吹出口や吸込口のサイズの求め方
吹出口や吸込口(以下:給排気口)の大きさは、以下の条件を満たすように定める必要がある。
吸込口の場合は、1個当たりの風量を決定し、その時の騒音の確認をする必要がある。
なお、吸込口は吹出口と異なり気流操作が不要なので必ずしも屋内吸込口を制気口とする必要はない。
吹出口の場合は、1個当たりの風量を決定し、その時の騒音の確認をし、さらに吹出気流の拡散範囲と到達距離の確認をする必要がある。
なお、屋内の吹出口は気流を調整するために制気口とするのが一般的である。
1個当たりの風量を決定と騒音の確認
対象室の必要送風量とレイアウトや天井の割付などから給排気口の配置と個数を決定する。
これにより算出された1個当たりの風量と推奨風速から、給排気口のサイズを決定する。給排気口のカタログなどには選定表があり、これにより型番や寸法を決定することができる。
推奨風速について
風速が大きくなると、給排気口からカラカラという金切音のような騒音が起きる。そのため使用用途や使用位置により風速の目安値が出されている。
一般に給排気口風速は2.0~3.0m/s、ネック風速は3.5~4.5m/s程度になるように計画されることが多い。
ただし、給気口と居住区域が大きく離れている場合は、吹出口騒音より到達距離が重要視されるため、風速の目安値は無視され到達距離により給気口の大きさを決定する傾向にある。
吹出速度(一般推奨値)
場所 | 有効開口面風速 m/s |
---|---|
放送局・スタジオ | 1.5~2.5 |
住宅 | 2.5~3.8 |
アパート | 2.5~3.8 |
教会 | 2.5~3.8 |
ホテルの寝室 | 2.5~3.8 |
劇場 | 2.5~3.8 |
個人事務所(防音を施した) | 2.5~3.8 |
個人事務所(防音してない) | 4.0 |
映画館 | 5.0 |
一般事務所 | 5.0~6.3 |
百貨店(上階) | 7.6 |
百貨店(1階) | 10.0 |
最新建築設備設計資料1968年版
居室の吸込口速度(一般推奨値)
吸込口の位置 | 有効開口面風速 m/s |
---|---|
居住区域の上にあるとき | 4以上 |
居住区域内で座席より遠いとき | 3~4 |
居住区域内で座席より近いとき | 2~3 |
ドアのアンダーカット・ドアグリル | 1~1.5 |
空気調和衛生工学便覧第14版
ネック風速と吹出風速とは
カタログなどに記載されている風速には、吹出風速とネック風速があり、給排気口の種類によりそのどちらかが記載されている。
ネック風速とは給排気口に接続されたダクト(ネック部分)での風速を指す。
ふく流吹出口などで、吹出風速が有効開口面に対して均一でなく吹出風速の算出が困難な場合などに記載されている。
ネック風速を求める際に使用する有効開口面積は、ネックでのダクトの断面積になる。
吹出風速とはダクト内風速が給排気口にある羽根等で縮流されて吹出される風速を指す。
吹出風速を求める際に使用する有効開口面積は、吹出口の開口面積×開口率で求められる。
風速と風量の関係式
風速は、以下に示した風量と有効開口面積の関係式より求められる。
有効開口面積[m2]=給排気口の開口面積[m2]×開口率=風量[m3/h]/(風速[m/s]×3600[h/s]) これを変形すると
風速[m/s]=風量[m3/h]/(有効開口面積[m2]×3600[h/s])
給排気口の開口率
種別 | 有効開口率 % |
---|---|
ユニバーサル形(VH) | 65~80 |
ユニバーサル形(V又はH) | 80 |
スリット形 | 80~85 |
打抜き鉄板形 | 30~60 |
ドアグリル | 35~70 |
給排気ガラリ | 30~50 |
開口率の目安値は給排気口面積に対する値であるが、カタログなどに記載されている開口率は給排気口面積から枠部分を引いた面積に対する値であるので、給排気口が小さい場合は給排気口面積に対する枠部分の面積が大きく開口率が不足してしまう場合があるので注意する。
例えば、ユニバーサル形(VHS)の1個当たりの風量を110m3/hとすると、
必要な有効開口面積は、有効開口面積[m2]=風量[m3/h]/(風速[m/s]×3600[h/s])=110/(2.0×3600)≒0.0153[m2] になる。
寸法150mm×150mm、開口率80%の有効開口面積は、
給排気口の開口面積[m2]×開口率=0.15m×0.15m×0.8=0.018[m2]より、0.018>0.0153で足りることになるが、
寸法150mm×150mm、カタログ値の開口率82%の有効開口面積は、枠部分の寸法が15mmなので
給排気口の開口面積[m2]×開口率=(0.15-0.015)m×(0.15-0.015)m×0.82≒0.015[m2]より、0.015<0.0153で実際には不足してしまう。
(開口率や枠部分寸法は空研工業株式会社のカタログ値を参考にした。)
送風量600m3/hの対象室で、ユニバーサル形(VHS)の制気口を3つ配置する場合の吹出口の大きさを求める。
対象室は、騒音を気にする箇所であるので吹出風速を2.0m/s、制気口の有効開口率を80%とする。
