ステンレス鋼管の種類

ステンレス鋼管は配管材として様々な規格があり、使用用途や使用箇所によってステンレスの材質や肉厚、接続方法などを選択する必要がある。それらについて記載する。ステンレス鋼管以外の配管材も含む配管材料については以下の別記事を参照。

参考記事

ステンレス鋼管

ステンレス鋼(12%以上のクロムを含む鉄合金)で作られた配管をステンレス鋼管(SUS管)といい、不働態被膜を形成する錆びにくい鋼管である。金属管であるので全くサビないわけではないが、ステン(サビ)がレス(無い)配管として認識されている。

ステンレス配管の規格は、構造用のものや熱伝達用のものもあるが、今回は配管用として使われる以下の4配管種類に絞って記載する。

ステンレス鋼サニタリー管

ステンレス鋼サニタリー管は、衛生管理が重要な食品や薬品などの製造に使用される内面に研磨処理が施された配管であり、TBS管と呼ばれる。通常のステンレス鋼管より汚れが付きにくい形状で、接続方法は液だまりが起きないようにフランジやねじではなく、専用のヘルール継手(サニタリー継手)による接続とする。

一般配管用ステンレス鋼管

一般配管用ステンレス鋼管は、一般的なステンレス鋼管の配管であり、TPD管と呼ばれる。上水を含むの水や、給湯、冷温水や蒸気などの温度変化の大きい配管まで幅広く利用できる。ただし、酸性の廃液などでは廃液の状況やSUS材の種類により腐食が起きる可能性があるため最適とはいえない。薄肉管であるので拡管加工やフレア加工が容易である。日本工業規格でJIS G3448と規格されており、このうち水道用のステンレス鋼管は日本水道協会で水道用ステンレス鋼鋼管としてJWWA G115に規格されている。

配管用ステンレス鋼管

配管用ステンレス鋼管は、一般配管用ステンレス鋼管より厚肉の配管で、TP管と呼ばれる。アーク溶接で製造されたTP管をTPA管シームレス(継ぎ目なし)となるように特殊な製法で製造されたTP管をTPS管といい、さらに高温用(Hot)はTPS-H管、低温用(Cold)はTPS-C管という。現在はTPA管よりTPS管を使用する場合が多い。

水道用ステンレス鋼管の使用圧力は1.0MPa以下で、それ以上の場合は配管用炭素鋼鋼管が使用される。
※一般配管用ステンレス鋼管のJIS規格では、3.5MPaの試験水圧を加えたとき漏れその他の異常を生じてはならないとしているので1.0MPaより大きな使用圧力に耐えられると考えられる。

管に作用する圧力の大きさによりsch5s、sch10s、sch20s、sch40、sch80、sch120、sch160とsch(スケジュール)の大きさが上がっていく。スケジュール番号の後ろにsのついていない「オーステナイト系」のほか、スケジュール番号の後ろにsのついている「スインスケジュール系」があり、スインスケジュールはやや薄肉な規格になる。スケジュール番号は、使用圧力P[MPa]/許容応力S[MPa]×10から決められている。

配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管

配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管は、配管用ステンレス鋼管の大口径の溶接用の配管で、TPY管と呼ばれる。

管に作用する圧力の大きさによりsch5s、sch10s、sch20s、sch40とsch(スケジュール)の大きさが上がっていく。スケジュール番号の後ろにsのついていない「オーステナイト系」のほか、スケジュール番号の後ろにsのついている「スインスケジュール系」があり、スインスケジュールはやや薄肉な規格になる。スケジュール番号は、使用圧力P[MPa]/許容応力S[MPa]×10から決められている。

SUS材の種類

ステンレス鋼は配合材料の種類や割合によってそれぞれ番号を持っておりSUS(番号)で表される。SUS材の番号は何百種類も存在しているが、配管に利用するSUS材の番号は数種類のみになるので、それについて記載する。

ステンレス鋼サニタリー管には、SUS304、SUS316
一般配管用ステンレス鋼管には、SUS304、SUS315J1、SUS315J2、SUS316
配管用ステンレス鋼管と配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管は、様々なSUS材で製造されており、対応SUS材はメーカーにより異なる。

SUS304

SUS304は、鉄にクロム18%、ニッケルを8%添加したオーステナイト系ステンレスである。ステンレスとしては、最も一般的に利用されており、耐食性が高く、耐熱温度も600~700℃程度と高く、加工性も良い。

SUS304Lは、SUS304より炭素が少なく(LowCarbon)で耐粒界腐食性(結晶粒界に沿って進行する局部腐食)を向上させたハイグレード品になる。
SUS304Hは、SUS304より炭素が多く(HighCarbon)でより高温での使用が可能となる。

SUS316

SUS316は、鉄にクロム18%、ニッケル12%、モリブデンを2.5%添加したオーステナイト系ステンレスである。SUS304にモリブテンが添加されたことで加工性が下がり価格が上がるが、耐食性が上がる。酸化土壌に埋設する場合など高い耐食性を求める場所ではSUS304に代えて利用される。

SUS316Lは、SUS316より炭素が少なく(LowCarbon)で耐粒界腐食性(結晶粒界に沿って進行する局部腐食)を向上させたハイグレード品になる。
SUS316Hは、SUS316より炭素が多く(HighCarbon)でより高温での使用が可能となる。
SUS316Tiは、SUS316にチタンを添加し、SUS316Lより耐粒界腐食性を向上させたハイグレード品になる。

SUS315

SUS315は、オーステナイト系ステンレスである。高ケイ素で銅やモリブテンが添加されたことで熱間加工性や耐孔食性が高く、温水中での耐食性に優れるため温水機器などに使われる。

SUS315J1は、鉄にクロム18%、ニッケル9%、ケイ素1.5%、銅2%、モリブテンを1%添加している。
SUS315J2は、鉄にクロム18%、ニッケル12%、ケイ素3%、銅2%、モリブテンを1%添加している。