吹出口や吸込口の種類の決め方

所定の場所に空気を運ぶために空調機やファンの前後に設置されている風道のことをダクトという。
ダクトの出入口にあたる吹出口や吸込口が開口したままだと、外部であれば雨や風の侵入や鳥や虫などの異物の侵入原因、内部であっても人や物が入る危険性が発生してしまう。
このような危険を防ぐために吹出口や吸込口には対策が取られている。それらを以下に紹介する。

吹出口や吸込口に取り付けるもの

ガラリのイメージ

ガラリ

ウェザーカバーのイメージ

ウェザーカバー


ガラリ

ブラインド状の羽根板を平行に取り付けたもの。羽根板は斜めや垂直に設置され視線を遮り、雨の侵入を防ぐ。
建築工事による場合が多く、取り合いが重要になる。
通常は雨の侵入を防ぐため横ガラリが多いが、ガラリに付着した水滴を内部に再飛散させることなく滴下させるため縦ガラリとする製品もある。
なお、視線を遮り換気ができるので室内の換気口にも利用される。

ウェザーカバー

外壁等に取り付ける、矩形ダクトのエルボのような形状のカバー先端に金網等が付いたもの。
フード付きベントキャップより更に雨が入りにくい形状になっている。

ベントキャップのイメージ

ベントキャップ

フードのイメージ

フード


ベントキャップ

外壁等に取り付ける、丸形の枠にガラリや金網等が付いたもの。
壁に伝う雨や泥などが入りにくい水止めのついた形状になっている。
雨の侵入を防ぐ傘機能がついていないので、軒下やベランダなどの建築屋根の下のダクト穴に設置する
風の強い場所用に防風板のついたものもある。

フード

ベントキャップに雨や風の侵入を防止するためのフード(傘のようなもの)が付いたもの。
形状は丸形や深形があり、ダクト内部ドレンとフードに付着した水滴が壁面に滴下しないように水切やドレン蒸発皿のついたものもある。
雨が入りにくい形状になっているが、丸形フードは半月状の傘なので高層階など風の強い場所では雨が侵入する。

補足

雨水の侵入を防ぐため外壁の吹出口や吸込口の周辺の対策として
・ダクトと壁の隙間から雨水の侵入を防ぐための適切な穴埋め(モルタルやバックアップ材とコーキングなど)と止水処理(止水板やスパンシールなど)を行う。
・ダクト内部への雨水の侵入を防ぐための外壁面に向かっての下り勾配(外部ダクトなら勾配1/10以上&外部水抜き、外壁にベントキャップ等吹出口なら勾配1/50以上)
・必要であれば水切用の除滴板(エリミネーター)&下部水抜きを設ける。
等の対策が必要である。

参考予定>>配管の貫通

金網のイメージ

金網

グリルのイメージ

グリル


金網

金属の線材を織り込んで網状とした金属製品のこと、異物の侵入を防止する。
ダクトに直接取り付ける場合は強度が求められるため、クリンプ金網(波状の金網のこと。網目がゆがみにくい)とすることが多い。
侵入を防ぎたい異物のサイズで金網のメッシュ幅を変更する。
メッシュ幅が細かいと目詰まりの原因になるため、メンテナンス性を考慮し決定する必要がある。

粉じんなどの更に細かいものの侵入を防ぐ場合は別途フィルターを用いる必要がある。
フィルターについては以下にまとめた。

参考記事
補足

メッシュ幅の数値は3~20メッシュ程度、防鳥網(防鳥用の金網)は3メッシュ、防虫網(防虫用の金網)は10メッシュ程度とされる。メッシュとは1インチの中にメッシュがいくつあるかを示した数値で、3メッシュの場合は1インチ(=25.4mm)の中にメッシュが3個(≒8.5mm)あることになる。メッシュ数が大きいほど目が細かく、小さいほど粗い。

メッシュとは

グリル

格子状のカバーのこと、打ち抜きによるパンチンググリルや羽根付グリルがある。
羽根は固定式(スリット型)と可動式(ユニバーサル型)があり、可動式は風向きを調整できる。
制気口や空調機の吹出口や吸込口に使われることが多い。

制気口の種類

上記のグリルのような空気の出入口に取り付るカバーに、風量(空気の量)調整風向(空気の向き)調整機能の付けたものを総じて制気口という。制気口の種類を以下に表にまとめた。

