VAVやCAVなどを利用した空調システム

建築物全体の空調を考える場合、空調機種類やダクトの系統などのいわゆる空調システムを良く検討する必要がある。建物の用途や熱負荷の特性によって最適な空調システムは異なり、換気方法や空調の制御方法(VAVやCAVを含む)なども含めて、どのようなシステムとするのが最適であるかを総合的に判断する必要がある。

以下に、エアハンドリングユニットやファンコイル、パッケージ空調機などを用いた空調システムの一例を示した。

参考書籍

単一ダクト空調システム

単一ダクト空調システムとは、エアハンドリングユニットによって各空調室に空調空気を送るシステムのうち、ダクト系統が1系統(単一)の空調システムのことをいう。系統が単純でわかりやすくイニシャルコスト(=設置費)も低く、間仕切りの増設や負荷の増加などへの対応も容易であるため、エアハンドリングユニットの空調システムは特段の理由がない場合このシステムとすることが多い。単一ダクト空調システムのダクト末端には、各空調室の風量を制御するためにCAVまたはVAVがついている。

CAV(定風量)空調システム

定風量空調システムとは、単一ダクトシステムの一種で、CAV装置を用いて空調風量を一定に保つ空調システムをいう。
風量を一定に保つことで換気量の確保が出来るので、劇場やコンサートホールなどの大空間の空調に適している。負荷の大きさに関わらず一定量の空調風量であるので、ライニングコスト(=運転費)は高くなる傾向にある。

単一ダクトのCAV(定風量)

VAV(変風量)空調システム

変風量空調システムとは、単一ダクトシステムの一種で、VAV装置を用いて空調風量を負荷に合わせて変動させる空調システムをいう。
負荷に合わせて風量を変動させることが出来るので、ホテルや旅館などの負荷の傾向が近く時間によって負荷の大きさが異なるような空間の空調に適している。定風量に比べてライニングコスト(=運転費)は低くなるが、送風量が減少した際に換気量不足に陥りやすい。

単一ダクトのVAV(変風量)

VAV装置の制御には、静圧信号により送風機を制御する方法と風量信号により送風機を制御する方法がある。静圧信号による場合は、VAV装置内の圧力計で圧力を測定し、風速や風量を計算してダクト内の風量を制御する方式で、構造が簡易で安価なため多く利用されている。風量信号による場合は、VAV装置内のプロペラなどで風速を測定し、ダクト内の風量を制御する方式で、静圧信号よりきめ細やかな制御が出来る。

VAV装置を用いた静圧信号制御静圧信号の一例
 
VAV装置を用いた風量信号制御風量信号の一例
 

単一ダクト以外の空調システム

単一ダクト以外の空調システムは、より高度な温湿度制御を行うために利用される。ダクト系統を複数持つことで、単一ダクト空調のデメリットを補うことが出来るが、イニシャルコストやライニングコストは増加してしまう。さらに間仕切りの増設や負荷の増加などへの対応が難しいことなどの問題点もあり、システムの導入には慎重な検討が必要である。

二重ダクト空調システム

二重ダクト空調システムは、冷房空気と暖房空気を別々のダクトにより搬送し、各室のユニット内で混合させて温度調整する空調システムをいう。室内の温度管理がシビアである場合に用いられるが、湿度制御は難しい。

二重ダクト空調システム

ペアダクト空調システム

ペアダクト空調システムは、常時負荷をエアハンドリングユニットで、変動負荷を別置き空調機で処理する空調システムをいう。エアハンドリングユニットは負荷に関わらず一定風量とするため、換気量の確保が出来る。変動負荷は主に機器や装置などの発熱であるため、別置き空調機は顕熱処理用のものとする。

二重ダクト空調システムと異なり湿度調整が容易で、空調空気を混合して吹き出すものではないため混合による損失も無いので、より温湿度管理がシビアである場合に用いられる。

ペアダクト空調システム

外調機(OHU)を用いた空調システム

外調機(OHU)とは、外気処理を専門に行うエアハンドリングユニット(AHU)のことをいう。外調機を用いた空調システムは、外調機によって換気のための導入空気の負荷を処理して、室内の負荷は各室の空調機や別置きのエアハンドリングユニットによって処理するシステムをいう。これにより換気風量を確保しつつ、室内の負荷変動に対応した温湿度制御を行うことが出来る。

※各室に設置する空調機とは、ファンコイルやパッケージ空調機を指すが、OHUを利用している時点で建物内で冷温水の供給があるため、特段の理由が無ければファンコイル(FCU)を使用する。なお、ファンコイルを使った空調システムは、OHUやAHUで処理した外気を導入し、FCUで室内負荷に対応するシステムが多い。

ペリメータ負荷処理空調システム

ペリメータ負荷処理空調システムは、外気負荷を外調機、室内負荷を各室の空調機で処理する空調システムをいう。各室の空調機はペリメータゾーンの負荷処理を行う。ダクト併用ファンコイルユニット方式ともいう。

ペリメーターゾーンとは、外皮の周辺などで日射や外気温の影響を受けやすい部分をいい、時間によって負荷の大きさの変動が大きい。反対に、外皮から距離があり日射や外気温の影響を受けにくく負荷の大きさがほぼ一定な部分をインテリアゾーンという。ペリメータ―ゾーンとインテリアゾーンは負荷の特性が異なるため、ゾーンを区別し空調するこのシステムは能率的であるといえる。

外調機によるペリメータ負荷処理空調システム

ターミナル空調システム

ターミナル空調システムは、外気負荷を外調機、室内負荷を各室の空調機で処理する空調システムのうち、外調機で処理した空気を各室の空調機で受けてから空調するものをいう。各室の空調機をターミナル空調機という。

各室の空調機で処理空気を受けることで、通常のダクト併用ファンコイルユニット方式より、きめ細やかな温湿度調整が出来る。

外調機とターミナル空調機による空調システム

室内ユニットのみで空調する場合

空調負荷を内気循環型の各室の空調機で処理する場合、外気の導入方法を別途検討する必要がある。今回は、外気の導入を全熱交換器によって行う場合について記載した。

参考記事

パッケージ空調機で空調

パッケージ空調機で空調する場合、外気導入を行うパッケージ空調機は少ないため、一般には外気の導入は別置きの機器によって行う。

パッケージ空調機(PAC)による空調システム

ファンコイルで空調

ファンコイルで空調する場合、外気の導入はエアハンドリングユニットで行うのが一般的であるが、ファンコイルユニットだけを用いる場合もある。この場合は内気循環形のパッケージ空調機の空調システムと同様のシステムとなる。

ファンコイルユニット(FCU)による空調システム