コンプレッサーの能力計算

圧縮空気を生成するコンプレッサーにおいては、能力やシステムフローについて使用用途や状況、各装置ごとの使用時間などを綿密に計画調査をおこない、過剰とならない経済的な能力を算定していくことが重要になる。

コンプレッサーの吐出空気量

気体流量は、圧力や温度によって大きく変動してしまうため、実流量ではなく標準大気圧下(1atm)での換算流量で表示されるのが一般的である。圧縮空気の空気量表示では、大気圧下で温湿度条件の異なる基準値が存在しているので、仕様書などに記載されている流量がどの状態でのものなのかを把握する必要がある。また、標準状態には必ず単位の前にN(ノルマル)の表記があるが、基準状態は単位に表示を付けない場合もあるので注意が必要である。

状態名 L/minでの表記方法 用途 空気条件 標準状態→基準状態
への掛け率(n)
標準状態 NL/min または L/min (ntp) JIS基準値、ノルマル 1atm   0℃   0% 1.000
基準状態 SL/min または L/min (stp) JIS基準値、スタンダード 1atm 20℃   0% 1.073
L/min (ANR) コンプレッサーで主に利用される基準値 1atm 20℃ 65% 1.090
参考:コベルココンプレッサーの基準値 1atm 30℃ 75% 1.146

温度や湿度が大きくなると空気量も大きくなる。上表の標準状態→基準状態への掛け率(n)より、100NL/minをANR表記に換算するとおよそ100NL/min×1.090=109L/min(ANR)になる。反対に100L/min(ANR)をノルマル表記に換算するとおよ100L/min(ANR)×1/1.090≒91.7NL/minになる。掛け率nは以下の式で求められる。

n = T1/T0×P0/(P0-Pv)

T0:標準状態の温度[K]  273.15(=0℃)
T1:換算後の温度[K]   T1=t1[℃]+273.15
P0:標準大気圧[kPa(abs)] 101.325(=0kPa(G)※、1atm)
Pv:水蒸気分圧[kPa]   Pv=飽和水蒸気圧×相対湿度[%]/100%

水蒸気分圧については湿り空気線図より求めることが出来る。湿り空気線図については別記事を参照。

参考記事

前述のとおり、圧縮空気の吐出空気量は標準大気圧での空気量を表示しているので実流量はそれより圧縮されている。圧縮率は標準大気圧/吐出圧力となり、例えば吐出圧力0.7MPaの吐出空気量が6m3/minと表示されている場合、標準大気圧は1013.25hPa≒0.1MPaより、実流量はおおよそ1/8(=0.1MPa/(0.7+0.1)MPa)に圧縮されている。よって6m3/min×1/8=0.75m3/min(750L/min)が実流量となる。

温度・湿度・圧力の換算をまとめると以下の式になる。

Q1 = Q0× T1/T0×P0/(P0-Pv)×P0/P1

 Q0:標準状態での流量
 Q1:吐出流量
 P0:標準大気圧
 P1:吐出圧力(abs)

式補足:T1/T0 が温度、P0/(P0-Pv)が湿度、P0/P1が圧力の換算になる。
    湿度変化による影響値は小さいので省略して計算してもおよそ差し支えない。

参考
ゲージ圧(G)と絶対圧力(abs)
 

圧縮空気の圧力表示では、特に断りが無ければゲージ圧で表示される。ゲージ圧は、標準大気圧(1atm)を基準とする圧力で、1atm=0Pa(G)と表示する。絶対圧力は完全な真空状態を基準とする圧力で、1atm=101325pa(abs)と表示する。ゲージ圧(G)と絶対圧力(abs)の表示は省略されることがあるので注意が必要である。

コンプレッサーの必要能力

コンプレッサーの能力は、目安として10馬力(7457W=約7.5kW)あたり0.6MPaの圧縮空気を1.0m3/min生成できる程度の能力である。同じコンプレッサーにおいて吐出圧力が大きくなると生成できる圧縮空気の流量は小さくなる。

コンプレッサーの流量

コンプレッサーの流量は、コンプレッサーが担うエアツールや装置の空気消費量より決定する。衛生器具と同様に、器具数による同時使用率が提示されているが、衛生器具と異なり各装置ごとに使用状況は大きく異なると考えられるため、エアツールや装置の使用方法や使用時間などを把握し、同時使用率という考えを取り入れて問題ないか、あるいは連続運転として見込むべきかは慎重に検討する必要がある。

また、圧縮空気は水物配管と異なり配管継手やカプラー、レギュレーターなどからエアリーク(空気漏れ、ロス)が発生しやすく、発見もされにくい。よって多少のエアリークを見込んだ流量とする必要がある。エアリークは全体の15%程度あるものとして、10~20%の余裕をもたせて選定するのが一般的である。

同時稼動係数(K)

総台数 1~5 6~10 11~20 21~30 31~50 51~100
同時稼動係数 1 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4

コンプレッサーの圧力

コンプレッサーの圧力は、コンプレッサーが担うエアツールや装置の必要圧力より決定する。コンプレッサーから各装置までを繋ぐ配管内で圧力損失が発生するためその分を見込んだ圧力とする必要がある。適切な配管径である場合、配管長がよっぽど長い場合を除き(100m以下)、圧力損失は10%以下に納まる程度であると考えられるが、装置接続でのチューブなどの内径が適正管径より小さくなることは珍しくないため、余裕をもって10~15%程度の圧損を見込むのが一般的である。

参考予定:エアフロー全体について考える例題は別記事に