制気口1個当たりの風量は、送風量/台数=600/3=200m3/hとなる。
吹出口の大きさ(給排気口の開口面積)は、
給排気口の開口面積[m2]=風量[m3/h]/(風速[m/s]×3600[h/s]×開口率)=200/(2.0×3600×0.8)≒0.035m2
よって
開口寸法:200mm×200mm ≒0.04(>0.035)m2
開口寸法:250mm×150mm ≒0.0375(>0.035)m2
などが可能寸法になる。
拡散範囲の確認
吹出口から吹出された空気は広がり拡散しながら進んでいく。その広がり範囲は拡散距離や拡散半径としてカタログなどに記載されている。
隣接する吹出口の拡散範囲が重なることはドラフト等の原因になるので、拡散範囲の重なりについて確認が必要になる。
以下に示す拡散範囲の確認方法は、茶本の吹出口ごとの計算要領から抜粋した。
シーリングディフューザーの拡散範囲
空調対象面が最大拡散範囲※で覆われ、かつ最小拡散範囲※が隣接する壁や吹出口と重なり合わないようにする。
※最大拡散範囲…水平吹き出しとした時の到達半径のこと。到達半径とするのは平均残風速が0.25m/sの地点。
※最小拡散範囲…垂直吹き出しとした時の到達半径のこと。到達半径とするのは平均残風速が0.25m/sの地点。
レジスタ(ユニバーサル型)の拡散範囲
到達距離※の80%地点での拡散範囲が隣接する吹出口と重なり合わないように吹出角度を調整する。吹出口の間隔は5m以下とすることが望ましい。
※到達距離…吹出口から出た気流の風速が、平均残風速0.25m/sになる地点のこと。
詳細は次項にまとめた。
ラインの拡散範囲
平行に近接する場合は気流分布を考慮する。ガラス面又は壁面に近接して配置する場合150mm程度の間隔を確保する。
ノズルの拡散範囲
全空気方式(室内に冷温水による空調機等の他の空調設備がない)場合は、計算式※により求めた拡散半径が、水平吹出しの場合は到達面をカバーするように、また、垂直吹出しの場合は到達面において相接するようにする。
※拡散半径の計算式
R(拡散半径)[m]={L(到達距離)×tan15°(=2-√3≒0.268)+D(出口口径)}/2
到達距離の確認
吹出口から出た空調気流は、居住域や作業位置まで到達する必要がある。吹出口から居住域や作業位置までの距離を到達距離といい、茶本では、ユニバーサル型のレジスタの場合は吹出口の設置面から対向面(窓、壁等の面)までの距離、シーリングディフューザ―では天井面から床上1.5mまでの距離を到達距離としている。
気流による不快感を与えないように到達距離での平均残風速は0.25~0.5m/s範囲とする。
※人の動きの多い場所や滞在時間が短い場所などでは平均残風速がこれより大きくても問題ないとしている。
なお、平均残風速が0.25m/sとなるときの風の到達距離を最大到達距離、平均残風速が0.5m/sとなるときの風の到達距離を最小到達距離として、カタログなどに記載されている。
空気環境の基準
浮遊粉じんの量 | 0.15mg/m3以下 |
---|---|
一酸化炭素の含有率 | 100万分の10以下(=10ppm以下) ※特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下 |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(=1000ppm以下) |
温度 | (1)17℃以上28℃以下 (2)居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。 |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
気流 | 0.5m/s以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/m3以下(=0.08ppm以下) |
風量400m3/hの床置き空調機の上部にパンカールーバーが1つ付いたチャンバーボックスを取り付ける。これにより空調機から8.0m離れた作業位置での残風速が確保できる吹出口を選定する。
なお、作業所での人の動きによる気流の乱れが起きることにより気流が届かないことを防止するため、平均残風速0.5m/s以上となるようにする。
パンカールーバー#14は、風量408m3/hのとき最小到達距離(平均残風速0.5m/sの地点)が8.0mになるので、この番手で決定とした。
(パンカールーバーの数値は空研工業株式会社のカタログ値のPK-CHを参考にした。)
吹出口取付位置の注意点
・一般の事務所等は作業位置の真上や真横に吹出口を設けると、作業位置での残風速が過大になり不快気流につながってしまうため、なるべく吹出口は作業位置から離して設置する。
・天井に取り付ける吹出口の到達距離は、空気温度により異なる。暖房の到達距離は、冷房の場合より小さいので注意する。(比重の違いにより、暖かい空気は上に冷たい空気は下に向かうため。)
※季節によって風向を調整するシーリングディフューザ―などの吹出口であれば、冷房は水平吹出、暖房は垂直吹出とすることができるため、暖房の到達距離を基準に検討しても冷房時に気流による不快感は発生しない。