クーリングタワー(冷却塔)の仕組み

クーリングタワー(冷却塔)は、循環する冷水の排熱を大気へ放出し冷却水の熱を逃がす装置のことで、熱交換器の一種である。
通風により循環水の一部を蒸発させてその蒸発潜熱で冷却水を冷やしている。

※ここでいう循環水とは、開放式冷却塔では冷却水で、密閉式冷却塔では散布水のことである。開放式や密閉式については、下記の冷却塔の種類を参照。

チラーとクーリングタワーの違い

チラー(冷凍機)もクーリングタワー(冷却塔)も冷水を冷やす装置になるが、チラーは能動的に冷水を冷やす装置で、クーリングタワーは受動的に冷水を冷やす装置になる。
チラーは動力源として、圧縮式であれば電気やガス、吸収式であれば蒸気や排熱などを利用しており、外気温度の影響はあまり受けない。しかし、クーリングタワーは、動力を持たないで通風により排熱するものなので、外気温度の影響を大きく受けて、冷水を外気温より大幅に低い温度にすることはできない。(クーリングタワー本体の動力では無いが、送風機に電力が必要なので、クーリングタワーに電源が不要というわけではない。)

参考記事

なお、チラーもクーリングタワーも冷水を冷やす設備であるが、配管名称は区分のため別になる。クーリングタワーで冷やされる水は冷却水、チラーで冷やされる水は冷水と呼ばれる。以下の図は名称説明のためのイメージ図であり、冷水配管の往き還りの温度は標準的な値を使用し、ポンプや水槽などは省略している。

冷水と冷却水の往管と還管

水冷式と空冷式

水冷式チラーを設置する場合には、クーリングタワーを用いた冷却水回路が必要となる。チラーには水冷式と空冷式があり、水冷式チラーはチラーの冷却を冷却水によって行うものをいう。チラーが発生する排熱を、配管によって外部に送ることができるため屋内にも設置できる。

水冷式チラー

空冷式チラーはチラーの冷却を外気(チラー周囲の空気)によって行うものをいう。クーリングタワーを用いた冷却水回路が不要になるため、その手軽さから多くの場面で利用されているが、屋内設置とする場合は排熱の排気計画が必要になり、屋外設置であっても排熱の排出のためのチラー設置の間隔を保つ必要があるなど一定の制限が発生する。

空冷式チラー

冷却塔の種類

冷却塔には、送風機を用いない自然通風型と送風機を用いる強制通風型がある。強制通風型は送風機を用いるので、自然通風型に比べて運転費がかかるが、塔体をコンパクトに出来て設置費が低くなる。
以下では空調や冷凍の分野で一般的に用いられる、強制通風型の種類について説明する。

開放式の冷却塔

開放式冷却塔は、冷却水を通風空気と直接交わらせ、冷却水を蒸発潜熱により熱交換する。
冷却水は冷却塔内の充填材に通し細かい粒子となり蒸発が起こりやすくなっている。

開放式冷却塔は、形状により直交流型と向流型がある。
直交流型は、垂直下向きに落下した冷却水に、水平方向に導入した通風空気を交わらせるたもので、向流型は、垂直下向きに落下した冷却水に、垂直上向きに導入した通風空気を交わらせたものである。 

開放式冷却塔の向流の冷却サイクル
開放式冷却塔の直交流の冷却サイクル

密閉式の冷却塔

密閉式冷却塔は、散布水を通風空気と交わらせ、散布水の蒸発潜熱により伝熱管内に通した冷却水と熱交換する。
冷却水を通風空気が直接交わらず、間接的に熱交換ができる。

密閉式冷却塔は、間接冷却であるので冷水の水質を良好に保てるが、散布水の保有水量が少ないため、開放式冷却塔の冷却水より不純物の濃縮が激しいのでシビアな水質管理が必要である。さらに運転費や設備費が開放式冷却塔に比べて高くなる。

密閉式冷却塔の冷却サイクル

冷却塔の冬期運転

冷却塔は夏期の冷房運転に利用するのが一般的な装置であるが、冷却塔の冬期の運転は負荷の使用方法によって計画する必要がある。
なお、冬期は夏期より冷却水が低い温度になるので、冬期にも利用する場合は使用環境によっては、冷却水を水ではなく不凍液(ブライン)とする必要がある。不凍液を循環水とする場合、蒸発によって循環水が減ってしまうと補給が難しいので開放式冷却塔では使用できない

冬期の冷却塔は、ヒーター等の別機器を利用し運転停止とするか、暖房用にヒーティングタワーとするか、年間冷房用にフリークーリングとするか、のどれかになるので以下に記載する。

冷却塔の冬期運転停止

夏期の冷房運転時にチラーや冷却塔を利用し、冬期の暖房運転時はヒーターなどを利用する場合は、冷却塔は冬期は運転停止状態とする。
冬期の冷却塔は、運転停止が最も一般的である。

ヒーティングタワー(加熱塔)

圧縮式のチラーの暖房運転は、冷房運転の反対の働きをする。
そのため、冷却塔でも暖房運転時は反対の働きをしてヒーティングタワー(加熱塔)として使う必要がある。
冷房運転時は冷却塔として大気へ熱を放出し、暖房運転時は加熱塔として大気から熱を吸収する。

なお、暖房運転の場合は、使用環境にもよるがデフロスト運転のような冬期特有の動作が必要になるため、加熱塔として利用できる冷却塔を選定する必要がある。

加熱塔のヒーティングタワーの冷水と冷却水

冷却塔のフリークーリング

冬期は冷却水の温度が低くなるため、チラーのような熱源を用いなくても、冷却塔のみで冷水としての働きをすることができる。
そのため、チラーを介さず冷却塔を負荷などにつなぐフリークーリング方式を取ることができる。

年間冷房運転の場合ではこのようなフリークーリングとすることが多い。
フリークーリングは年間を通して冷却塔が運転するため、水質管理のために密閉式冷却塔とすることが一般的である。

フリークーリング方式の冷水と冷却水