種類 特徴 細目 風量調整 風向調整 冷暖房調整 制気口種類による使い分け
レジスタ 打ち抜きによるパンチンググリルや羽根付グリルにシャッターを付属させたもの。羽根は固定式(スリット型)と可動式(ユニバーサル型)があり、可動式は風向きを調整できる。 固定式(スリット型) シャッターで可能 不可 吸込口に利用される(吸込口は風向きの調整することがそれほど重要では無いため)。
パンチングS型(整流板無)や、固定羽根のSL-HS型(別名G-HS)がある。
可動式(ユニバーサル型) シャッターで可能 可能(1方向または2方向) 吹出口に利用される。
直進気流専用のパンチングS型(内部に整流板有)や、タテ(V)とヨコ(H)の両方向に風向き調整できるVHS型や、1方向に風向き調整ができるHS型がある
※一般には吹出口にVHS(両方向可動羽根)、吸込口にHS(1方向可動羽根)が使われることが多い。
ライン 線状の吹出口。シンプルでスッキリと見えるので意匠性が高い。 カームライン 不可 不可 直進気流専用でエアカーテンなどに使用される、吸込口(内部に整流板無)にも利用できる。
ブリーズライン 風向調整ベーンで一部機種は可能 可能(1方向) 内部に風向調整ベーンがあり、風量調整と冷暖房調整(設置が天井面であれば、冷房は天井面に水平に暖房は天井面に垂直に吹き出す)ができる。風向調整ベーンの内蔵数により4種類(S・D・T・K)ある。
ノズル類 筒状の吹出口。指向性のある風が求められる場合に利用される。 ノズル プレートシャッター(SED)取付で可能 不可 スパイラルダクトなどに取り付ける吹出口用の丸型の枠のこと。気流の到達距離が必要な箇所(劇場やホール等)に使用される。単純な枠なので静圧損失が小さく意匠性に優れる。
二重ノズル プレートシャッター(SED)取付で可能 可能(1方向) 可(壁付) ノズルの内部に上下に動かせるノズルが入っており、壁付であれば冷暖房調整ができる(冷房は天井面に水平に暖房は下に向けて吹き出す)。
パンカルーバ ダンパー内蔵で外部から操作可能 可能(全方向、外部操作) ノズルの一種。矩形ダクトなど平面に穴をあけて取り付けるものとスパイラルダクトなどに取り付けるものがある。気流の到達距離が必要な箇所(厨房や工場)に使用される。吹出口が小さいため静圧損失が大きいが最も到達距離が長い。
シーリングディフューザー 天井取付専用のふく流吹出口(内部誘引性が高く、吹き出した風が広がる)。丸型はC2形、角型はE2形などがある。 アネモ型 プレートシャッター(SED)取付で可能 不可 内部に多層コーンがあり、内部コーンを操作することで冷暖房調整ができる。一般的なシーリングディフューザー。
パン型 プレートシャッター(SED)取付で可能 不可 内部にコーンの代わりにパン(皿)があり、パンを操作することで冷暖房調整ができる。アネモ型より誘引作用が小さい。

誘引性とは

誘引性とは周辺(室内)空気に影響を与える性質のこと。給気された空気の周りの空気に誘引気流(高圧化された空気の周囲で円を描くように回る空気、イメージとしては駅を通過する電車が勢いよく通る際にホーム内に起きる風のようなもの)が起きて実際の給気風量より吹出空気量が大きくなる。実際の給気風量を1次空気、誘引される空気を2次空気という。誘引性が高いと以下のような特徴がある。

・吹出空気が室内に広がるが到達距離は短くなる。
・制気口前の風速(ネック風速)より吹出風速は緩くなり、ドラフト(気流による不快感)を抑えることができる。
・給気空気に室内空気が混ぜられるので、他の制気口に比べて吹出温度差が大きくとることができる。
・誘引作用により天井汚れを集めてしまうため、天井面から吹出気流を離した汚染防止型もある。

誘引性のイメージ図

誘引性のイメージ

冷暖房調整とは

冷暖房調整とは季節によって風向を調整することをいう。空気の比重の違いにより、暖かい空気は上に冷たい空気は下に向かうので、冷房と暖房では気流の方向性が異なる。シーリングディフューザーなどの一部の制気口ではそれらを自動(オートタイプ)又は手動で調整し、必要な場所に気流を届けるように調整できる。

シーリングディフューザーにおける冷暖房調整のイメージ図

シーリングディフューザーの冷暖房調整のイメージ

結露対策

結露とは空気の飽和水蒸気量(空気中に含められる水蒸気の最大量)が空気が冷やされることで減少し、空気に含まれていた水蒸気が露点温度(飽和水蒸気量と現在の空気内水蒸気量が等しくなる温度)以下になり凝縮され水になったものが、ダクトの表面などに水滴となって表れることをいう。
夏場の冷房時は吹出口から冷たい空気が吹き出され、高温多湿の室内空気を冷やし制気口表面に結露を起こす。これの対策として以下のような結露防止機能付制気口がある。

・冷房空気が制気口の表面に伝わり結露するので、金属板より伝熱の少ない材料で金属板を覆ったもの。
・冷房空気が制気口の表面に伝わり結露するので、制気口内部に断熱材を施したもの。
・制気口付近の空気が冷やされ結露するので、制気口内部に誘引した天井空気などを導入し室内空気で包み込むようにしたもの。
・制気口付近の空気が冷やされ結露するので、制気口外部も冷房空気で包み込むようにしたもの。

※制気口の結露問題というと一般的には夏期の冷房時の結露のことを指す。冬期であれば、外気取入口からは冷たい空気が室内に吹き込まれ、建物内空気を冷やし露点温度以下となると結露を起こす。しかし、結露を起こすような冷たい外気をそのまま室内制気口から吹き出すような計画は当然するべきではない。
※通常の室であればペリメータゾーン(外壁周辺部分)の空調については結露防止対策を考える必要がある。
※ダクトの結露防止(断熱)については別途検討する必要がある。

参考予定>>保温と断熱