ポリエチレン管の種類

ポリエチレン管は、耐寒性が高く、耐久性と耐震性に優れた合成樹脂系の配管の一種である。軽量で施工性が高く、耐圧・耐衝撃性が高いため、埋設配管に多く利用されている。浅層埋設や車道下埋設にも利用が可能である。
ポリエチレン管は、使用用途によって異なる規格体系の配管種であるため、各規格について以下に記載する。 なお、架橋ポリエチレン管については合成樹脂管の可とう管の一種としてまとめているので別記事を参照。

ポリエチレン管の特徴

寸法体系

ポリエチレン管には、外径寸法がISO規格(国際標準化機構)のものとJIS規格(日本工業規格)のものとの2種類がある。同じ材質で同じ色の配管であっても、配管径が違うので混在して使用することは出来ない。(ISO-JISの変換継手等を使用する場合はこの限りではない。)

参考

ISO外径とJIS外径の比較

ポリエチレン管名 呼び径 13A 20A 25A 30A 40A 50A 75A 100A 125A 150A 200A 250A 300A
水道配水用ポリエチレン管
(ISO外径寸法)
規格名 JWWA K144/K145(継手) PTC K03/K13(継手)
外径 (25) (32) (40) (50) 63 90 125 180 250 315 355
建築設備用ポリエチレン管
(JIS外径寸法)
規格名 PWA005/006(継手)
外径 (21.5) 27 34 42 48 60 89 114 140 165 216 (267) (318)

備考:()内は、別のポリエチレン管種ではサイズ展開が有るが、表記載のポリエチレン管種においては規格が無いものを示す。

密度による分類

ポリエチレン管は密度によって低密度・中密度・高密度に分類される。密度が高いほど剛性・強度が高くなるが、耐衝撃性や伸びなどの延性が小さくなってしまう。現在は高強度でありながら延性も改善されたHPPEが広く普及している。
PEの横に付いた数値は等級を示し、PE50は引張強度5MPa以上、PE80は引張強度8MPa以上、PE100は引張強度10MPa以上を意味する。

PE分類 密度 名称 主な配管種 備考
LDPE 低密度ポリエチレン 現在は規格配管材なし  
LLDPE 直鎖状低密度ポリエチレン (PE50)水道用ポリエチレン二層管1種 LPDEの剛性・強度などを改良
MDPE 中密度ポリエチレン (PE80)ガス用ポリエチレン管  
HDPE 高密度ポリエチレン (PE80)水道用ポリエチレン二層管3種  
HPPE 第三世代高密度ポリエチレン (PE100)水道配水用ポリエチレン管 HDPEの耐震性などを改良

標準寸法比(SDR)

標準寸法比(SDR)は、標準外径/最小肉厚の値であり、耐圧の評価に用いられる。SDR値が高いほど、最小肉厚が外径に比例し減少しているため、パイプの耐圧は低くなる。
SDRの区分はSDR7.4SDR11SDR13.6SDR17SDR21SDR26SDR33がある。(SDRの計算値はこの数値の前後の数値を示し、同じSDR区分でも配管種によってはSDRの計算値に多少の差違がある。)

ポリエチレン管の配管種類

給水用ポリエチレン管

水道配水用ポリエチレン管

水道配水用ポリエチレン管は、上水道に用いられる青色の単層管で、公共上水道など配水管(水路)で利用することを想定しているので大口径用の配管・継手が充実している。
日本水道協会規格のJWWA K144と配水用ポリエチレンパイプシステム協会(POLITEC)のPTC K03に規格されている。SDR11、ISO外径寸法、HPPE・PE100である。

建築設備用ポリエチレン管

建築設備用ポリエチレン管は、給水管に用いられる青色の単層管で、建物の給水配管で利用することを想定しているので小口径の配管・継手が充実している。
建築設備用ポリエチレンパイプシステム研究会規格のPWA005に規格されている。SDR11、JIS外径寸法、HPPE・PE100である。 PWAの会員の建築設備用ポリエチレン管は現在、積水化学工業のエスロハイパーAWのみである。

水道用ポリエチレン二層管

水道用ポリエチレン二層管は、水道用途に用いられる外層黒・内層灰色の二層管で、カーボンブラック配合の外層によって耐候性が向上し低温環境に強くなる。内層は水道管のため耐塩素性が高い材質を利用している。
JIS K6742に規格されている。 水道用ポリエチレン二層管には1種・2種・3種があり、1種は軟質PE50(LLDPE)・SDR7.4、2種は硬質PE80(HDPE)・SDR11でどちらもJIS外径寸法で、3種はISO外径寸法でPE63、PE80、PE100・SDR11である。

