硬質ポリ塩化ビニル管の種類

硬質ポリ塩化ビニル管は、硬質な塩化ビニル樹脂を溶融して作られた配管であり、樹脂系配管材の中では最も一般的に利用されている配管材である。

硬質ポリ塩化ビニル管と一口に言っても、使用用途によって硬質ポリ塩化ビニル材に改良を加えているものや、被覆などにより硬質ポリ塩化ビニル管の弱点をカバーした配管も存在する。これらは管種によって異なった特徴を示すので以下に記載する。

硬質ポリ塩化ビニル管以外の配管材も含む配管材料については以下の別記事を参照。

参考記事

硬質ポリ塩化ビニル材の種類や特徴

PVCの種類

硬質ポリ塩化ビニル(PVC=polyvinyl chloride)は、合成樹脂(プラスチック)の1種である。配管材質としては、U-PVCHI-PVCC-PVCの3種類が主に利用されている。

U-PVC

最も一般的に利用されている、硬質ポリ塩化ビニル管の材質。ポリ塩化ビニルを主体として、安定剤や顔料などを加えたものである。 頭文字のUは、Unplasticized(=可塑化していない)の略である。ポリ塩化ビニルは、可塑剤を使用することで軟質ポリ塩化ビニルにすることができるため、可塑剤を加えていないポリ塩化ビニルを意味するU-PVC硬質ポリ塩化ビニルPVCは同義であり、下記のHI-PVCとC-PVCとの分別のための頭文字になる。

HI-PVC

ポリ塩化ビニルを主体とし、安定剤や顔料などのほか、耐候性に著しい悪影響を及ぼすことのない改質剤などを加えたものである。 頭文字のHIは、High Impact(=耐衝撃性)の略である。PVCの弱点である衝撃がかかると割れやすい性質を改良し耐衝撃性を向上させた素材である。

C-PVC

塩素化ポリ塩化ビニルを主体とし、安定剤や顔料などを加えたものである。 頭文字のCは、Chlorinated(=塩素)の略である。塩素を付加することでPVCのもつ特性を保有しながら、耐熱性や難燃性を向上させた素材である。

PVCの配管材としての利点・欠点

硬質ポリ塩化ビニル管(PVC)の金属管である鋼管とを比べた際のメリットは、サビが発生しない(腐食しない)こと、軽量なこと、施工が容易なこと、摩擦抵抗が少ないこと、耐薬品性(耐酸性・耐アルカリ性)が高いことなどがあげられる。反対にデメリットとしては、有機溶剤に弱いこと、温度変化に弱く変形や割れを起こしやすいことなどがある。

硬質ポリ塩化ビニル管の種類

硬質ポリ塩化ビニル管(VP、VM、VU、VPW)

硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管塩ビパイプ)は一般的な硬質ポリ塩化ビニルの配管をいい、給水、排水、通気などに利用できる配管である。配管材質はU-PVC

規格は上水以外の用途でJIS K6741、上水用途でJIS K6742である。 上水以外の用途のJIS K6741は、硬質ポリ塩化ビニル管(VPVMVU)と、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル(HIVP)の2種類※1が規定されている。 上水用途のJIS K6742は、水道用硬質ポリ塩化ビニル(VPW)と水道用耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル(HIVPW)の2種類※1が規定されている。VPWとHIVPWは、通常のVP管の基準に加えて、鉛や亜鉛などの浸出性の規定値をクリアした水道用に利用可能な硬質ポリ塩化ビニル管である。

※1:JIS規格にはこの2種類のほか、国際規格(ISO)に規定されている、水輸送用及び圧送排下水用硬質ポリ塩化ビニル管(IWVP)、埋設排下水用硬質ポリ塩化ビニル管(ISVP)、建物内排水用硬質ポリ塩化ビニル管(IDVP)があるが、主な国内の硬質ポリ塩化ビニル管配管材において、これらの規格での販売がなされていないためここでは省略している。

硬質ポリ塩化ビニル管(VP管)

硬質ポリ塩化ビニル管の一般管.

VP管は、硬質ポリ塩化ビニル管の一種である。排水などの無圧用途の配管の他、給水などの圧力のかかる配管にも使える。後述の薄肉管と比較し、一般管、一般硬質ポリ塩化ビニル管とも呼ばれる。 VP管の使用圧力は、上水以外の用途の規格(VP)では0~1.0MPa以下、上水用途の規格(VPW)では0~0.75MPa以下である。

硬質ポリ塩化ビニル管(VM管)

VM管は、硬質ポリ塩化ビニル管の一種である。農業用硬質塩化ビニル管を指す。農業用水管路等の一般流体輸送管路に利用される。 VP管の配管径が40~300A、VPW管の配管径が13~300Aに対し、VM管の配管径は350~500Aになり大口径の配管になる。 VM管の使用圧力は、0~0.8MPa以下である。

硬質ポリ塩化ビニル管(VU管)

硬質ポリ塩化ビニル管の薄肉管.

