火を使用する室等の換気計算

火を使用する室等

火を使用する室等とは湯沸室と厨房を指す。

ボイラー室やコージェネレーションシステム(ガスエンジン式)設置室等も火気使用室であるが、
「消防法施行令」の多量の火気を使用する室にあたり別途法規により規制されている。

参考記事

火を使用する室等の換気量の算定

茶本では以下の3つの算定方法による換気量のうち
最も大きい方を換気量として採用することとしている

・厨房等の換気回数による換気量の算定
・機器のガス消費量による換気量の算定
・フード部の面風速による換気量の算定

参考書籍

燃焼器具には原則として排気フードを設置し、排気に乱れが起きないように強い面風速(0.3m/s以上)で排気し
室全体の換気量は、換気回数による換気量とガス消費量による換気量のうち大きいほうを換気量とする

厨房等の換気回数による換気量の算定

換気回数による場合は以下の式より求める。換気回数は以下の表を参考にする。

必要換気量[m3/h]=室容積[m3]×換気回数[回/h]

室別の換気方式

換気種別 室名 換気方式 換気量
自然換気 第一種換気 第二種換気 第三種換気 換気回数
回/h
付属室 便所・洗面所       5~15
ロッカー室・更衣室       5
書庫・倉庫・物品庫     5
コピー室・印刷室       10
シャワー室       5
浴室       5
脱衣室     5
食品庫     5
喫煙室     計算式
火を使用する室 湯沸室     5、計算式
厨房(ガス)       40~60回/h、計算式
厨房(電気)       20回/h以上、計算式
熱源機械室・電気室・ エレベーター機械室・駐車場等 ボイラー室 直だき吸収冷温水機室     計算式
圧縮式冷凍機室     5、計算式
吸収式冷凍機室     5~10
コージェネレーション設置室       計算式
空調・衛生機械室     5
受水タンク室     4
オイルタンク室     5
高圧ガスボンベ室     5
電気室     計算式
配線室(EPS)     4
発電機室     4
エレベーター機械室     計算式
駐車場   10回/h、25m3/hm2

建築設備設計基準:平成30年度版

※駐車場の値は「駐車場法施行令の一部を改正する政令(平成28年)」にて自動車の環境性能が向上したこと等から10回/h、25m3/m2hから現状の規定14m3/m2hに改正されている。

例題
 
問題

室容積100m3の厨房に、IH調理器等の電気器具を設置する場合の換気量を換気回数から求める。

解答

電気を使用する厨房の換気回数は20回/h以上より、
必要換気量[m3/h]=室容積[m3]×換気回数[回/h]=100m3×20回/h=2000m3/h

機器のガス消費量による換気量の算定

機器のガス消費量による場合は以下の式より求める。定数は以下の表を参考にする。

必要換気量[m3/h]=定数×理論燃焼ガス量[m3/kg]×燃料消費量[kg/h]=nKQまたは
必要換気量[m3/h]=定数×理論燃焼ガス量[m3/kWh]×発熱量[kW]=nKQ

ここの、n=定数(2、20、30、40)は換気設備の形状により決まる。

換気扇排気 直接外気開放 V=40kQ
排気筒直結 V=40kQ
換気扇付煙突排気 V=2kQ
換気扇付排気筒排気 排気フードⅡ型(廃気捕集率50%) V=20kQ
排気フードⅠ型(廃気捕集率25%) V=30kQ

※厨房内に複数器具がある場合は必要換気量はそれらの合計値を利用する。
※この必要換気量は「建築基準法施行令(第20条の3)」によって国土交通大臣が定める数値以上とすると定められている。
※茶本では電気厨房器具の場合、機器の電気容量による場合は、必要換気量[m3/h]=30×定格消費電力[kW]にて求めるとしている。

付室・施設室の換気方法など

室名 換気の時に考慮すべき要因 換気方式 換気回数
臭気 湿気 有害ガス 燃焼ガス 酸素供給 第一種 第二種 第三種 回/h
便所・洗面所           ×   5~15
更衣室           ×   5
書庫・倉庫       ×   5
コピー室       ×   10
シャワー室             ×   5
浴室           ×   5~15
台所     ○ ※2   ×   40KQ(排気フード無し)
30KQ(I型排気フード)
湯沸し室     ○ ※2   ×   40KQ(排気フード無し)
30KQ(I型排気フード)

(注)○:特に考慮すべき要因 ×:一般的には採用されない方式
※1:KQは理論燃焼ガス量(m3/h)。理論排ガス量ともいう。燃料の種別で異なる。
※2:ガス燃焼器具の場合、要因となる。

SHASE-S102-11

例題
厨房の換気計算の例題
問題

図のような厨房室においての換気量をガス消費量より求める。使用ガスはLPガスとする。
発熱量の合計が10kWのガスコンロには、排気フード(1型)を設置し、
発熱量の合計が20kWのその他機器類は、排気用換気扇から排気される。

解答

LPガスの理論燃焼ガス量は、0.93m3/kWh
ガスコンロは、換気設備が排気フードⅠ型なので定数は30より
必要換気量[m3/h]=定数×理論燃焼ガス量[m3/kWh]×発熱量[kW]=30×0.93×10=279m3/h
その他機器類は、換気設備が換気扇なので定数は40より
必要換気量[m3/h]=定数×理論燃焼ガス量[m3/kWh]×発熱量[kW]==40×0.93×20=744m3/h

よって必要換気量の合計は、279+744=1023≒1030m3/h

参考

理論廃ガス量

燃料の種類 理論廃ガス量
都市ガス12A 0.93m³/kWh
都市ガス13A
都市ガス5C
都市ガス6B
ブタンエアガス
LPガス(プロパン主体) 0.93m³/kWh(12.9 m³/kg)
灯油 12.1m³/kg

フード部の面風速による換気量の算定

フード部の面風速による場合は、フードの面風速が0.3m/s以上になる換気量を求める。

必要換気量[m3/h]=フード面積[m2]×0.3[m/s]×3600[m3/h]

※実際の換気量には作業形態、設置場所等を考慮した安全率を加える。
※基本的には排気フードの開口面積が大きいため、この換気量が3つの換気量の中で最も大きくなる。
※換気量を少なくする手段として整流板を利用して開口面積を小さくする等が考えられる。

例題
 
問題

排気フードの開口寸法がW1000×D600の場合の換気量をフード部の面風速により求める。

解答

必要換気量[m3/h]=フード面積[m2]×0.3[m/s]×3600[m3/h]=1.0m×0.6m×0.3×3600=648≒650m3/h

補足

局所排気の目的には、汚染物質の拡大の防止必要換気量を少なくすることにある。
フードによって局所排気することで、汚染空気の発生源から近い場所で高濃度に排気できるので、全体換気より換気量を少なくすることができる。
なお、面風速が低ければフードによる排気が出来ないことになるため、局所排気においては面風速が重要視される。

局所排気のイメージ図

局所排気と全体排気の違い、全体排気イメージ
局所排気と全体排気の違い、局所排気イメージ