、バキュームブレーカー等を利用して上水と吐水口空間を取り、補給水配管とする(雑用系上水配管)。

以前は、冷却水系統や加湿器系統に、雑用水(再生水や雨水や井水等)を利用することも多かった。しかし、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)が改正され現在は雑用水を使用することはできない

また、上水はカルシウムを含み結晶化し白い粉になることがあるので、精密機械などを取り扱う等の場合は上水に代わり純水を利用する場合がある。

加湿器用のその他配管

水噴霧式の加湿器の2流体加湿器は、水を噴霧する際にエアを混ぜることで広く加湿を拡散させる。この場合、給水配管のほかに圧縮空気配管を接続する必要がある。

蒸気加湿には、給水を加熱し蒸気を作るタイプと、蒸気を外部から取入れ減圧し給水の代わりに使用するタイプとがある。後者の場合、給水配管のかわりに蒸気配管を接続する必要がある。

除湿機用の排水配管

空調機や除湿機では、除湿した排水をドレン配管を接続し排出する。排水を空調機や除湿機より高い位置で排水したい場合、ドレンポンプを設置し排水を上部に持ち上げる必要がある。