給水用ポリエチレン管は同じ色・同じ材料でも違った寸法体系の配管が多々ありやや煩雑であるため以下の表にまとめた。

備考

水道用ポリエチレン単層管

過去1959年~1980年頃までの給水管のJIS K6762規格は水道用ポリエチレン単層管という黒色のPE管であった。水道用ポリエチレン単層管には1種管(LDPE・PE32・SDR7.4)と2種管(HDPE・PE63・SDR13.6)があり、1種管では水泡剥離事故、2種管では亀裂漏水事故等が発生したため、現在は管を二重構造とし、密度を改良した水道用ポリエチレン二層管がJIS K6762規格となっている。

水道配水用
ポリエチレン管
水道給水用
ポリエチレン管
建築設備用
ポリエチレン管
水道給水用
ポリエチレン管
水道給水用
ポリエチレン管
水道用ポリエチレン
二層管(1種)
水道用ポリエチレン
二層管(2種)
水道用ポリエチレン
二層管(3種)
管の色 黒+灰色 黒+灰色 黒+灰色 黒+灰色
外径寸法 ISO寸法 JIS寸法 ISO寸法 JIS寸法 JIS寸法 JIS寸法 JIS寸法 ISO寸法
使用材料 HPPE、PE100 HPPE、PE100 HPPE、PE100 HPPE、PE100 HPPE、PE100 LLDPE、PE50 HDPE、PE80 PE63、PE80、PE100
SDR=
標準外径/最小肉厚
SDR=11(10~11) SDR=11(8~11) SDR=11(9~11) SDR=7.4(6.8~7.4) SDR=7.4(6.8~7.4) SDR=7.4(6.8~7.4) SDR=11(9~12) SDR=11
規格 JWWA K144、PTC K003 PWA 005 JWWA K144、PTC K003、JP K001 JP K001 JP K002 JIS K6762 JIS K6762 JIS K6762
対応メーカー 積水化学工業:エスロハイパーJW
クボタケミックス:水道配水用ポリエチレン管
積水化学工業:エスロハイパーAW クボタケミックス:建築設備用ポリエチレン管 クボタケミックス:
水道給水用高密度ポリエチレン管(1種管ブルー)
クボタケミックス:
水道給水用高密度ポリエチレン管(1種管二層管)
イノアック住環境、弥栄化学工業、
日本プラスチック工業など
イノアック住環境(受注生産)、弥栄化学工業など イノアック住環境、クボタケミックスなど

下水道用ポリエチレン管

下水道用ポリエチレン管は、下水道に用いられる配管で、工場廃水や硫化水素に対しての耐食性をもった水色の単層管である。
日本下水道協会規格のJSWAS K-14に規格されている。SDR13.6、ISO外径寸法(50AのみJIS外径寸法有)、PE100である。

一般用ポリエチレン管

一般用ポリエチレン管は、主に塩素を含まない水輸送配管(工業用水・農業用水など)に用いられる黒色の単層管である。水道水には使用できない。
JIS K6741に規格されている。 一般用ポリエチレン管には1種・2種・3種があり、1種は軟質PE50(LLDPE)・SDR7.4、2種は硬質PE80(HDPE)・SDR11でどちらもJIS外径寸法で、3種はISO外径寸法でPE63、PE80、PE100・SDR11である。

プラント用ポリエチレン管

プラント用ポリエチレン管(高圧用ポリエチレン管)は、一般用ポリエチレン管より各種耐久性能を高めた黒色の単層管である。 屋外使用が可能なように耐侯性を高めたものや圧送管での使用に適するように耐圧性を高めたもの、プラント関係で利用できるように耐薬品性を高めたものなどがある。
規格体系は一般用ポリエチレン管と同規格のものやメーカー規格のものなど存在する。

消火用ポリエチレン管

消火用ポリエチレン管は、消火の配管に用いられる青色の単層管である。 適用範囲は消火用ポリエチレン管の認定によって範囲が異なるため、各メーカーの適用消火設備の範囲を確認が必要である。
日本消防設備安全センターの認定品であり、消火用ポリエチレン管はクボタケミックスでJP K004、積水化学工業でPWA008で規格されている。どちらもSDR11、PE100である。 鋼製の配管を地下に設置する場合には、漏水検知器等により漏水の有無を確認する必要があるが、 消火設備用ポリエチレン管を地下に埋設する場合は、その必要がないこととしている。

ガス用ポリエチレン管

ガス用ポリエチレン管は、都市ガス及び液化石油ガスの供給に用いられる黄色の単層管である。
一般社団法人日本ガス協会(JGA)の認定品であり、JIS K6774で規格されている。 SDR11、JIS外径寸法、PE80・PE100である。