VU管は、硬質ポリ塩化ビニル管の一種である。一般の配管厚の半分程度で軽量で、排水などの無圧用途の配管に使用できるが、給水などの圧力のかかる配管には使えない。薄肉管、薄肉硬質ポリ塩化ビニル管とも呼ばれる。VU管の使用圧力は、0~0.6MPa以下である。VP管との使い分けは使用圧力にある。例えば、衛生器具まわりの排水管は水が勢いよく流れ込むのでVP管、雨水が直接振り込まないような場所の雨水の排水管はVU管などと使い分ける。

補足

屋内配管、屋外配管、埋設配管などに幅広く利用できる。ただし、屋外で使用する場合は変形や退色のおそれはあるので、通常の硬質ポリ塩化ビニル管より紫外線に強く対候性を高めた屋外用の硬質ポリ塩化ビニル管も存在する。硬質ポリ塩化ビニル管は、一般的な色は灰色であるが、屋外用で特に露出配管用にカラーバリエーションがあるカラーパイプもある。

その他、JIS K6741の規格品で質量も同じでありながら、耐薬品性や耐食性を高めたプラントVPもある。通常のVPパイプと異なり高価なので、特殊な薬液や廃液などに主に利用される。

耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管

耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管

耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管(HIパイプ)は、硬質ポリ塩化ビニル管の耐衝撃性を向上させた配管をいい、主に給水配管に利用されている。配管材質はHI-PVC。耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管の色は、暗い灰青色である。
現在は上水用途では硬質ポリ塩化ビニル管ではなく、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管を利用するのが一般的である。

耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管

耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管

耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(HTパイプ)は、硬質ポリ塩化ビニル管の耐熱性を向上させた配管をいい、主に給湯配管に利用されている。配管材質はC-PVC。耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管の色は、赤茶色である。
硬質ポリ塩化ビニル管の使用温度は60℃以下に対し、耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管は90℃以下であるが、使用温度が上がると使用可能圧力がグッと下がるため設計時には注意が必要になる。

水道用硬質ポリ塩化ビニル管

公共上水道用の硬質ポリ塩化ビニル管のこと。 水路用の配管であるので、基本的には配管に継手を設けず直管に挿し口と受け口を設けている。 配管の材質はU-PVC、水道用硬質ポリ塩化ビニル管(VPW)と同等(JIS K6742)である。

下水道用硬質ポリ塩化ビニル管

公共下水道用の硬質ポリ塩化ビニル管のこと。 水路用の配管であるので、基本的には継手を設けず直管に挿し口と受け口を設けている。 配管の材質はU-PVC、薄肉硬質ポリ塩化ビニル管(VU)と同等(JIS K6741)である。

硬質ポリ塩化ビニルの複層系の配管種類

硬質ポリ塩化ビニル管は、配管の切断加工が容易で配管同士の接続も接着剤(塩ビのり)などで簡単にできることから、施工性の高い配管である。
その施工性の高さを維持したまま、被覆材や中間層を設けることで、結露防止や耐火性の向上などを行った配管材を以下に紹介する。

リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管

リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管

リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管(リサイクルパイプRF-VP)は、硬質ポリ塩化ビニル管の中間層に発砲性を持つリサイクル材が使われた配管である。リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管の色は、灰青色である。
硬質ポリ塩化ビニル管と比べて発砲層を持つので、軽量で、熱による伸縮が少なく、結露しにくいが排水用であり圧力管には使用できない。

空調用ドレン管

空調用ドレン管

空調用ドレン管は、硬質ポリ塩化ビニル管の中間層に発砲層を持つ塩化ビニルが挟み込まれた配管である。メーカー規格品であり、代表的なものに積水化学工業株式会社ACドレンパイプ株式会社クボタケミックスKCドレンパイプなどがある。
名前の通り空調ドレン専用の配管種類で、硬質ポリ塩化ビニル管に結露防止のための処理がセットになった配管である。なお、空調用ドレン管は配管の外径がVP管の1サイズ上の外径になっている。

空調ドレン用の配管には前述の中間層に結露防止層を組み込んだもののほか、硬質ポリ塩化ビニル管に結露防止の保温筒をセットしたドレンパイプもあり、未来工業株式会社や因幡電機産業株式会社(因幡電工)、東栄管機株式会社などはこのタイプのドレンパイプを製造している。

排水通気用耐火二層管

 排水通気用耐火二層管

排水・通気耐火二層管は、硬質ポリ塩化ビニル管の外層に繊維混入セメントモルタルが使われた配管である。フネンパイプ耐火二層管FDP管などと呼ばれる。耐火性を持っているため、特段の区画貫通処理なく配管を貫通できる。
排水・通気用の配管で、硬質ポリ塩化ビニル管に結露防止区画貫通のための処理がセットになった配管である。

耐火ビニルパイプ

耐火ビニルパイプ(TF-VP、FS-VP)は、硬質ポリ塩化ビニル管の中間層に加熱により膨張する特性をもつ耐火性硬質ポリ塩化ビニルが挟み込まれた配管である。代表メーカーは、積水化学工業株式会社株式会社クボタケミックスなどがある。
耐火二層管とネーミングが似ているが、異なるものなので注意する。耐火性を持っている(火災時に内部材が膨張し配管路をふさぐ)ため、特段の区画貫通処理なく配管を貫通できる。 排水・通気用の配管で、硬質ポリ塩化ビニル管に区画貫通のための処理がセットになった配管である。