空調用ダンパーの種類と使用場所

ダンパーとは、ダクト経路内に可動する板(羽根)を設けて空気の流れを調節する装置をいう。羽根を回転させることで断面積を変化させ空気の流れを抑制または遮断する。
低圧ダクトで使用されることを前提としているので、高圧ダクトであれば高圧(特殊)仕様とする必要がある。

空調ダンパーには、ボリュームダンパー(VD)モーターダンパー(MD)チャッキダンパー(CD)がある。

※ダクトに設ける機器ではないが、空調用ダンパーにはこれらの他に、クリーンルーム等の陽圧室の部屋内圧を一定に保つリリーフダンパー(別名:陽圧ダンパー、差圧ダンパー)もある。

ボリュームダンパー(VD)

ボリュームダンパーとは、ダクト内を流れる空気量を手動で操作し調整するダンパーのこと。

ボリュームダンパーの種類

ウォームギア式…国土交通省「機械設備工事監理指針」に指定されている、いわゆる国交省標準仕様のダンパー。ハンドルを回転させギアを動かし羽根を開閉する。

レバー式…ウォームギア式に比べて安価なダンパー。レバーを動かし羽根を開閉する。

スライド式…羽根がスライドし、全開時にはケーシング内に羽根が残らないダンパー。羽根があることで滞留箇所ができることを嫌う集塵ダクトなどに利用される。

エアシリンダー式…エアによりスイッチングし瞬時に開閉するダンパー。エアによるスイッチングのため防爆仕様で、モーターダンパーのように使用できる。

※防爆仕様…可燃性のガスの引火点とならないように対策された機器仕様のこと。可燃性のガスが充満する危険性の高い場所で、通常の電気設備を利用すると電気が引火点となり爆発するおそれがあるので、このような場所では防爆仕様の機器が利用される。

ワイヤー式…ワイヤーで下部から遠隔操作できるダンパー。工場などの露出ダクトで高所のダクトに利用される。

ボリュームダンパーの必要箇所

ボリュームダンパーは風量調整が必要な箇所に取り付ける。
ただし、末端側の吹出口や吸込口のシャッター部分(無い場合はボリュームダンパーの取付必要)のみで風量調整しようとすると金切音の発生原因になるので、根本側のファンや空調機で風量調整することが重要になる。

ファンにつけるボリュームダンパーはファンの吸込側(デリベリ側)につける。ファンの吹出側(サクション側)につけると、高圧で安定していない空気が吐出されているため、ダンパーに過大な負荷がかかってしまう。

なお、小型ファンであればメンテナンス性などの理由から吹出側に取り付けることもある。
天井扇などの分岐もなく静圧も小さいファンは、ダンパーによる圧力損失が機外静圧に対して過大になるためボリュームダンパーが省略されることが多い。

給気ファンと排気ファンのボリュームダンパー

ファンの送風が各所に分岐する場合などは、分岐系統ごとにボリュームダンパーをつける。

分岐系統のボリュームダンパー

全熱交換器内のファンの場合は、給気と排気の圧力損失差が多くなければ風量比(排気風量/給気風量)が大きく変わることはないので、排気ファンのボリュームダンパーは省略され、給気側のみに設置することが多い。

全熱交換器のボリュームダンパー

モーターダンパー(MD)

モーターダンパーとは、ダクト内を流れる空気量を自動制御と連動して自動で操作し調整するダンパーのこと。

電動モーター(ダンパモータ)を取り付けるための回転軸(シャフト)が付いている。モーターには、ON/OFF制御の2位置制御と回転角度が段階的に変更可能な比例制御がある。比例制御には非通電時にOFFするスプリングリターン形もある。

モーターダンパーは基本的にはボリュームダンパーと同様の使用方法になるが、温度計や湿度計などから得た情報をもとに自動で制御(調整)するため、風量制御装置の構成部品など様々な機器や器具に使用されている。

参考記事

チャッキダンパー(CD)

チャッキダンパーとは、一方向からの空気は流し、反対方向からの空気を防止することで逆流は防ぐダンパーのこと。

チャッキダンパーの種類

バランサウエイト付き…国土交通省「機械設備工事監理指針」に指定されている、いわゆる国交省標準仕様のダンパー。風速が変わる度に起きるチャッキダンパーの開閉をバランサウエイト(釣合錘)で軽減し圧力損失を減らす。

自重式(バランサウエイト無)…バランサウエイト付きに比べて安価なダンパー。風が通る度に羽根がパカパカと開閉する。

チャッキダンパーの必要箇所

ファン停止時などに風が逆流する可能性がある箇所に取り付ける。

他系統のファンと同一のガラリから分岐している場合は、チャッキダンパーを取り付けないと他系統のファンの停止時に他系統の吹出口から空気を吸込んでしまう。

ガラリボックスのチャッキダンパー

空調機の外気系統と還気系統がチャンバーボックスで合流する場合は、チャッキダンパーを取り付けないと取入れ風量の変動などによる風の逆流が考えられる。

空調機のチャンバーボックスとチャッキダンパー

つまり、複数系統が同じ場所につながっている場合は逆流の恐れがあるためチャッキダンパーを設置する。
天井扇などはファン停止時に閉じるシャッター(風圧シャッター等)が付いているためチャッキダンパーは不要となる。

そのほか、機械換気で空気の流れを一方向に限定したい場合のパスダクトなどにも取り付ける。

空気の流れとチャッキダンパー