熱や湿気、汚染物における換気量
換気の目的は、室外からクリーンな空気(外気)を取り入れ、室内のダーティな空気を取り除き、汚染物質の濃度を下げることにある。室内外の汚染物質の濃度が判れば、計算により必要な換気量を求めることができる。
なお、一人当たりの必要換気量や換気回数は、この計算式を根拠として求められている。
一人当たりの必要換気量や換気回数などで一般化することが難しい、大きな熱が発生する場合や汚染物質が発生する場合などは以下の式から換気量を計算する必要がある。
汚染物質濃度における換気量
汚染物質である、臭気や有害ガス(一酸化炭素、二酸化炭素など)や有害物(粉じんなど)が発生する場合は、ザイデルの定常状態の換気量式により
必要換気量[m3/h]=室内発生汚染物質量[m3/h]/内外汚染物質含有濃度差
より求めることができる。
※内外汚染物質含有濃度差=汚染物質許容濃度-給気の汚染物質含有濃度
※定常状態とは、室内汚染物の発生量が一定で室全体の濃度差がない状態
10人の在室者のいる居室の必要換気量を二酸化炭素濃度から求める
一人当たりの二酸化炭素発生量を0.013m3/h人、二酸化炭素の許容濃度0.1%、外気の二酸化炭素の濃度0.03%とすると、
室内発生汚染物質量は
10人×0.013[m3/h人]=0.13[m3/h]
よって、必要換気量は
室内発生汚染物質量[m3/h]/内外汚染物質含有濃度差=0.13/(0.001−0.0003)≒186[m3/h]
単位がppmは、汚染物質含有量が空気量の100万分の1であることを示しているので、
1ppm=0.0001%と換算して計算する。
室内空気汚染の設計基準濃度
汚染質 | 設計基準濃度 | 備考 |
---|---|---|
二酸化炭素 | 1000ppm (0.1%) | 建築物衛生法の基準を参考にした。(総合指標としての設計基準濃度) |
一酸化炭素 | 10ppm (0.001%) | 建築物衛生法の基準を参考とした。 |
浮遊粉塵 | 0.15mg/m3 | 同上 |
二酸化窒素 | 0.2mg/m3 (105ppb) | WHO(世界保健機関)の1時間基準値を参考とした。 |
二酸化硫黄 | 0.35mg/m3 (130ppb) | 同上 |
ホルムアルデヒド | 0.1mg/m3 (80ppb) | 厚生労働省の30分基準値を参考とした。 |
SHASE-S102-11
熱(温度)における換気量
熱が発生する場合も同様に、ザイデルの定常状態の換気量式により
必要換気量[m3/h]=室内発生顕熱量[W]/(0.33×内外温度差[K])
より求めることができる。
※0.33は換算と定数の合算値
1[W]=1[J/s]=3600[J/h]=3.6[kJ/h]
必要換気量[m3/h]=室内発生顕熱量[kJ/h]/(比熱[kJ/kgK]×密度[kg/m3]×内外温度差[K])
=室内発生顕熱量[W]×3.6/(1.0×1.2×内外温度差)
=室内発生顕熱量[W]/(0.33×内外温度差)
※顕熱量とは、熱量全体(全熱)のうち温度変化に関わる熱量のこと
※内外温度差[℃]=室内許容温度-導入外気温度
豚が30頭いる畜舎の必要換気量を顕熱負荷から求める。
夏期外気設計温度を30℃、畜舎許容温度を35℃、畜舎の構造体負荷を5000W、豚の顕熱量を100W/頭とする。
室内発生顕熱量は
畜舎の構造体負荷+豚の顕熱量=5000+100×30頭=8000[W]
よって必要換気量は
室内発生顕熱量[W]/(0.33×内外温度差[K])=8000/(0.33×(35-30))≒4850[m3/h]
※畜舎の場合は、熱における必要換気量と汚染物質濃度における必要換気量とを比較検討し換気量を決定する必要がある。
湿気(湿度)における換気量
湿気が発生する場合も同様に、ザイデルの定常状態の換気量式により
必要換気量[m3/h]=室内発生潜熱量[W]/(833×内外絶対湿度差[kg/kg])
より求めることができる。
※833は換算と定数の合算
必要換気量の式と室内発生潜熱量※の式より
必要換気量[m3/h]=水蒸気発生量[kg/h]/(密度[kg/m3]×内外絶対湿度差[kg/kg])
=(熱量[kJ/h]/水の蒸発潜熱[KJ/kg])/(密度[kg/m3]×内外絶対湿度差[kg/kg])
=(熱量[W]×3.6/2500)/(1.2×内外絶対湿度差)
=熱量[W]/(833×内外絶対湿度差[kg/kg])
※室内発生潜熱量[kJ/h]=水の蒸発潜熱[kJ/kg]×水蒸気発生量[kg/h]
※潜熱量とは、熱量全体(全熱)のうち空気中の水分の状態変化に関わる熱量のこと
※内外絶対湿度差[kg/kg]=室内許容絶対湿度-導入外気絶対湿度
全熱における換気量
温度による熱量の変化を顕熱変化、湿度による熱量の変化を潜熱変化といい、顕熱と潜熱を合わせて全熱という。熱と湿気が発生する場合も、ザイデルの定常状態の換気量式により
必要換気量[m3/h]=室内発生全熱量[W]/(0.33×内外比エンタルピー差[kJ/kg])
より求めることができる。
※0.33は換算と定数の合算値
1[W]=1[J/s]=3600[J/h]=3.6[kJ/h]
必要換気量[m3/h]=室内発生顕熱量[kJ/h]/(密度[kg/m3]×内外比エンタルピー差[kJ/kg])
=室内発生顕熱量[W]×3.6/(1.2×内外比エンタルピー差)
=室内発生顕熱量[W]/(0.33×内外比エンタルピー差)
※内外比エンタルピー差[℃]=室内許容比エンタルピー-導入外気比エンタルピー