配管の切断に利用される工具
配管切断に使用する工具は配管材料や施工場所の状況により使い分けることになる。それぞれに見合った工具を使用しないと、単純に配管が切断できないのみならず、作業者に危険が及ぶ可能性が大きくなるので慎重に計画する必要がある。なお、切断工具ごとに切断可能材の範囲が異なっているので、使用用途が適しているかを必ず確認する。
配管切断に利用されるのは、大きく分けて以下の4種類である。これらについて記載する。
- 手動工具
- 刃物(鋸)を電動で往復させる工具
- 刃物(鋸)を電動で回転させる工具
- 溶断機
手動の切断工具類
配管を切断する工具のうち手動のものは、電動機を内蔵しないため小型で小回りの利くものが多い。
電動工具と比較し、動力が無いので刃物が意図しない動きをすることが少なく危険が少ないが、電動のものに比べてかなりの労力がかかる。
パイプソー(配管鋸)は鋸の往復運動によって配管を切断し、パイプカッターは刃物を配管に押し当てることで配管を切断する。
さらにパイプカッターには、ローラーにより配管を固定回転させるホイールタイプと配管を挟み込み切断するハサミタイプがある。
パイプソー
パイプソー(ハンドソー)は、配管用の鋸のことをいう。主に塩ビ管などの柔らかい管に利用するが、刃の種類によっては金属管などの固い管にも利用できる。自分で配管の切断ラインを決定するため、まっすぐ平行に切ることが難しい。
パイプカッター
パイプカッターは、配管用のカッターのことをいう。パイプソーに比べて配管が固定できるため、まっすぐ平行に切りやすい。パイプカッターの形状によって切断可能口径が決まっているため、配管径に合ったパイプカッターが必要になる。主に小口径の配管に利用される。
ハサミタイプ
ハサミタイプのパイプカッターは、配管を挟み込み刃物を押し当てることで配管を切断する工具。力をかけることで配管を一気に切断することが出来る。主に塩ビ管やポリブテン管や架橋ポリエチレン管などの柔らかい管に利用する。
ホイールタイプ
ホイールタイプのパイプカッターは、配管をローラーと刃物で固定し、ローラー(ホイール)を回転させ、反対側についた円形の刃物でパイプを切断していく工具。刃の種類によって柔らかいものから固いものまで切れる。ただし、塩ビライニング鋼管は、パイプカッターで配管を押し込むことで内部の塩ビ材に反りが発生し、継手のコアを破損させてしまう原因になるため利用しない。
電動往復の工具類
電動往復の工具類とは、パイプソー(ハンドソー)の往復運動を電動で行う工具である。パイプソーに比べて大型になるが、手持型の工具であるので天井や壁に施工された配管も切断することが出来る。
電動往復の工具には、刃が横向きについているレジプロソーと、刃が下向きについているジグソーがある。(ただし、ジグソーは平材を自由な形に切断することに長けている工具であるため、配管のような曲面ではジグソーを押し当てることが難しく切断工具としては不向き。建築現場では建築材の切断などで多く用いられている。)
後述する回転鋸なども電動鋸の一種であるが、電動鋸というとレジプロソーを指すことが多い。
レジプロソー
レジプロソー(セーバーソー)は、鋸の往復運動により配管を切断する工具。
パイプソーと同様に、自分で配管の切断ラインを決定するため、まっすぐ平行に切ることが難しい。しかし回転刃物と異なり、刃物の部分が小さく狭い場所でも使えるので改修現場などで多く用いられる。
電動回転の工具類
電動回転の工具類とは、鋸などを電動で回転させる工具である。鋸の方向が一方向であるため断面の仕上がりが良い。電動回転の工具類は、手持型も存在するが、一般には配管加工場に置いて利用する定置型の装置であることが多い。
定置型とは、配管材を装置に固定し上から回転体を下ろして切断するタイプの切断機をいう。回転体を下ろすだけでまっすぐ配管を切断できるので、手持型より安全性が高い。配管を装置の上に置く必要があるため、撤去工事など配管材を装置まで移動できない場合は使用できない。
反対に、手持型は回転体の勢いの反動を作業者が受けてしまうので危険性が高い。よって手持型は危険性を十分に考慮した上で利用する必要がある。
電動回転の工具には、回転鋸が帯状のバンドソー、回転鋸が円状のチップソー、その他に鋸が負けてしまうような固い配管を切断する場合に利用するサンダーなどがある。回転体の種類により回転速度が大きく異なる。
バンドソー
バンドソーとは、帯状(バンド状)の鋸を電動で回転させることで配管を切断する工具。チップソーより回転速度が低速で、火花がほとんど出ない。
塩ビ管や塩ビライニング鋼管、鋼管など幅広い用途に利用することができる。
チップソー
チップソー(メタルソー)とは、円状の鋸を電動で回転させることで配管を切断する工具、または上述の工具の刃の部分に使用する超硬チップのことをいう。丸鋸と形状は似ているが、チップソーは金属切断用の鋸であり、丸鋸とは別物で回転速度が速くや刃の強度が高い。
塩ビ管や塩ビライニング鋼管、鋼管など幅広い用途に利用することができる。回転速度が高速であるため、切断が速く、切断面があまり焼けず切り口がきれいに仕上がる。火花がほとんど出ない。ただし、替刃がかなり高額なので、バンドソーやサンダーで作業できない場面で使うことが多い。
サンダー
サンダー(グラインダー)とは、円状の砥石を電動で回転させることで配管を切断する工具。当初サンダーは研削研磨用の工具であったが、削ることで固い配管も切断可能であったため、切断用途で利用する切断用の砥石が販売されるようになった。ステンレス鋼管のような硬い配管も切断できるが、回転により熱を持つので塩ビ管や塩ビライニング鋼管には向かない。さらに火花が発生するので、火気厳禁の場所は使用できない。
また、砥石の代わりにサンダーの替刃としてダイヤモンドカッターを装着することでコンクリートやレンガなども切断することが出来る。
チップソーや丸鋸と形状が似ているが、チップソーより更に回転速度が速くや高い強度が求められる。そのため、サンダーの替刃としてチップソーを使用すると刃が暴れて大事故の原因になるので禁止されている。
溶断機
溶断とは、熱で金属を切断することをいう。その技術を金属配管の切断に利用するのが溶断機である。前述までの工具類と異なり大型の装置になってしまうので、建築現場においての配管切断方法の一種というより、工場生産の加工管の切断方法の一種である。切断方法によりガス溶断機とプラズマアーク溶断機とがある。熱で金属を接続する溶接と同様に、溶接資格を持った人にしか作業出来ず、火気使用になるので建築現場での溶断作業の危険性については十分な検討が必要。
ガス溶断機
ガス溶断(酸素切断)は、可燃性ガスの燃焼で高温になった鋼材に酸素を供給することで急速な酸化反応を起こすことにより鋼材を切断する溶断方法である。
ガス溶断は、厚みのある鋼材の切断も可能で、他の溶断方法と比較し装置導入費用が安価であるため最も多く利用されている溶断方法である。ただし、母材より融点の高い酸化物を形成するステンレス鋼管やアルミ配管などでは、ガス溶断ができない。
プラズマアーク溶断機
プラズマアーク溶断は、アーク放電によって発生させたプラズマのもつ超高温の熱エネルギーにより鋼材を溶かすことにより鋼材を切断する溶断方法である。
プラズマアーク溶断は、電気のみで切断できるため、ガス溶断と比較し安全で電源さえあればライニングコストが抑えられる傾向にある。ガス溶断にできないステンレス鋼管やアルミ配管など、通電する金属であれば大半の金属に用いることが出来る。