ドレン配管径の決め方
空調機で発生するドレン水を排出する空調用ドレン配管は非圧力配管であり、雑排水や汚水などと同じような計算方法で配管径を求めることができる。
しかし配管径を求めるためには、空調機による除湿量を計算してから雑排水や汚水などの計算方法を利用する必要があり、作業が大変煩雑になってしまう。
そのため、一般的には除湿量を都度計算するのではなく、空調機の能力や台数から想定される除湿量に元にゆとりを持たせた、空調用ドレン配管径の目安値を算出することが一般的である。
各設計・施工業者は一定の根拠をもとに算出した、それを自社のマニュアルとして持っている場合が多い。
以下に、公開されている空調用ドレン配管の配管径の目安値や参考流量を記載する。
なお、空調用ドレンの配管径を算出するのは、空調機のドレンを集めて排水する集合管の場合であり、集合管の配管径は30mm以上(配管径でいうと32A以上)とする。空調機1台でドレンを排出する場合は、空調機の接続管径で排水するのが一般的である。
設備手帳のドレン管径の目安
設備手帳では、空調機やファンコイルの横引枝管の管径を32A~80A、立主管や横引管の管径を50A~80A、機器の枝管を25A以上、ドレン皿を32A~50Aとした上で、横引枝管の管径を以下の表のように記載している。
空調ドレン配管サイズの目安
管径[A] | 空調機の種別 |
---|---|
25 | 空調機1台 |
32 | 空調機2~6台(パッケージ形で小型のもの) |
40 | 空調機7台以上(小~中風量) |
50 | 空調機7台以上(大風量) |
50 | 外調機(小風量) |
65 | 外調機(中~大風量) |
80 | 外調機(大風量) |
※表の形状を一部改変
空衛手帳便覧委員会作成 2020年度版
ドレン排水量と排水負荷単位からのドレン管径の目安
空調機の能力値ごとのドレン排水量の目安値を基に、雑排水や汚水の配管径の決定方法を利用しドレン管径を求める。
今回は、排水負荷単位による配管径の決定方法を利用するため、排水量を負荷単位に変換して管径を求めている。排水負荷単位数2=3.6L/minより、排水負荷単位1=1.8[L/min]としている。
ドレン排水量
室内ユニット1台当たりの最大ドレン排水量(参考値)
空調能力 [kW] |
2.2 | 2.8 | 3.6 | 4.5 | 5.6 | 7.1 | 8.0 | 9.0 | 11.2 | 14.0 | 16.0 | 22.4 | 28.0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ドレン水量 [mL/min] |
80 (+20) |
100 (+20) |
125 (+25) |
160 (+55) |
200 (+55) |
250 (+55) |
280 (+55) |
320 (+55) |
400 (+110) |
500 (+110) |
600 (+110) |
800 (+175) |
1000 (+175) |
注 ( )内は自然蒸発式加湿器組込時に、ドレン配管を共用した場合の増加分。ドレン排水量に加算する。
一般社団法人日本建設業連合会/ダイキン工業 2016.3改訂
上記の表より、空調機能力の合計が50[kW]の時のドレン排水量は
50[kW]=(28+14+8)[kW]=(1000+500+280)[mL/min]=1780[mL/min]=1.78[L/min]と想定される。
排水負荷単位数
排水横枝管及び排水立て管の許容最大器具排水負荷単位数
管径[A] | 受け持ち得る許容最大排水単位数[fud] | |||
---|---|---|---|---|
排水横枝管※1 | 3階建て又は ブランチ間隔3を有する 1立て管 |
3階建てを超える場合 | ||
1立て管に対する合計 | 1階分又は 1ブランチ間隔の合計 |
|||
30 | 1 | 2 | 2 | 1 |
40 | 3 | 4 | 8 | 2 |
50 | 6 | 10 | 24 | 6 |
65 | 12 | 20 | 42 | 9 |
75 | 20 | 30 | 60 | 16 |
100 | 160 | 240 | 500 | 90 |
125 | 360 | 540 | 1,100 | 200 |
150 | 620 | 960 | 1,900 | 350 |
200 | 1,400 | 2,200 | 3,600 | 600 |
250 | 2,500 | 3,800 | 5,600 | 1,000 |
300 | 3,900 | 6,000 | 8,400 | 1,500 |
※1:排水横主管の枝管は含まない。
SHASE-S206-09
ドレン管径
よって、ドレン排水量と排水負荷単位より計算すると、ドレン管径は以下の表のように求められる。
空調機の能力の合計[kW]とドレン管径の参考値
管径[A] | 受け持ち得る空調機能力の合計[kW] | |||
---|---|---|---|---|
排水横枝管※1 | 3階建て又は ブランチ間隔3を有する 1立て管 |
3階建てを超える場合 | ||
1立て管に対する合計 | 1階分又は 1ブランチ間隔の合計 |
|||
32 | 50 | 101 | 101 | 50 |
40 | 151 | 202 | 404 | 101 |
50 | 303 | 505 | 1,213 | 303 |
65 | 606 | 1,011 | 2,123 | 455 |
80 | 1,011 | 1,516 | 3,033 | 808 |
100 | 8,089 | 12,134 | 25,280 | 4,550 |
※1:排水横主管の枝管は含まない。
空調機のドレン排出量は微々たるもので、空調開始時のドレン排出量が最大でそれ以降は徐々にドレン排出量は小さくなるため、もっと小さい管径でも問題ないのではという論争は度々起きる。
しかし、ドレンは流量が少なくても配管内にはドレン水の他に、空調機内のゴミや藻やバクテリア等の雑菌により発生するスライムなども流れるため、小さい管径だとドレンを排出できないことも多く、このように余裕を持った配管径が使われることが一般的である。今回紹介したドレン管径は安全側の管径で選定されており、一般的に利用されているドレン管径から大きく逸脱することは無い。