チラーやクーリングタワーの能力選定
冷水や冷却水の能力の選定、並びにこの能力を出すために必要になる温度や流量を求める。
なお、チラーとクーリングタワーの仕組みについては、以下の記事を参照。
チラー能力の選定
負荷と時間から能力を求める方法
チラー(冷凍機)の能力は、冷却する槽内の容積と温度変化にかかる時間、加熱温度または冷却温度から求めることが出来る。
チラー能力は以下の式より求められる。
冷凍機能力[kW]=(槽容積[m3]/時間[s])×(循環液の密度[kg/m3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×(上昇温度または下降温度[℃])
内部の機器の発熱により、1時間で20℃の温度上昇のある水槽がある。
この水槽を、機器の運転が無い状態での温度に保ちたい場合のチラーの必要能力を求める。
水槽容積を5m3、水槽内の水の条件を簡易的に密度をρ≒1000[kg/m3]、比熱c≒4.2[kJ/kgK]とする。安全率は20%見込む。
冷凍機能力[kW]=(槽容積[m3]/時間[s])×(循環液の密度[kg/m3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×温度差[℃]より
=(5/3600)×(1000×4.2)×20
≒116.7kW、安全率20%とすると140kW
上記のように熱負荷からチラーの能力を選定した場合、チラーの供給温度については別途検討する必要がある。
単純に発熱分を冷却するだけの用途であれば、クーリングタワーで作った常温の冷却水を供給しても良いことになるが、 冷やしすぎや発熱が取り切れないなどの問題が起こりうるので、内部機器の温度調整が厳密である場合はインバーター調整の可能なチラーによる制御など慎重な検討が必要になる。
W0.6m×D0.9m×H1.0mの50℃の水槽を、15分以内に30℃にしたい場合のチラーの必要能力を求める。
熱の侵入を考慮し安全率を50%見込む。
冷凍機能力[kW]=(槽容積[m3]/時間[s])×(循環液の密度[kg/m3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×温度差[℃]より
={(0.6×0.9×1.0)/(60×15)}×(1000×4.2)×(50-30)
=50.4kW、安全率50%とすると75.6kW
必要流量から能力を求める方法
実設計では冷水供給装置側で必要なユーティリティの供給流量と温度が与えられている場合が多い。
この場合は、チラー能力は以下の式より求められる。
冷凍機能力[W]≒16.7×必要流量[L/min]×(循環液の密度[g/cm3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×出入口温度差[℃]
※16.7は単位換算による係数である。1W=1J/s、1kW=1000W、1kg/m3=0.001g/cm3である。
冷凍機能力[kW]=必要流量[m3/s]×(循環液の密度[kg/m3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×出入口温度差[℃]
=必要流量[L/min]/(1000[L/m3]×60[s/min])×(循環液の密度[kg/m3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×出入口温度差[℃]
冷凍機能力[W] ≒16.7×必要流量[L/min]×(循環液の密度[g/cm3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×出入口温度差[℃]
※循環液が水(0℃)の場合
水の密度ρ≒1[g/cm3]、比熱c≒4.2[kJ/kgK]より
冷凍機能力[kW]≒0.07×必要流量[L/min]×出入口温度差[℃]
ユニットAとユニットBを冷やすための冷水のチラーの必要能力を求める。ユニットAとユニットBの供給流量は50L/min、供給温度は20℃、戻り温度は25℃とする。水の条件を簡易的に密度をρ≒1[g/cm3]、比熱c≒4.2[kJ/kgK]とする。安全率は20%見込む。
冷凍機能力[W]≒16.7×必要流量[L/min]×(循環液の密度[g/cm3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×出入口温度差[℃]より
=16.7×(50+50)×(1×4.2)×(25-20)
=35.07kW、安全率20%とすると42.1kW
出入口温度差が大きくなれば流量を少なくできるので、ポンプの能力や配管の口径など冷水の搬送に必要な力を小さくできる。ただし、一般的に空調などで利用される冷水の温度差は5℃程度(往き7℃、還り12℃)であり、10℃差になると大温度差空調と言われる。10℃を超えるような大温度差空調については特注対応などになるため、チラーメーカーと相談が必要になる。
クーリングタワーの選定
クーリングタワー(冷却塔)は、チラー(冷凍機)と同様に装置を冷却する場合もあるが、水冷チラーの冷却水に利用される場合が多い。この場合は、クーリングタワーの必要能力はチラーの能力に依存する。
冷却塔の能力は、以下の式より求められる。
冷却塔能力=冷凍機能力×冷却係数
しかし、クーリングタワーの能力表示は必要流量と温度よるのでこの時の流量も求める必要がある。
冷却塔の必要流量は、以下の式により求められる。
冷却塔必要流量[L/min]=0.06×冷却塔能力[W]/(循環液の密度[g/cm3]×循環液の比熱[kJ/kgK]×出入口温度差[℃])
※能力式⇔流量式への変換
冷却塔能力[W]=1000/60(≒16.7)×冷却塔必要流量[L/min]×(循環液の密度[g/cm3]×循環液の比熱[kJ/kgK])×出入口温度差[℃]
冷却塔必要流量[L/min]=0.06×冷却塔能力[W]×冷却係数/(循環液の密度[g/cm3]×循環液の比熱[kJ/kgK]×出入口温度差[℃])
※循環液が水(0℃)の場合
水の密度ρ≒1[g/cm3]、比熱c≒4.2[kJ/kgK]より
冷却塔必要流量[L/min]≒14.3×必要流量[L/min]/出入口温度差[℃]
冷却係数(K値)は冷凍機の種類によって決まる係数である。冷却係数が1.3というのは、温度差が同じである場合はおおよそ10Lの冷水を作るのに13Lの冷却水が必要になるということである。
冷却係数は圧縮式冷凍機で1.3、一重効用吸収冷凍機で2.7、二重効用吸収冷凍機や吸収冷温水機で1.86である。
圧縮式冷凍機の場合の冷却塔の必要能力[kW/h]:冷凍機の冷凍能力×冷却係数(1.3)
吸収式冷凍機の場合の冷却係数が大きい(冷却水が必要になる)のは、再生器における加熱と溶液ポンプの仕事に相当する熱量の分、圧縮式冷凍機より多く冷却する必要があるからである。
冷却塔は、外気の通風により循環水の一部を蒸発させてその蒸発潜熱で冷却水を冷やす機器であるため、冷凍機と異なり外気温度によって冷却できる温度に限界がある。
循環水を蒸発させるためには、水の温度が外気の湿球温度以上である必要があり、そこが冷却の限界点となるが、実際には外気湿球温度+5℃になるように設計されている場合が多い。